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36 パンドラのお手柄

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「パンドラさん、働きながら名探偵のようなことをされていたのですか?」
「名探偵ではないが、それに近いものはあるかもしれない。実は、デーギス家の当主……つまりシェリルさんの元取引されていた責任者が犯罪者だったのだよ」

 これには流石に驚いた。

 今まで関わっていた時だってそのような素振りなど全くなかったし、デザインの提供を停止する報告をしたときだって申し訳ない気持ちでいっぱいだった。

「デーギスの工場は脱税をしていたのだよ。パンドラがあの家の使用人のときに、燃やすよう命じられた書類を証拠として隠し持ってくれていたのがきっかけでどんどん詰めていけた」

 あの人が脱税をしていたとは……。
 ハイタム達が用意してくれた紅茶をゆっくりと飲んで気持ちを落ち着かせた。

「ついに堂々と潰しに行く準備も整ったとき、シェリルさんがそこの取引先という話を聞いてね。捕える前に君をなんとか助けたいとも思ったんだよ。なんとかして王宮の仕立屋にスカウトできないかと。それにこれはチャンスだと思った」

「ところで、なんのチャンスです?」
「もちろん、君のデザインを国中に広めるチャンスだよ」

 スケールが大きすぎる。

 実際問題、今の仕立屋に変わってから依頼も殺到状態だし作る量も物凄い増えた。
 つまり、入ってくるお金も数十倍、いや……もしかしたら百倍を超えるかもしれないくらいに跳ね上がっている。


「今後国中のファッションがシェリルさんのデザインで溢れるかもしれないと思うと興奮してしまうよ」

「いえ、デザインはあくまで人それぞれ好みがありますから……。私のデザインを全員が気に入ってくれるわけではありませんよ。レムさんのデザインだって世界中探せば気に入る方がもしかしたらいるかもしれませんし」

「……さりげなくあの女に毒吐いてますね」

 パンドラ……探るのはやめてくれ。あれだけ私のデザインを批判されたのだから、少しくらい本当のことを言ってもいいじゃないか。
 あ、また心の中で毒吐いてしまった。

「調べたがあの者達、あのどうしようもないデザインで五万着も作ったらしい。そのために莫大な借金も抱えてしまったようだな。おまけに製造した会社は潰れた。返品することもできないし、もはや逃げ道は完全に絶たれたな」

「……ロック殿下もそう言いながら笑顔。不幸を喜んでいる顔」
「探るな……。シェリルさんにここまで馬鹿にした者など許せるものか。これでも私はシェリルさんの大ファンなのだからな!」

 本人の前でそんなことを言うなんて……。
 私は恥ずかしさのあまりモジモジしてしまう。

「あ……あの、ロック殿下? そろそろ仕事部屋見ますか?」
 これ以上喋るとパンドラに更にいじられそうなので、仕事モードに切り替えた。

「そうだな、よろしく頼む」
「……密室空間にシェリル様とロック殿下が二人きり。邪魔しないようにする」

 いや、そういう心配しなくていい……多分。


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【後書き】

読んでいただきありがとうございます。

本日投稿した新作のお知らせです。

新作『順序を守り過ぎる婚約者から、婚約破棄されました。~幼馴染と先に婚約してたって……五歳のおままごとで誓った婚約も有効なんですか?~』

こちらも宜しくお願い致します。
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