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婚約破棄編
18 裁判の始まり
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ローラ家に、一通の嫌な手紙が届いた。
婚約破棄の慰謝料請求が書かれたものである。
その請求額に驚いてしまった。
「金貨四百枚って……、普通の婚約破棄よりも高いじゃないの! 家一軒くらいなら建ってしまう額よ!」
お兄様に手紙を見せたが、落ちついた様子を崩さない。
「ふん、所詮は無効になる。あいつらが強気なら、こちらからも同額請求してやろう。あっちがその気なら、とことん付き合ってやる。嫌になるまでな!」
「本当に大丈夫なの? 私、何も冤罪だと証明する証拠なんて持ってないんだけど。お父様もお兄様に任せたって言っているし……」
お父様に再び相談したのだが、レオンが全て対策をしてくれていたから任せよう、とだけ言って詳細は教えてくれなかった。
今の段階で頼れるのはお兄様だけなのだ。
「全くもって問題ない。すべては計算通りに進んだ。あのバカ子爵家どもに後悔させてやるよ」
「何をしたの?」
「それはまだ言えない。お前は口を滑らせたりドジをすることがあるからな」
「うう……」
否定はできなかった。
だが、どうしても気になってしまうし、心配だけが残る。
本当に大丈夫なのだろうか。
♢
心配しているうちに、ついにその日が来た。
私は何の準備もできておらず、お兄様も何かしていたようには見えなかった。
本当に大丈夫なのだろうか。
そもそもマクツィアの誤解から始まったことである。
私とお兄様が買物へ出かけているところを目撃したようで、あろうことかお兄様のことを不倫相手だと誤解してきたのだ。
当たり前だが、お兄様とそのような関係になどなっていない。
むしろ、コレに迫られたら全力で拒否する。
こちらから慰謝料を取るのは難しいだろう。
冤罪だけでも晴らして、無事に婚約解消に持っていければそれでいい。
汚名さえ被るようなことがなければいいのだ。
不安だらけのまま私とお兄様の二人で話し合いの場へと向かった。
マクツィアとその父親二人で正面の椅子に座っている。
公式の場だというのに、背筋がバナナのように曲がり、足を伸ばした状態だ。
だらしなさすぎだろう……。
中立の立場でいる立会人と、最終的な判決を下す法曹と裁判長も見ているのに。
「此度、マクツィア=アラーネウス側がリーレル=ローラの婚約を破棄させた上、金貨四百枚の慰謝料を請求する内容で最終決断を行う。まずはマクツィア=アラーネウス側からの主張を認める」
法曹の発言で、マクツィアが席から立ち上がり、私に対して指を刺しながら声を荒げながら発言した。
「リーレルのことは愛していた。だが、彼女はその思いを裏切り、他の男と仲良く歩いていた。更に、その男と身体を密着させていた。よって、不倫行為と判断し、婚約を破棄した上で相当額の慰謝料を請求する! 更に、金輪際他の男との交際や接触もしない誓約書も出す。家を失ってでも払っていただく」
自信満々に主張してくるので、少しばかり頭にきた。
だが、横に座っているお兄様は終始無言で一切表情すら変えていない。
さすがだ。
「続いてリーレル=ローラ側の主張を認める」
法曹の指示に従い、私はお兄様と打ち合わせしたとおりに答えた。
「冤罪です」
「嘘をつくでない! 調べればわかることだ!」
私は一言だけ発言しただけなのに、怒り狂いながらマクツィアが場を乱した。
相変わらず人の話を聞こうとしない。
どうやら、今もなおこの件で怒っているようだ。
「静粛に! 今はリーレル=ローラ側の主張を認める」
「では、こちらからも訴えさせてもらう。有りもしない冤罪を被せ、リーレルは傷ついた。侮辱罪と名誉毀損罪、更に慰謝料を合わせてそちらと同額の慰謝料を請求したいのだが」
「相変わらずのバカか貴様。リーレルがやったのは確実だろう。どうしてもというならばこうしよう。もしもリーレルの罪が成立した場合、更に倍の金貨八百枚を支払え。それならばそちらの主張も認めよう」
「それで良い。裁判長、判断を願う」
「……認める」
お兄様が一瞬だけニヤリと笑った。
相変わらずお兄様は誰に対しても傲慢な口調だな……。
これではマクツィアとあまり変わらないではないか。
感情的じゃないだけマシだけど。
「では成立したところで、リーレルが不倫行為をしていない証拠がある。ここで公開しても?」
「許可する」
私も今まで何も聞かされていなかった。
一体何を証拠として出すのだろう……。
婚約破棄の慰謝料請求が書かれたものである。
その請求額に驚いてしまった。
「金貨四百枚って……、普通の婚約破棄よりも高いじゃないの! 家一軒くらいなら建ってしまう額よ!」
お兄様に手紙を見せたが、落ちついた様子を崩さない。
「ふん、所詮は無効になる。あいつらが強気なら、こちらからも同額請求してやろう。あっちがその気なら、とことん付き合ってやる。嫌になるまでな!」
「本当に大丈夫なの? 私、何も冤罪だと証明する証拠なんて持ってないんだけど。お父様もお兄様に任せたって言っているし……」
お父様に再び相談したのだが、レオンが全て対策をしてくれていたから任せよう、とだけ言って詳細は教えてくれなかった。
今の段階で頼れるのはお兄様だけなのだ。
「全くもって問題ない。すべては計算通りに進んだ。あのバカ子爵家どもに後悔させてやるよ」
「何をしたの?」
「それはまだ言えない。お前は口を滑らせたりドジをすることがあるからな」
「うう……」
否定はできなかった。
だが、どうしても気になってしまうし、心配だけが残る。
本当に大丈夫なのだろうか。
♢
心配しているうちに、ついにその日が来た。
私は何の準備もできておらず、お兄様も何かしていたようには見えなかった。
本当に大丈夫なのだろうか。
そもそもマクツィアの誤解から始まったことである。
私とお兄様が買物へ出かけているところを目撃したようで、あろうことかお兄様のことを不倫相手だと誤解してきたのだ。
当たり前だが、お兄様とそのような関係になどなっていない。
むしろ、コレに迫られたら全力で拒否する。
こちらから慰謝料を取るのは難しいだろう。
冤罪だけでも晴らして、無事に婚約解消に持っていければそれでいい。
汚名さえ被るようなことがなければいいのだ。
不安だらけのまま私とお兄様の二人で話し合いの場へと向かった。
マクツィアとその父親二人で正面の椅子に座っている。
公式の場だというのに、背筋がバナナのように曲がり、足を伸ばした状態だ。
だらしなさすぎだろう……。
中立の立場でいる立会人と、最終的な判決を下す法曹と裁判長も見ているのに。
「此度、マクツィア=アラーネウス側がリーレル=ローラの婚約を破棄させた上、金貨四百枚の慰謝料を請求する内容で最終決断を行う。まずはマクツィア=アラーネウス側からの主張を認める」
法曹の発言で、マクツィアが席から立ち上がり、私に対して指を刺しながら声を荒げながら発言した。
「リーレルのことは愛していた。だが、彼女はその思いを裏切り、他の男と仲良く歩いていた。更に、その男と身体を密着させていた。よって、不倫行為と判断し、婚約を破棄した上で相当額の慰謝料を請求する! 更に、金輪際他の男との交際や接触もしない誓約書も出す。家を失ってでも払っていただく」
自信満々に主張してくるので、少しばかり頭にきた。
だが、横に座っているお兄様は終始無言で一切表情すら変えていない。
さすがだ。
「続いてリーレル=ローラ側の主張を認める」
法曹の指示に従い、私はお兄様と打ち合わせしたとおりに答えた。
「冤罪です」
「嘘をつくでない! 調べればわかることだ!」
私は一言だけ発言しただけなのに、怒り狂いながらマクツィアが場を乱した。
相変わらず人の話を聞こうとしない。
どうやら、今もなおこの件で怒っているようだ。
「静粛に! 今はリーレル=ローラ側の主張を認める」
「では、こちらからも訴えさせてもらう。有りもしない冤罪を被せ、リーレルは傷ついた。侮辱罪と名誉毀損罪、更に慰謝料を合わせてそちらと同額の慰謝料を請求したいのだが」
「相変わらずのバカか貴様。リーレルがやったのは確実だろう。どうしてもというならばこうしよう。もしもリーレルの罪が成立した場合、更に倍の金貨八百枚を支払え。それならばそちらの主張も認めよう」
「それで良い。裁判長、判断を願う」
「……認める」
お兄様が一瞬だけニヤリと笑った。
相変わらずお兄様は誰に対しても傲慢な口調だな……。
これではマクツィアとあまり変わらないではないか。
感情的じゃないだけマシだけど。
「では成立したところで、リーレルが不倫行為をしていない証拠がある。ここで公開しても?」
「許可する」
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一体何を証拠として出すのだろう……。
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