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11 レムへの指導

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「主人様、お茶のご用意が……出来たですが」
「違います! 『お茶のご用意ができました』というように」

 使用人にさせられたレムと、レムの教育係になったライドが私の仕事部屋へ入ってきて、早速怒られていた。

 レムにはあえて丁重にもてなすようにとお願いしたのだが、そのレムが使用人になると言い出してしまったので、作戦変更である。
 思ったよりも手強い。

「レムさん、頑張ってますね。きっと私が雇った使用人は皆私達と同世代ですが、王宮で仕えたことがあるベテランなので、教わっていればレムさんも良い使用人になれると思いますよ」
「う……うん、あのさ、私の描いたデザインは──」

「その言葉遣いはなんですか! 立場を弁えてください。主従関係は徹底するように」
「は! はいー!」

 うん、厳しく指導している。

 使用人経験があるはずのレムは、使用人としてあまりにも酷い出来だったので、作戦としては厳しく徹底的に指導するようにお願いした。
 ガルカと接触する機会をなるべく減らすためである。

 それに、教育がしっかりとされれば、考え方も改まり不倫だけはしなくなるかもしれないという淡い期待もあった。

 レムの好奇心旺盛で自信満々という性格さだけは好きなのだ。
 不倫さえなければ仲良くなれるかもしれないという、最後の情けだ。


 私はお茶を飲んでゆっくり休んでいる。
 奥のキッチンからは、ライドとレムが夕飯の支度をしていた。
 レムはしごかれているが、頑張ってほしい。
 今のところは弱音を吐いて家を出ていくというプランが一番望ましいのだが。

「主人様、お客様がお見えですが」

 今度は、ハットが私にそう告げた。

「あら、誰かしら?」
「そ……それが……」

 誰だろう。私はすぐに玄関へ移動して客人を出迎えた。

「シェリル=アルブライデ様でお間違いありませんか?」
「は、はい。そうですが、どちら様でしょうか?」

 玄関の前で立っているのは三人で、後には護衛までつけていた。
 明らかに貴族の人間か王宮の関係者なのだろう。
 だが、私はこの人達と会ったことが一度もない

「失礼しました。我々は王宮直属専属の仕立屋です。此度はシェリル様の数々の実績を見込んでお願いがございます」
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