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貧民街編
21 家族会議
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家族で食事を囲みながら、裁判で完勝したことを報告した。
全てお兄様がいなければこう上手くはならなかっただろう。
「レオンよ、何から何までリーレルの手助けをしてくれたことを感謝する」
「あくまで俺のためだ。そもそも父さんが物腰が弱いから、こういう結果になったんだろ。子爵家だろうが伯爵だろうが、嫌なもんは嫌だとハッキリ言えば良い……」
「すまぬ……」
どちらが当主なのだろうと思えるくらい、お父様の立場が低くなっている気がする。
だが、お父様はお父様で色々と抱えているので、これ以上は責めないでほしい。
「ところで、多額の慰謝料を頂戴すると聞いたが……」
「あぁ、俺としたことがミスをした……。たったの金貨四百枚しか請求できなかった……」
「よんひゃく!?」
お父様はテーブルをバンッと叩きながら大声で驚いていたが、お兄様は何故か悔しがっている。
私だってこれだけの金貨を請求すること自体が物凄いことだと思ってはいたが……。
お兄様の駆け引きがとんでもなかったからこそできたと、お礼を言いたいくらいだ。
「俺はなぜ躊躇してしまったのか……、あの程度の金額ではアラーネウス子爵を潰すことができない。一生の不覚だ」
「でも、お兄様のおかげで冤罪を解消できたから。私は感謝しているよ?」
「甘すぎる! あの男がこれで完全に引き下がるとも思えん! くそう……何か対策を考えなければな」
お兄様の言っている意味が、私には理解ができなかった。
婚約はなくなったのだし、もうマクツィアと関わることもない、そう思っていたのだから。
「リーレルよ、すまぬが慰謝料のことだが……」
「えぇ。もちろん三分割にしましょう」
「まことか!?」
「……」
お父様が目をキラキラ輝かせながら期待に満ちているといった顔をしている。
分かりやすいな……。
貧乏貴族にとって、金貨四百枚は途方もない額だ。
権利は私にあるようだ。
だが、家に迷惑をかけてしまったことと、お兄様の活躍で今回の慰謝料を払ってもらえる。
そう考えたら、私への慰謝料というよりもローラ家に対する慰謝料と考えた方がいいと判断した。
お兄様は黙って何か考えているようだ。
「リーレル。三分割ではダメだ」
「どうして?」
「お前は相変わらず頭が悪いな! 金貨四百枚を三分割では一枚余る。正確には三分割し、あまり一枚をどうするかと発言するのが正解だ」
「こまかすぎる!!」
お兄様にツッコミを入れてしまった。
「だが、どちらにしても俺は納得できない。お前が受け取るべき金貨だろう。それだけの屈辱と苦痛を受けたのだから」
私はポカンとしていると、続けてお父様もコクリと頷いてしまう。
「確かにそうかもしれぬ。元はと言えば、私の不甲斐なさで起きた件だ。権利はお前にある」
お父様まで……。
だが、これほどまでの大金を受け取っても使い道が思いつかない。
それを踏まえた上でもう一度言った。
「やはり三分割にしましょう。それが私の使い方ということで。余り一枚でどこか美味しいお店に連れて行ってください」
「はぁ……リーレルはお人好しすぎだろう……。俺は自分のためにやっただけだと言っているのに」
お兄様は自分のためとやたら主張しているが、結果的に私を助けてくれたのだ。
お礼がしたい。
お金でお礼と言うのも、少々悩んでしまうが、今の私にはこれくらいしかできることがない。
ローラ家の懐が暖かくなり少しだけ生活度が上がる。
これでいいじゃないか。
分割が決まった翌日、早速アラーネウス家からの慰謝料が届いた。
お父様は普段目にしない大金を見て、目をギラギラ輝かせている。
お兄様は相変わらずの無表情。
私はというと、身体中が震えていた。
これほどまでの大量金貨、どうしたらいいのだろう……。
「リーレル、俺が受け取った金で行きたい場所がある。早速でかけるからお前もついてこい」
「え……?」
コレが私を強制的に連れ出そうとするとき、必ずと言っていいほど何か面倒ごとに巻き込まれる。
今回はお願いだから平和に一日が終わりますように……。
全てお兄様がいなければこう上手くはならなかっただろう。
「レオンよ、何から何までリーレルの手助けをしてくれたことを感謝する」
「あくまで俺のためだ。そもそも父さんが物腰が弱いから、こういう結果になったんだろ。子爵家だろうが伯爵だろうが、嫌なもんは嫌だとハッキリ言えば良い……」
「すまぬ……」
どちらが当主なのだろうと思えるくらい、お父様の立場が低くなっている気がする。
だが、お父様はお父様で色々と抱えているので、これ以上は責めないでほしい。
「ところで、多額の慰謝料を頂戴すると聞いたが……」
「あぁ、俺としたことがミスをした……。たったの金貨四百枚しか請求できなかった……」
「よんひゃく!?」
お父様はテーブルをバンッと叩きながら大声で驚いていたが、お兄様は何故か悔しがっている。
私だってこれだけの金貨を請求すること自体が物凄いことだと思ってはいたが……。
お兄様の駆け引きがとんでもなかったからこそできたと、お礼を言いたいくらいだ。
「俺はなぜ躊躇してしまったのか……、あの程度の金額ではアラーネウス子爵を潰すことができない。一生の不覚だ」
「でも、お兄様のおかげで冤罪を解消できたから。私は感謝しているよ?」
「甘すぎる! あの男がこれで完全に引き下がるとも思えん! くそう……何か対策を考えなければな」
お兄様の言っている意味が、私には理解ができなかった。
婚約はなくなったのだし、もうマクツィアと関わることもない、そう思っていたのだから。
「リーレルよ、すまぬが慰謝料のことだが……」
「えぇ。もちろん三分割にしましょう」
「まことか!?」
「……」
お父様が目をキラキラ輝かせながら期待に満ちているといった顔をしている。
分かりやすいな……。
貧乏貴族にとって、金貨四百枚は途方もない額だ。
権利は私にあるようだ。
だが、家に迷惑をかけてしまったことと、お兄様の活躍で今回の慰謝料を払ってもらえる。
そう考えたら、私への慰謝料というよりもローラ家に対する慰謝料と考えた方がいいと判断した。
お兄様は黙って何か考えているようだ。
「リーレル。三分割ではダメだ」
「どうして?」
「お前は相変わらず頭が悪いな! 金貨四百枚を三分割では一枚余る。正確には三分割し、あまり一枚をどうするかと発言するのが正解だ」
「こまかすぎる!!」
お兄様にツッコミを入れてしまった。
「だが、どちらにしても俺は納得できない。お前が受け取るべき金貨だろう。それだけの屈辱と苦痛を受けたのだから」
私はポカンとしていると、続けてお父様もコクリと頷いてしまう。
「確かにそうかもしれぬ。元はと言えば、私の不甲斐なさで起きた件だ。権利はお前にある」
お父様まで……。
だが、これほどまでの大金を受け取っても使い道が思いつかない。
それを踏まえた上でもう一度言った。
「やはり三分割にしましょう。それが私の使い方ということで。余り一枚でどこか美味しいお店に連れて行ってください」
「はぁ……リーレルはお人好しすぎだろう……。俺は自分のためにやっただけだと言っているのに」
お兄様は自分のためとやたら主張しているが、結果的に私を助けてくれたのだ。
お礼がしたい。
お金でお礼と言うのも、少々悩んでしまうが、今の私にはこれくらいしかできることがない。
ローラ家の懐が暖かくなり少しだけ生活度が上がる。
これでいいじゃないか。
分割が決まった翌日、早速アラーネウス家からの慰謝料が届いた。
お父様は普段目にしない大金を見て、目をギラギラ輝かせている。
お兄様は相変わらずの無表情。
私はというと、身体中が震えていた。
これほどまでの大量金貨、どうしたらいいのだろう……。
「リーレル、俺が受け取った金で行きたい場所がある。早速でかけるからお前もついてこい」
「え……?」
コレが私を強制的に連れ出そうとするとき、必ずと言っていいほど何か面倒ごとに巻き込まれる。
今回はお願いだから平和に一日が終わりますように……。
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