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婚約破棄編
6 理想
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「お父様が選んだ相手なら文句はないよ。そういうものだと思っているから」
お兄様は自分で好きな女性を選んだ。
そのため、「私に選べる権限はない」という言葉だけは控えておいた。
「仮にだ。もしも自分で好きな相手を選んでいいと言われた場合だ。どんな男がいい?」
「うーん……」
この手の質問は難しい。
そんな空想は今まで考えてこなかったから。
雑談のようなものだろうし、会話をすぐに終了させるのも悪いからな……。
考えてみた。
「嫁いでローラ家が幸せになれるような相手……かな」
「お前な……。そういうことじゃなく、自分自信の理想相手を言ってんだよ」
お兄様は呆れたような表情で私に視線を向ける。
そんなこと言われても、私は恋愛をしたことがない。
わからないのだ。
「リーレルが大好きな小説の中に、惚れたキャラクターくらいいるだろ?」
「現実と架空世界は違うから。私は男爵令嬢。わがままは言えないでしょ」
「お前は操り人形ではないんだぞ。それに仮にだと言ってるだろ。小説の中でも良いから理想はないのか?」
真剣に私のことを心配してくれている気持ちは嬉しい。
だが、お兄様の考えを鵜呑みにするわけにはいかないのだ。
それでもこのまま空気を悪くするわけにはいかないので、言われるがまま小説の中で良いと思ったキャラクターを思い出す。
「私だけでなく周りを幸せにしてくれるような人」
「ほう……」
とある小説でそんなキャラクターがいた。
これは金銭的地位的なものではない。
一緒にいることで幸せが勝手にやってくる。
そんな人と一緒だったら……。
「現実で例えればウィリアム=ベルモンド公爵のような男か」
「人柄までは存じていないけれど、そもそも私たちとは次元が違う立場の人でしょう」
ベルモンド公爵とは、一度だけ舞踏会でご挨拶をしたことがある。
マクツィア様と婚約した後だったが、そのときに事件は起きた。
公式の場では挨拶がわりに、手の甲に唇を触れる習慣がある。
その現場を見ていたマクツィア様が激怒して私は怒鳴られた。
さすがに公爵相手には何も言えなかったようだが、その時、場の雰囲気が一気に変わった。
それ以来、マクツィア様からの束縛が激しくなったのだ。
「もしあの男から縁談があったらどうする?」
「もちろん断る理由なんてないけれど、あり得ないでしょ」
ローラ家は男爵の中でも、特に貧乏な貴族だ。
男爵が王族と結ばれる事例はゼロではないが、滅多にない。
だが、お兄様がいきなりこういった話をしてくるときは何かしら起こるというジンクスがある。
まさかね……。
話をしながら歩き、貴族街と民間人を通過するための検問所へ到着した。
ちょうどそのときに三台の馬車が貴族街側に入ってきたところだった。
見ただけで王族だとわかったので、私はすぐにその場で馬車に向かって跪く。
横にいるコレは平然と立ったままだった。
お願いだから、ローラ家に恥をかかせないでほしい……。
だが……。
「レオン殿か」
「久しぶりだなウィリアム」
馬車の窓から顔を出してお兄様に挨拶していたのは、ウィリアム=ベルモンド公爵だった。
どうしてコレは公爵に対して平然としている!?
お兄様は自分で好きな女性を選んだ。
そのため、「私に選べる権限はない」という言葉だけは控えておいた。
「仮にだ。もしも自分で好きな相手を選んでいいと言われた場合だ。どんな男がいい?」
「うーん……」
この手の質問は難しい。
そんな空想は今まで考えてこなかったから。
雑談のようなものだろうし、会話をすぐに終了させるのも悪いからな……。
考えてみた。
「嫁いでローラ家が幸せになれるような相手……かな」
「お前な……。そういうことじゃなく、自分自信の理想相手を言ってんだよ」
お兄様は呆れたような表情で私に視線を向ける。
そんなこと言われても、私は恋愛をしたことがない。
わからないのだ。
「リーレルが大好きな小説の中に、惚れたキャラクターくらいいるだろ?」
「現実と架空世界は違うから。私は男爵令嬢。わがままは言えないでしょ」
「お前は操り人形ではないんだぞ。それに仮にだと言ってるだろ。小説の中でも良いから理想はないのか?」
真剣に私のことを心配してくれている気持ちは嬉しい。
だが、お兄様の考えを鵜呑みにするわけにはいかないのだ。
それでもこのまま空気を悪くするわけにはいかないので、言われるがまま小説の中で良いと思ったキャラクターを思い出す。
「私だけでなく周りを幸せにしてくれるような人」
「ほう……」
とある小説でそんなキャラクターがいた。
これは金銭的地位的なものではない。
一緒にいることで幸せが勝手にやってくる。
そんな人と一緒だったら……。
「現実で例えればウィリアム=ベルモンド公爵のような男か」
「人柄までは存じていないけれど、そもそも私たちとは次元が違う立場の人でしょう」
ベルモンド公爵とは、一度だけ舞踏会でご挨拶をしたことがある。
マクツィア様と婚約した後だったが、そのときに事件は起きた。
公式の場では挨拶がわりに、手の甲に唇を触れる習慣がある。
その現場を見ていたマクツィア様が激怒して私は怒鳴られた。
さすがに公爵相手には何も言えなかったようだが、その時、場の雰囲気が一気に変わった。
それ以来、マクツィア様からの束縛が激しくなったのだ。
「もしあの男から縁談があったらどうする?」
「もちろん断る理由なんてないけれど、あり得ないでしょ」
ローラ家は男爵の中でも、特に貧乏な貴族だ。
男爵が王族と結ばれる事例はゼロではないが、滅多にない。
だが、お兄様がいきなりこういった話をしてくるときは何かしら起こるというジンクスがある。
まさかね……。
話をしながら歩き、貴族街と民間人を通過するための検問所へ到着した。
ちょうどそのときに三台の馬車が貴族街側に入ってきたところだった。
見ただけで王族だとわかったので、私はすぐにその場で馬車に向かって跪く。
横にいるコレは平然と立ったままだった。
お願いだから、ローラ家に恥をかかせないでほしい……。
だが……。
「レオン殿か」
「久しぶりだなウィリアム」
馬車の窓から顔を出してお兄様に挨拶していたのは、ウィリアム=ベルモンド公爵だった。
どうしてコレは公爵に対して平然としている!?
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