これが私の兄です

よどら文鳥

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婚約破棄編

20【マクツィア視点】慰謝料で揉めてしまった

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「この……ばかものめ!!!」
「ぐぅふぇええええ!!!」

 父上に容赦無く殴られた。
 理由は分かっているので仕方がないことではあるし、覚悟はしていた。
 だが、あまりにも酷いだろう?

「もう少し加減をしたらどうなのですか? ここで吐いてカーペットを汚したらどうするのです?」
「本来ならばアラーネウス家から追放させてもおかしくないことを、お前はやらかした。この程度で──」
「いえ、私は悪くありません!」
「そういうところだ。今も私の話を最後まで聞こうともせぬ! リーレルの話もしっかりと聞いたかと、念を押して確認したはずだ! 全く聞く耳持たず貴様の一方的な婚約破棄だったではないか!」
「あれはリーエルがいけないでしょう! しっかりと私の発言を退けてでも大事なことは主張するべきかと」

 リーエルがしっかりと私の発言を無視し、兄だと言えばよかったのだ。
 だが、私としてはたとえ実の兄だろうとも二人きりで歩くという行為は許せない。
 兄妹の場合、法的には何故か合法だが、おかしいだろう。
 男と女であることに変わりはないのだ。

 私には妹や姉がいないのでそういう感情はよくはわからぬが、どちらにせよ、関係をもとうと思えば出来るだろうし、興奮もするのだろ?
 だが、その主張は認められないことを知っていたからこそ言えなかった。
 これ以上あの場で文句を言うのは立場が更に危うくなると思ったのだ。

「どちらにしても、金貨四百枚払うだけで済むのでよかったです」
「どれほどの損害だと? それに金だけではない。今回の件で、我がアラーネウス家は大きな汚名を被るであろう。今までどおりの生活ができると思わないことだ!」
「いずれ汚名返上してみせますよ」

 レオンの主張を受け入れてしまったせいで、余計な出費が発生してしまった。
金貨四百枚といえば、我が家の一年半分ほどの金額だ。
 かなりの痛手だが、家を手放したりするほどではないはず。
 まだまだ起死回生という言葉を使うほどでもないのだ。

「挽回するので、今回の慰謝料の援助、お願いいたします」
「そんなもの……お前が稼ぎ払え! 私は微多一文払わぬ!」
「いえ、父上も協力してくれたのですからせめて半額だけでも……」
「一割だ! あとはお前がなんとかするのだ!」

 これは予想外の命令だ。
 かなりマズいことになってしまった。
 もちろんそのような大金は持ち合わせていないので、なんとかお願いをして貸してもらうということでケリがついた。

 おのれ……。
 リーレルにレオンめ……。
 必ずこの借りは返させてもらう。

 どうにかして慰謝料を取り返すために策を練らなければなるまい。
 あわよくば何かの弱みを握り、脅迫してリーレルを私のモノにできないかと考えた。
 必死に考えたのだ。

 あの女を誰かのモノにさせるわけにはいかぬ。
 まだリーレルのことを愛してはいるのだから。
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