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16 レム視点 (2) 頭大丈夫?

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「レムよっ!! わざとらしく間違えないで欲しいわ!」

 すぐにそっぽを向いて私の顔を見ようともしない……。この態度が昔から気に食わなかったのだ。

「……思い出しました。大変失礼致しました、クズお嬢様」
「はぁ!? どこにそんな酷い名前をつける親がいるのよ! それに一文字も合ってないじゃないのっ!!」

 わざとらしい! パンドラは無愛想だし、常に棒読みみたいなロボットのような口調で喋ってくるのも気に食わない。

「……で、何しにこられたのですか? 何故結婚したはずのバ……ガルカ様とご一緒なのでしょうか?」

 今この女、主人の息子に対してバカって言おうとした?
 本当に頭おかしいんじゃないのか、この女は。

「今ガルカと一緒に住んでるんだから一緒に来て当たり前でしょう!」
「……左様でございますか。シェリル様が同居を許可したとは信じ難いですが」

 全くこの女は。実際に現場を見ていないからなんでも言えちゃうのよね。

「ふっふーーーん! 驚きなさい! シェリルさんのデザイナーの仕事だって私もやることになってるし、もうすぐそれでお金持ちなのよ」
「……妄想癖」

 失礼な! 私がお金持ちになったってあんたなんかには絶対に恵んであげないんだからね。
 おっと、雑談をしている場合ではなかった。肝心なことを忘れていた。

「パンドラ? 私使用人としても一人前になったんだから!」
「……それも妄想癖ですか?」

「失礼ね!! 私は好奇心旺盛な勇敢な女なんだからっ! その気になれば簡単よ!」
「……では、どこが一人前になったのでしょうか?」

「ふっふーん! 聞いて驚きなさい! 主人の食事中につまみ食いをしなくなったわ!」
「──!?」

 よし、驚いているようだ。パンドラは驚いたり異変を察知したときにだけ表情が変わるからわかりやすくていい。

「それだけじゃないわよ。お風呂だって一番風呂を自粛するようになったんだから!」

 まぁ……どちらもうるさすぎる使用人がいるから、渋々我慢しているだけなんだけど。

「……奇跡です。そこまで成長されたとは……。デーギス家が終わりを告げてしまう前触れでしょうか?」
「何言ってんの? 私だってベテランの使用人になれたことをもっと褒めて欲しいわね」

「……あー、おめでとう、おめでとう」

 パンドラはゆっくりしたペースで拍手をしてくれた。
 よしよし、これで口煩かったパンドラよりも上の立場になれたわ。

 満足。

 あとはガルカのお父さんに私が描いたデザインを確認して……。
 あぁ、考え始めたらニヤけてしまった。

「……また妄想」
「うるさいわよパンドラ」
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