これが私の兄です

よどら文鳥

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婚約破棄編

17 報酬

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 公爵と話してて思い出したことがある。
 婚約破棄されていて冤罪を被せられていることをすっかり忘れていた。
 マーレット様のことで頭がいっぱいだった。

「例えばですが……、物でなくともお願いを聞いていただけることは?」
「ふむ、出来る限りのことはしたいが無理なことももちろんある。申してみよ」
「実は、冤罪で婚約破棄を言われていまして……」
「レオン君から聞いているので知っておる。アラーネウス子爵のところだろう? リーレル殿も相当酷い目にあわれたのだな」

 まさか公爵の耳にまで入っていたとは……。
 自力で解決できないことは情けないかもしれないが、私は冤罪にかけられて慰謝料を請求されている側にある。
 王族のお力を借りてでも、なんとか切り抜けたいと思ってしまった。

「冤罪でないことを証明する証拠が今のところない状態です。どうか、お力をお借りできたら」

 頭を下げてお願いしてみた。
 だが、公爵は首を横に振って断ってきたのだ。
 やはり図々しかったか……。

「いや、それに関してはわざわざ私が出る必要もあるまい」
「え!?」
「既にレオン殿が手を打ってあると得意げに話しておった。彼がそう言うならば、問題なかろう」

 初耳だった。
 一体、お兄様はいつどこでなにをしていたのだろう……。

 大事なことは全く私に話してくれない。
 私は気が抜けてしまいキョトンとしてしまう。

「どちらにしろ、あの子爵家は問題が多かったからな。いい機会だし、冤罪を押し付けた罪とは別に、それなりの制裁を与えても良いかもしれん。リーレルの件が無事解決したあと考えておくか……」

 公爵がほんの少しだけニヤリと笑みを浮かべたような気がした。
 もしかして、アラーネウス家が更に大変なことになったりするのか!?

「ところで報酬だが……、もしも何もないというのであれば、息子を貰ってくれんかね?」
「はい!? 失礼ですが、冗談ですよね?」
「いや、本気だ。リーレル殿ならば問題あるまい」

 ローラ家のことを考えたら大変嬉しい申し出だ。
 私が断る理由など見つからない。
 だが、王族の跡取りが男爵令嬢を相手にしても良いのだろうか……。

「考えておいてくれたまえ」
「ありがとうございます……。アラーネウス家との縁談が解決してから今一度お話をしたいと思います」
「うむ。期待しておる」

 お兄様と一緒に買い物へ出かけただけで、とんでもない展開になってしまった。
 私としてはとても嬉しいことばかりだが、本当に良いのだろうか。

 ひとまずはマクツィアからの婚約破棄を無効にして、冤罪をなくしてもらわなくては。
 まだしばらくは忙しくなりそうだ。

 ところで、お兄様ったら婚約破棄の件で何をしてくれていたのだろう……。
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