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婚約破棄編
1 冤罪による婚約破棄
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「リーレル=ローラよ、婚約破棄させてもらい慰謝料も請求する!!」
「何故ですか? 何か私に過失があったのなら教えていただけませんか?」
婚約者のマクツィア=アラーネウスは、物凄い怒りを露わにした表情で私を睨みつけてきた。
半ば相手側の家から無理やり押しつけられた婚約なので、婚約がなかったことになるのは私としては助かったという気持ちもある。
だが、婚約破棄される理由が思いつかない。
ローラ家に傷もついてしまうし、簡単にはいわかりましたというわけにはいかないのだ。
「本気でそんなことを言うのか! 俺は全てを知っているんだぞ!?」
「なんのことか本当に心当たりがありませんよ……」
「ならばここでハッキリさせてやろう。昨日、俺以外の男と仲良く歩いていただろ。しかもあろうことか男がリーレルの顔に触れていた!」
嫉妬深いのは把握していたが、異性と触れることだけでもここまで激怒するとは想定外だった。
「婚約しているというのに不倫行為をするとは……俺がどれだけ傷つけられたと思っているんだ!?」
昨日?
あぁ、確かにあれは男だな……。
「あの人は私の──」
「やはり男と一緒に歩いていたのは事実なのだな。今更見間違いとは言わせんぞ。この不倫女め!!」
相当頭に血が上っているようだ。
このままでは話もままならないであろう。
落ち着かせるためにも、私は冷静になってもう一度説明する。
「全くもって誤解です。あの人は──」
「お前のような女の言い訳など聞くものか。もう顔も合わせたくないわ。とっとと出て行け、汚らわしい!!」
アラーネウス家の使用人達は、忌まわしい絨毯(じゅうたん)のシミでも見るかのような目を私に向ける。
弁明を許されるような空気ではない。
私は言われるがままアラーネウス家を後にした。
「はぁ……レオンお兄様のおかげで結婚回避ができて助かったけど、どうしてお兄様は勘違いばかりされるのでしょうか……」
ため息を吐きながら帰りの馬車でボヤいた。
昨日はお兄様と買い物に出かけた。
道中で私の目にゴミが入ってしまってパニックになっていたが、お兄様が目に付いていたゴミをとってくれた。
マクツィアはその現場を目撃して、あんなことを言ってきたのだろう。
『あの人は私の兄です』
その一言さえ発言させてもらえなかった。
一方的な婚約破棄だった。
いくらアラーネウス子爵が訴えたとしても、これでは婚約破棄など認められないのに。
逆にこちらからは立場は弱くても婚約解消させるくらいの材料は揃った。
婚約破棄を宣言されたことを報告するために、急ぎ家へと帰った。
馬車から降りて、家のドアを開けるまでの距離がとても長く感じた。
「何故ですか? 何か私に過失があったのなら教えていただけませんか?」
婚約者のマクツィア=アラーネウスは、物凄い怒りを露わにした表情で私を睨みつけてきた。
半ば相手側の家から無理やり押しつけられた婚約なので、婚約がなかったことになるのは私としては助かったという気持ちもある。
だが、婚約破棄される理由が思いつかない。
ローラ家に傷もついてしまうし、簡単にはいわかりましたというわけにはいかないのだ。
「本気でそんなことを言うのか! 俺は全てを知っているんだぞ!?」
「なんのことか本当に心当たりがありませんよ……」
「ならばここでハッキリさせてやろう。昨日、俺以外の男と仲良く歩いていただろ。しかもあろうことか男がリーレルの顔に触れていた!」
嫉妬深いのは把握していたが、異性と触れることだけでもここまで激怒するとは想定外だった。
「婚約しているというのに不倫行為をするとは……俺がどれだけ傷つけられたと思っているんだ!?」
昨日?
あぁ、確かにあれは男だな……。
「あの人は私の──」
「やはり男と一緒に歩いていたのは事実なのだな。今更見間違いとは言わせんぞ。この不倫女め!!」
相当頭に血が上っているようだ。
このままでは話もままならないであろう。
落ち着かせるためにも、私は冷静になってもう一度説明する。
「全くもって誤解です。あの人は──」
「お前のような女の言い訳など聞くものか。もう顔も合わせたくないわ。とっとと出て行け、汚らわしい!!」
アラーネウス家の使用人達は、忌まわしい絨毯(じゅうたん)のシミでも見るかのような目を私に向ける。
弁明を許されるような空気ではない。
私は言われるがままアラーネウス家を後にした。
「はぁ……レオンお兄様のおかげで結婚回避ができて助かったけど、どうしてお兄様は勘違いばかりされるのでしょうか……」
ため息を吐きながら帰りの馬車でボヤいた。
昨日はお兄様と買い物に出かけた。
道中で私の目にゴミが入ってしまってパニックになっていたが、お兄様が目に付いていたゴミをとってくれた。
マクツィアはその現場を目撃して、あんなことを言ってきたのだろう。
『あの人は私の兄です』
その一言さえ発言させてもらえなかった。
一方的な婚約破棄だった。
いくらアラーネウス子爵が訴えたとしても、これでは婚約破棄など認められないのに。
逆にこちらからは立場は弱くても婚約解消させるくらいの材料は揃った。
婚約破棄を宣言されたことを報告するために、急ぎ家へと帰った。
馬車から降りて、家のドアを開けるまでの距離がとても長く感じた。
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