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14 誤字

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「こ……これは誤字でしょうか……!?」

 契約書類に目を通しているのだが、予定生産数に関する項目を何度も見直した。
 これは確実におかしいだろうと確認したのだが……。

「いえ、間違いはありません。少なくて申し訳ございません……」
「逆ですよ! 多すぎでは? 今までの生産数の十倍以上ですよ!?」

「むしろ少なすぎだと思いますが。尚、その書類に記載されている新作の受注量は、まだ概ね全体の三割です」

 驚きのあまり、私の目がまんまるになってしまった気がする。

「流石に、そこまで売れるとは思えませんが……」

「いえ、絶対に売れますとも。シェリル様のデザインですぞ。売れ残る方が不思議ですから。とはいえ、まだ全国に宣伝をしていませんからな。王宮直属の工場とはいえ生産スピードには限界があるので一部の地域にしか宣伝していないんですよ……」
「全国販売ですか……?」

 驚きのあまり手が震えてしまっている。
 今までは実家での直接販売だけだったし、王宮直属の仕立屋で生産してもらうとはいえ、今までどおりかと思っていた。
 生産する数量は任せるとは言ったのだが、まさかの全国販売になってしまうとは……。

「シェリル様のデザインは王宮内でも非常に高い評価ですからな。特に結婚式でシェリル様が自ら着用されていたドレスは、商品化して欲しいと貴族の方々が口を揃えて言っていた程ですぞ」
「あぁ……あれだけは世界で一着のドレスにしたくて……。それから、できれば生産量を減らしていただけないでしょうか?」
「ほう……それは何故ですかな?」
「実家での販売が減ってしまわれるのではないかと……」

 そもそもこの仕事は、私自身のお金儲けでやっているわけではない。どちらかというと、実家が商売繁盛するように手助けをしている方が気持ちとしては強い。
 ここから全国に販売するのはいいが、王都までここから販売されては実家に影響が出てしまうだろう。

 それでは本末転倒である。

「シェリル様……我々がアルブライデ家の販売を下げるようなプランを作るわけがありませんよ。王都内での需要分は全て今までどおりアルブライデ家で販売していただきます。この受注は近隣の街へ発送する分ですので……」
「え!?」

 次から次へと驚きの連続である。
 実家に影響がないなら問題はないのだが、売上額がとんでもない金額になってしまうに違いない。

「シェリル様……それから北の地域からは防寒服を、南の地域からは水着のデザインを作って欲しいと依頼がきております。他にも細かくご説明すると三八件依頼が……」
「なんですって!?」

 嬉しい案件ではあるが、そんなに一気に描けない。
 私は自分のペースを崩さない範囲で、少々遅くなってもよければという条件で全ての依頼を引き受けることにした。

 これから大変になりそうだ。
 でも、やりがいがあるし、なんとかやってみますか!
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