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第二章 貧民街編

10 王都を去る

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「せめてもの償いです。それに、この街にいたらいずれ私は……殺されるかもしれないと思って……」
「どういう……あぁ、なるほど」
「シャイン様がいなくなったとすれば、代わりに親族の方が訴え、多額の慰謝料だけでなく存在すら消される、つまり処刑されてしまうのではないかと……」

 そこまでは私も脳が回らなかったな。
 言われてみて気が付いたけれど、手段を選ばずに金品を民から巻き上げるようなお父様ならやりかねない。

 もしくはブロンダ側の両親が訴える可能性だってあるだろう。

「でも、いいの? 貧民街と言ったらもっと無法地帯かもしれない」
「構いません。この街で殺されるくらいなら、せめてシャイン様にお詫びをした上で……」

 ミーナが本気のような真剣な眼差しをおくってくる。
 かわいい。
 いやいや、今はそんなことを考えている場合ではない。

「わかった。でも、私だって向こうでどうしたらいいかはわかってないから、責任は取れないけれどいい?」
「もちろんです!! ありがとうございます」
「じゃあ連絡先を、バインかドスコィかブイッタ……あ、そんなのないんだった。えーと……、家どこ?」
「実は、もうありません」
「そう……。三日後に出発だからそれまでうちにおいで!」

 お父様たちが私のことを時々悪女だの疫病神だの言ってくることがあったが、本当にそうなのかもしれない。
 今の私は、ミーナを連れて行くことによって私にもメリットがありそうな、そんな損得感情が先行していたのだった。

 ♢

「と、いうわけで、私は貧民街へ行くことになってしまったの」

 家に帰りアルマとエレナにミーナを紹介した後、二人には私の今後の処遇について話した。
 貧民街へ無理に彼女たちを連れて行くわけにはいかない。
 危険があるかもしれないが、どちらを選択してもそう変わらない気がするのだ。

「私もお供していいでしょうか?」
「わたしもですぅ」
「即決なの!?」

 予想外の返答に内心驚いている。
 今の生活がなくなることに変わりはないが、アルマとエレナに関しては不倫されていることは郊外されていないはず。
 民衆街に戻って最低限の生活が送れるはずなのだが。

「一生奥方様について行きますと宣言しましたよね?」
「でも、あれはあくまでこの家にいることが前提でしょう? 私がこれから向かう場所はそんな平和な場所じゃないし」
「だからこそ、命の恩人である奥方様を守る義務は私にあるのです!」
「それに、奥方様と別れるのは寂しいですしぃ……」

 なんだこの展開……。
 つい涙がうるっときてしまった。
 三人とも何か勘違いしているようだけれど、私は命を助けたとかそういうことはしていない。
 ただ、身分の差でここまでも不公平な世界ということが気にくわないだけだ。

「はぁ……出発は三日後だから、必要なものはみんなで準備しないとね!」
「「「はい!!」」」

 こうして三日後、お父様が手配した馬車が早朝から訪れ、荷物を可能な限り積んで王都を去った。
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