1 / 11
残酷な王子
しおりを挟む
「婚約破棄だ破棄! シュリアーナよ、お前のような口うるさい女など必要ない!!」
ジェダル王子殿下の個室に呼び出され、いきなりこのようなことを言われてしまった。
護衛や警備がこの部屋に全くいないことを考えると、ジェダル殿下独断で勝手に決めたことなのだろう。
「お言葉ですがジェダル様、このままもしも国の王となれば国が滅びます。それほど教養がなっておられません。陛下もジェダル様のことと今後の国のことを心配されて、私のような者を正妻としてお選びいただいたのですから」
「バカめ、私に教育など必要ない。それに私の意思も考えないでこのような結婚などするものか!」
私の家柄は準伯爵家である。
本来ならば次期国王候補の一人になる王子などと婚約など滅多にないだろう。
だが、貴族の集まるパーティーでの出来事だった。
ジェダル殿下がわがまま気ままに文句を言い出し、パーティーをメチャクチャにしていた。
我慢ならず、私が覚悟を決めて注意して止めに入った。
周りにいた物達は凍りついていたが、偶然この光景を見ていた国王陛下が気に入ってくれたらしい。
陛下ですらジェダル殿下の暴走っぷりに手を焼いていたそうだ。
私のようなハッキリと言えるような人と結ばせ、ジェダル殿下を教育してほしいとの頼みだった。
結婚せずとも専属使用人でも良いのではと思ったが、正妻相手なら耳を傾けるのではないかという意向らしい。
私は恐れ多いし何よりも大変そうだと思ったので断ろうとしたが、お父様やお母様は泣いて喜んでいたので仕方なく今に至る。
普段から殿下の暴走っぷりを叱責したり改善させようとしたりで私自身もヘトヘトになっていた。
正直、婚約破棄してくれるのは助かるのだが……。
「陛下はこのことを承知の上なのですか?」
そんなわけはないだろうと確信しているが、名目上の問題で聞くことだけはしておく。
もちろん否定してくるとは思っていたが、私の予想を遥かに上回るとんでもないことを言い出してきたのだ。
「知っているわけないだろう!」
「え!?」
意外だった。
まさかあっさり認めてしまうなど普段のジェダル殿下らしくない。
しかも、こんな状況でも笑っているのが不気味で怖くなってきた。
「どうせ婚約破棄と言ったところで誰も認めようとしないのだろう?」
「わかっているのに何故婚約破棄をしようと命じてくるのでしょうか?」
今のジェダル殿下が何を考えているのか全く想像がつかない。
それなのに、ゲラゲラと笑っているのだから恐怖すら感じるようになってしまう。
「つまり、シュリアーナが自害すればいいのだよ」
「そんなことするわけないでしょう!?」
「いや、するのだよ。正確にいえば私が毒を盛ってだがね」
言っている意味がようやく理解できた。
つまり、ジェダル殿下は私を毒殺して、それを自害に見せかけようと企んでいるようだ。
こんなことまで考えるほど頭が狂っているとは想定以上だった。
すぐに逃げ出そうと試みたが手遅れ。
外には隠れていたジェダル殿下の部下がいつの間にか配備され、私はその物達に捕われてしまった。
「全てはシェリアーナがいけないのだよ。あんな馬鹿げたパーティーで私のことをコケにしたのだから。その後も口うるさい文句ばかり言いやがって……。おかげで貴様に対する性欲すら感じなくなってただのゴミのような存在に成り果てたのだから、死んで当然なのだよ」
必死に抵抗しようとしているが、男二人の筋力に私が勝てるわけはなかった。
更にもう一人、この男もおそらくジェダル殿下の部下なのだろう。
妙な瓶を持っているのはおそらく毒。
それを私の口元に無理やり当ててきて、飲まされてしまった。
「うぅ……」
意識がどんどん薄れていく。
あぁ、ここで眠って二度と目覚めることなどないのだろう。
あぁ、せめてジェダルという最低な男に罰がおとずれますように……。
ジェダルの笑い声が聞こえる中、私は意識を落としてしまった。
ジェダル王子殿下の個室に呼び出され、いきなりこのようなことを言われてしまった。
護衛や警備がこの部屋に全くいないことを考えると、ジェダル殿下独断で勝手に決めたことなのだろう。
「お言葉ですがジェダル様、このままもしも国の王となれば国が滅びます。それほど教養がなっておられません。陛下もジェダル様のことと今後の国のことを心配されて、私のような者を正妻としてお選びいただいたのですから」
「バカめ、私に教育など必要ない。それに私の意思も考えないでこのような結婚などするものか!」
私の家柄は準伯爵家である。
本来ならば次期国王候補の一人になる王子などと婚約など滅多にないだろう。
だが、貴族の集まるパーティーでの出来事だった。
ジェダル殿下がわがまま気ままに文句を言い出し、パーティーをメチャクチャにしていた。
我慢ならず、私が覚悟を決めて注意して止めに入った。
周りにいた物達は凍りついていたが、偶然この光景を見ていた国王陛下が気に入ってくれたらしい。
陛下ですらジェダル殿下の暴走っぷりに手を焼いていたそうだ。
私のようなハッキリと言えるような人と結ばせ、ジェダル殿下を教育してほしいとの頼みだった。
結婚せずとも専属使用人でも良いのではと思ったが、正妻相手なら耳を傾けるのではないかという意向らしい。
私は恐れ多いし何よりも大変そうだと思ったので断ろうとしたが、お父様やお母様は泣いて喜んでいたので仕方なく今に至る。
普段から殿下の暴走っぷりを叱責したり改善させようとしたりで私自身もヘトヘトになっていた。
正直、婚約破棄してくれるのは助かるのだが……。
「陛下はこのことを承知の上なのですか?」
そんなわけはないだろうと確信しているが、名目上の問題で聞くことだけはしておく。
もちろん否定してくるとは思っていたが、私の予想を遥かに上回るとんでもないことを言い出してきたのだ。
「知っているわけないだろう!」
「え!?」
意外だった。
まさかあっさり認めてしまうなど普段のジェダル殿下らしくない。
しかも、こんな状況でも笑っているのが不気味で怖くなってきた。
「どうせ婚約破棄と言ったところで誰も認めようとしないのだろう?」
「わかっているのに何故婚約破棄をしようと命じてくるのでしょうか?」
今のジェダル殿下が何を考えているのか全く想像がつかない。
それなのに、ゲラゲラと笑っているのだから恐怖すら感じるようになってしまう。
「つまり、シュリアーナが自害すればいいのだよ」
「そんなことするわけないでしょう!?」
「いや、するのだよ。正確にいえば私が毒を盛ってだがね」
言っている意味がようやく理解できた。
つまり、ジェダル殿下は私を毒殺して、それを自害に見せかけようと企んでいるようだ。
こんなことまで考えるほど頭が狂っているとは想定以上だった。
すぐに逃げ出そうと試みたが手遅れ。
外には隠れていたジェダル殿下の部下がいつの間にか配備され、私はその物達に捕われてしまった。
「全てはシェリアーナがいけないのだよ。あんな馬鹿げたパーティーで私のことをコケにしたのだから。その後も口うるさい文句ばかり言いやがって……。おかげで貴様に対する性欲すら感じなくなってただのゴミのような存在に成り果てたのだから、死んで当然なのだよ」
必死に抵抗しようとしているが、男二人の筋力に私が勝てるわけはなかった。
更にもう一人、この男もおそらくジェダル殿下の部下なのだろう。
妙な瓶を持っているのはおそらく毒。
それを私の口元に無理やり当ててきて、飲まされてしまった。
「うぅ……」
意識がどんどん薄れていく。
あぁ、ここで眠って二度と目覚めることなどないのだろう。
あぁ、せめてジェダルという最低な男に罰がおとずれますように……。
ジェダルの笑い声が聞こえる中、私は意識を落としてしまった。
1
お気に入りに追加
647
あなたにおすすめの小説
婚約破棄されましたが、帝国皇女なので元婚約者は投獄します
けんゆう
ファンタジー
「お前のような下級貴族の養女など、もう不要だ!」
五年間、婚約者として尽くしてきたフィリップに、冷たく告げられたソフィア。
他の貴族たちからも嘲笑と罵倒を浴び、社交界から追放されかける。
だが、彼らは知らなかった――。
ソフィアは、ただの下級貴族の養女ではない。
そんな彼女の元に届いたのは、隣国からお兄様が、貿易利権を手土産にやってくる知らせ。
「フィリップ様、あなたが何を捨てたのかーー思い知らせて差し上げますわ!」
逆襲を決意し、華麗に着飾ってパーティーに乗り込んだソフィア。
「妹を侮辱しただと? 極刑にすべきはお前たちだ!」
ブチギレるお兄様。
貴族たちは青ざめ、王国は崩壊寸前!?
「ざまぁ」どころか 国家存亡の危機 に!?
果たしてソフィアはお兄様の暴走を止め、自由な未来を手に入れられるか?
「私の未来は、私が決めます!」
皇女の誇りをかけた逆転劇、ここに開幕!

側妃に追放された王太子
基本二度寝
ファンタジー
「王が倒れた今、私が王の代理を務めます」
正妃は数年前になくなり、側妃の女が現在正妃の代わりを務めていた。
そして、国王が体調不良で倒れた今、側妃は貴族を集めて宣言した。
王の代理が側妃など異例の出来事だ。
「手始めに、正妃の息子、現王太子の婚約破棄と身分の剥奪を命じます」
王太子は息を吐いた。
「それが国のためなら」
貴族も大臣も側妃の手が及んでいる。
無駄に抵抗するよりも、王太子はそれに従うことにした。

二度目の婚約者には、もう何も期待しません!……そう思っていたのに、待っていたのは年下領主からの溺愛でした。
当麻月菜
恋愛
フェルベラ・ウィステリアは12歳の時に親が決めた婚約者ロジャードに相応しい女性になるため、これまで必死に努力を重ねてきた。
しかし婚約者であるロジャードはあっさり妹に心変わりした。
最後に人間性を疑うような捨て台詞を吐かれたフェルベラは、プツンと何かが切れてロジャードを回し蹴りしをかまして、6年という長い婚約期間に終止符を打った。
それから三ヶ月後。島流し扱いでフェルベラは岩山ばかりの僻地ルグ領の領主の元に嫁ぐ。愛人として。
婚約者に心変わりをされ、若い身空で愛人になるなんて不幸だと泣き崩れるかと思いきや、フェルベラの心は穏やかだった。
だって二度目の婚約者には、もう何も期待していないから。全然平気。
これからの人生は好きにさせてもらおう。そう決めてルグ領の領主に出会った瞬間、期待は良い意味で裏切られた。
いつの間にかの王太子妃候補
しろねこ。
恋愛
婚約者のいる王太子に恋をしてしまった。
遠くから見つめるだけ――それだけで良かったのに。
王太子の従者から渡されたのは、彼とのやり取りを行うための通信石。
「エリック様があなたとの意見交換をしたいそうです。誤解なさらずに、これは成績上位者だけと渡されるものです。ですがこの事は内密に……」
話す内容は他国の情勢や文化についてなど勉強についてだ。
話せるだけで十分幸せだった。
それなのに、いつの間にか王太子妃候補に上がってる。
あれ?
わたくしが王太子妃候補?
婚約者は?
こちらで書かれているキャラは他作品でも出ています(*´ω`*)
アナザーワールド的に見てもらえれば嬉しいです。
短編です、ハピエンです(強調)
小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿してます。

【完結】己の行動を振り返った悪役令嬢、猛省したのでやり直します!
みなと
恋愛
「思い出した…」
稀代の悪女と呼ばれた公爵家令嬢。
だが、彼女は思い出してしまった。前世の己の行いの数々を。
そして、殺されてしまったことも。
「そうはなりたくないわね。まずは王太子殿下との婚約解消からいたしましょうか」
冷静に前世を思い返して、己の悪行に頭を抱えてしまうナディスであったが、とりあえず出来ることから一つずつ前世と行動を変えようと決意。
その結果はいかに?!
※小説家になろうでも公開中
婚約破棄? 私、この国の守護神ですが。
国樹田 樹
恋愛
王宮の舞踏会場にて婚約破棄を宣言された公爵令嬢・メリザンド=デラクロワ。
声高に断罪を叫ぶ王太子を前に、彼女は余裕の笑みを湛えていた。
愚かな男―――否、愚かな人間に、女神は鉄槌を下す。
古の盟約に縛られた一人の『女性』を巡る、悲恋と未来のお話。
よくある感じのざまぁ物語です。
ふんわり設定。ゆるーくお読みください。
婚約破棄してくださって結構です
二位関りをん
恋愛
伯爵家の令嬢イヴには同じく伯爵家令息のバトラーという婚約者がいる。しかしバトラーにはユミアという子爵令嬢がいつもべったりくっついており、イヴよりもユミアを優先している。そんなイヴを公爵家次期当主のコーディが優しく包み込む……。
※表紙にはAIピクターズで生成した画像を使用しています

嫁ぎ先(予定)で虐げられている前世持ちの小国王女はやり返すことにした
基本二度寝
恋愛
小国王女のベスフェエラには前世の記憶があった。
その記憶が役立つ事はなかったけれど、考え方は王族としてはかなり柔軟であった。
身分の低い者を見下すこともしない。
母国では国民に人気のあった王女だった。
しかし、嫁ぎ先のこの国に嫁入りの準備期間としてやって来てから散々嫌がらせを受けた。
小国からやってきた王女を見下していた。
極めつけが、周辺諸国の要人を招待した夜会の日。
ベスフィエラに用意されたドレスはなかった。
いや、侍女は『そこにある』のだという。
なにもかけられていないハンガーを指差して。
ニヤニヤと笑う侍女を見て、ベスフィエラはカチンと来た。
「へぇ、あぁそう」
夜会に出席させたくない、王妃の嫌がらせだ。
今までなら大人しくしていたが、もう我慢を止めることにした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる