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【視点】その1

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【前書き】

時系列は、前回のお話の二日前(シュリアーナが婚約破棄される前日)からになります。

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「良いかウェッカ騎士団長よ。今回の作戦は絶対に失敗はするでないぞ。無論、他言厳禁だ。言いふらせば貴様の命もないものだと思うのだぞ?」
「当たり前ですよ。殿下の婚約者を昏睡させ、バレないように処理することくらい私に不可能はありませんので」
「ふむ! その目。本気のようだ。いいぞいいぞー。さすが私が目をつけただけのことはある男だ。成功した暁には特別ボーナスとしてあの女を好き勝手しても構わんぞ。死体だがな」
「お気に召さなかったとはいえ、殿下の婚約者を好き勝手にしていいなどというなんという有り難き幸せ!」

 騎士団長のウェッカは私のことを唯一信頼してくれている男だ。
 何事も肯定してくれるし褒めてくれる。
 他のバカどもも彼を見習って欲しいものだ。

 とは言っても、ウェッカも利用はさせてもらうがな。

「良いか? もしも他殺だとバレてしまった場合はお前が自白しろ。そのかわり、私が愛する婚約者を奪った罪をー、と言いながらも処刑にせずに無罪にもっていけるように最善を尽くす」
「それで構いません。まぁ自害と認識させる自信はあるので大丈夫だと思いますが。もしもの場合はご協力お願いいたします」
「うむ! 頼りにしているぞウェッカ騎士団長」

 バカな男だ。
 私がそんなめんどくさいことするわけないだろう。
 婚約者を奪った罪として死んでもらうだけだ。
 むしろ口封じに殺すという手も考えてはいたが、これだけ私のことを信頼してくれているからな。
 多めに見てやろう。

「では準備をしますのでこれにて失礼致します」

 ウェッカ騎士団長がすぐに準備にとりかかりに動き出したようだ。

 さて、明日はいよいよシュリアーナを婚約破棄だと言い渡し殺す記念日となる。
 あの女を自殺に見せかけて殺しておけば、私に同情して国王選抜が有利になるかもしれんからな。
 さすがに兄上を殺してしまえば、いずれ足取りを掴まれバレてしまう。
 だが、シュリアーナならばたかだか子爵家。
 国としても血眼になって調査することはないだろうよ。
 たとえ私の婚約者だとしてもだ。

 ♦︎

 シュリアーナが倒れ、ウェッカ騎士団長が予定通りに隠し通路から表に出て運んで行きおった。
 ついに、邪魔者を始末することに成功したのだ。

「これでようやく邪魔者が消え、私が王となり国を支配できる日も近くなる……。王にさえなれればこんな馬鹿げた国を一気に私の支配下に塗り替えてやる」

 私の行動に誰もがいい顔をしてくれなかった。
 父上も父上で、叱責しかしてこない。
 私も何度も反論するのがめんどくさくなって、それいらい口を聞くことすらなくなった。

 あとは王位継承で最も邪魔な兄上の存在だが、あいつは殺さずとも問題はない。
 何故ならば、民衆の誰もが兄上の公約を納得できるはずもないと予想しているからだ。

「なにが『より厳しく、教育に力を入れていく』だ。バカめ。そんな勉強ばかりさせるような国などカスだカス。それよりも、私の公言した『皆自由にさせよう。税収はゼロ。週休五日』と宣言した言葉の方が優位に決まっている」

 もちろん公言どおりにするわけはないが。
 むしろ支配しかしないだろう。
 バカな民衆どもは私の言葉にまんまとのっかり次期王位継承は私のものだ。
 珍しくも、王位継承は兄弟二人の民衆からの投票制で決まることになっているから助かった。

 さて、シュリアーナが自害したのが発覚するのはもう少しあとで動くとしようか。
 死体の身体で満足したら湖に捨てるように命じたからな。
 湖の定期清掃の日に発見したことにすれば問題ないだろう。
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