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38 ずるい

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 流石に反応はレムさんとは全く違うし、余計な心配だったな。

 私は興味本位で描いた絵を覗いた。

「なっ!?」

 驚きと同時に感動してしまった。
 殿下の絵は、実力としては芸術品クラスの域に達しているのではないだろうか。
 しかも、描いた絵の内容に驚いてしまう。

「うまく描けただろうか……気持ちは込めたつもりなんだが……」

 私は思わず感動で涙が出てしまった。


 絵を描く人間になら分かる。
 ロック殿下がどのような気持ちで描いていたのか、私のことをどういう風に思ってくれているのかが。
 この絵を見る限りでは好意を持ってくれている。絵がそのように表現されているのだから。

「とても嬉しいです」
「シェリルさんを描いてみたくなっただけだ」

 仮にレムさんが同じように描こうとしていたら遠慮していた。モデルにだって拒否権くらいはある。
 私以外の絵を見る機会は少ない。レムさんの酷いデザインを見た後だったから余計にこの絵が素晴らしく見えてしまう。

「この絵、部屋に飾らせていただけませんか?」

 別に私自身の顔に酔いしれているわけではないことだけは言っておく。
 絵に込められた気持ちが絶大なものだから、仕事部屋に飾っておきたいと思ったまでである。
 それでも他人が入ってきたら自画像を飾るなんて……、というような変な目で見られてしまうかもしれないが。

「困った……これは私の部屋に飾ろうと思っていたのだが……」
「え……?」
「だってこれを飾っておけば常にシェリルさんを眺めていられるようなものだろう?」

 この言葉の意味は大体わかる。絵の感情からもなんとなく勝手に察してしまったが……。

 これはずるい!
 ロック殿下にこんな絵を見せられてこんな言葉を言われてしまったら心臓に矢がグサリと刺されたようなものだ。
 しかも私の手を握ってとんでもないことをお願いしてきた。

「もしもこの絵を仕事部屋に飾りたいのならば、君自身が私の元へ来てくれないだろうか?」
「……え、と……ありがとうございます」

 突然のロック殿下の発言に、即答で答えてしまった。
 何を無神経にそんなことを言ってしまったんだ私は!
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