【完結】旦那に愛人がいると知ってから

よどら文鳥

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10 予定外の刺客

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「ほう、さすが俺の愛するベルジャミ。さぁ、こんな女なんか……ぶふううぅぅうぇぇぇええ!!?」
 物凄い重そうな鈍い音と同時にザーガルトは地面に叩きつけられた。
 ベルジャミの右ストレートパンチが頬にヒットしたのだ。

「ぐ……ぐうぅぅ……」
「酷い! 酷すぎるわよ! アンタ最低! 私たちの出会いのきっかけを騙しただけじゃなくて、ジュリアーナさんの心までこんなに傷つけるなんて……」

 あぁ、もうベルジャミの演技は終わってしまっている。
 まぁ後は追い詰めるだけだからもういいんだけど。

「ザーガルト。さっき知ったのよ。あなたがやっていたことを……私だけでなくこの子にまでサクラを使ってヒーローのフリして口説いてたことをね」
「──!?」
 ザーガルトはガタガタと震え始めている。

「今まで私を騙していたのでしょ? それだけならまだいいわよ。なんでベルジャミにまで酷いことをしたの!?」
「酷くはないだろう……そもそもこんなことに騙されて俺についてきたお前たちがバカなんだ。それに女なんて他に腐るほどいる。別にここで捨てられようが俺には痛くもないわ!」

 ヤケになっているのが良くわかる。これでも一緒に住んできたのだから多少のことは理解してしまう。
 だが、これをベルジャミの前でやるのはどうかと思うが……。

「許さない! 絶対に許さないわよ! こんの! ──!?」

 ベルジャミが殴りかかろうとしたとき、予想もしなかった自体が起きてしまったのだ。

「おっと、そこまでだねーちゃん!」
「──!? アンタ! あのときの!」
「そうそう、覚えてくれているとはねぇ……」

 ベルジャミの腕を掴んでそのまま吹っ飛ばしてしまった。
 二人組でどちらもガタイが、かなりゴツい。

「おいおい、そんなミニスカートで転んだらパンツが丸見えじゃないか」
「へっへー……その中も見させてもらおうかー!」

「え……な……なに! 誰!?」
 咄嗟に倒れているベルジャミのそばに駆け寄って彼女の前に立って見えないように庇う。
 とは言っても、私もガタガタと震え始めてしまった。
 ベルジャミをこんなにあっさりと追い詰めてしまうなんて嫌な予感しかしない。

「元、そこで情けなく倒れている奴の依頼人といえばわかるよな?」
「まぁ今回は依頼されているわけじゃねーし。俺たちの自由時間だがな」

「ま……まさか、この子を襲わせてわざと逃げるようにしたっていう……」
「そうそう。あん時は多額の金で大人しく我慢したが、やはりあそこまで展開が進んだら未練が残るからなぁ」
「偶然見つけたんで、このバカ男の始末ついでに来てやったのさ」

 どうやらザーガルトを口封じで殺すのは予測できる。更に、私たちも色々とやられた後に殺すつもりなのかもしれない。
 こんなことなら路上で遭遇しなければ……いや、どっちにしてもそれではベルジャミが危険だったのかもしれないが。

 まさかこんな展開になってしまうとは……どうしたらいいのだろうか。
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