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婚約破棄編
11 調合した
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この森には危険な動物はいないので、私一人でも問題なく来ることはできる。
お兄様も、私一人で作業した方がやりやすいことを知っているのか、無理についてくることはなかった。
問題なのは、公爵令嬢の病を治すために必要な薬草が全て生えているかどうかだ。
前回は、必要な薬草を探すのにかなり苦労した記憶がある。
更に問題なことがもう一つ、見つけたとしてもしっかりと正確に調合できるかどうかだ。
今までは趣味感覚でやってきたことだし、失敗してもまぁいいやという軽い気持ちだった。
だが、今回は人の命がかかっている。
更に、助かるかもしれないと、期待されてしまっている状態だ。
失敗は許されない。
記憶を思い出しながら、前回発見した場所で薬草を探す。
「うん、あるある。残るは一種類か」
二時間ほど探し回り、お目当てのものは全て揃った。
失敗してもやり直せるように、念のため少し多めに採取しておく。
全てうまく成功したとしたら、保存しておけば良いのだから。
道具を持ってきていないので、森の中では調合することができない。
一旦薬草を持って家に帰った。
お兄様はまだ帰っていないようだ。
自室に戻り、必要な道具を用意して早速作業に入った。
開始すると、私の集中力にエンジンが入り、テキパキと作業をこなす。
「なんでだろう、人の命がかかっている大事なときだというのに、調合が楽しいって思ってしまうのは……」
作業をしながら、脳裏ではマーレット様が数年後、今のおてんばな口調でニコやかに笑っている姿を想像していた。
想像したとおりの未来がやってくることだけを願いながら調合していたら、何故か不安や恐怖よりも、作業していて楽しいという気持ちが強かったのだ。
何故かは私自身にもよく分からなかった。
以前同じ作業をしていたときは、ただなんとなくだった。
だが、今回はそうではない。
失敗が許されない任務のようなものかもしれない。
もちろんプレッシャーはある。
それでも、好きなことをやっているときは楽しいのだ。
そして休むこともなく作業開始からどれくらい時間が経過したかわからないが、ついに……。
「できたーーー!!」
「本当か!?」
達成感を大声で叫ぶと、どこからともなくお兄様が部屋へとかけつけてきた。
「うわ、ビックリしたな……もう!」
いつのまに帰ってきていたのだろう。
それより今何時だ!?
「お前はよくやった。まさか朝まで徹夜で頑張るとはな。リーレルの集中力は尊敬に値する」
「そんな時間なの!?」
外を見ると、既に朝日が眩しかった。
おっと、太陽に見惚れている場合じゃない。
「完成したけれど、絶対の保証はないの。もしもダメだったら……」
「そのときは仕方がない。だが、お前は出来ることをやってくれたんだ。感謝しているぞ」
「お兄様……」
調合しているときは集中していたので平気だった。
だが、今は心臓がエグられそうなほど緊張している。
もしもダメだった場合、私はどう責任をとればいいのだろう。
そのことが脳裏から離れないのだ。
おそらく白黒ハッキリするまではこの感覚から逃げることはできないだろう。
お兄様も、私一人で作業した方がやりやすいことを知っているのか、無理についてくることはなかった。
問題なのは、公爵令嬢の病を治すために必要な薬草が全て生えているかどうかだ。
前回は、必要な薬草を探すのにかなり苦労した記憶がある。
更に問題なことがもう一つ、見つけたとしてもしっかりと正確に調合できるかどうかだ。
今までは趣味感覚でやってきたことだし、失敗してもまぁいいやという軽い気持ちだった。
だが、今回は人の命がかかっている。
更に、助かるかもしれないと、期待されてしまっている状態だ。
失敗は許されない。
記憶を思い出しながら、前回発見した場所で薬草を探す。
「うん、あるある。残るは一種類か」
二時間ほど探し回り、お目当てのものは全て揃った。
失敗してもやり直せるように、念のため少し多めに採取しておく。
全てうまく成功したとしたら、保存しておけば良いのだから。
道具を持ってきていないので、森の中では調合することができない。
一旦薬草を持って家に帰った。
お兄様はまだ帰っていないようだ。
自室に戻り、必要な道具を用意して早速作業に入った。
開始すると、私の集中力にエンジンが入り、テキパキと作業をこなす。
「なんでだろう、人の命がかかっている大事なときだというのに、調合が楽しいって思ってしまうのは……」
作業をしながら、脳裏ではマーレット様が数年後、今のおてんばな口調でニコやかに笑っている姿を想像していた。
想像したとおりの未来がやってくることだけを願いながら調合していたら、何故か不安や恐怖よりも、作業していて楽しいという気持ちが強かったのだ。
何故かは私自身にもよく分からなかった。
以前同じ作業をしていたときは、ただなんとなくだった。
だが、今回はそうではない。
失敗が許されない任務のようなものかもしれない。
もちろんプレッシャーはある。
それでも、好きなことをやっているときは楽しいのだ。
そして休むこともなく作業開始からどれくらい時間が経過したかわからないが、ついに……。
「できたーーー!!」
「本当か!?」
達成感を大声で叫ぶと、どこからともなくお兄様が部屋へとかけつけてきた。
「うわ、ビックリしたな……もう!」
いつのまに帰ってきていたのだろう。
それより今何時だ!?
「お前はよくやった。まさか朝まで徹夜で頑張るとはな。リーレルの集中力は尊敬に値する」
「そんな時間なの!?」
外を見ると、既に朝日が眩しかった。
おっと、太陽に見惚れている場合じゃない。
「完成したけれど、絶対の保証はないの。もしもダメだったら……」
「そのときは仕方がない。だが、お前は出来ることをやってくれたんだ。感謝しているぞ」
「お兄様……」
調合しているときは集中していたので平気だった。
だが、今は心臓がエグられそうなほど緊張している。
もしもダメだった場合、私はどう責任をとればいいのだろう。
そのことが脳裏から離れないのだ。
おそらく白黒ハッキリするまではこの感覚から逃げることはできないだろう。
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