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3 旦那の叱責とカフェで癒し
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「お前はバカなのか!? なんで買物した荷物をどこかに置き忘れたりするんだ!?」
「ごめんなさい……」
荷物を全部持たせて浮気していたくせにと言いたいがそれも言えない。
離婚はしたくないが、不倫関係はやめてほしい。
一番立場が弱いのだ。
「メシの準備もしない、せっかく買った荷物は忘れる……お前には脳味噌というものがあんのか!?」
「ごめんなさい……」
それでも必死に謝る。
おそらく周りにこのことを話してしまえば、全員が揃ってこんな奴と離婚しろって言ってくるだろう。
そんなことは私が一番理解している。
だが、このどうしようもないくらい好きだという気持ちには勝てやしないのだ。
なんとかして不倫を終わらせ、再び私と夫婦としてやっていけないだろうか。
それだけを考えていた。
「良いか? 今のお前の利点はソムリエとしての年収にある。もしも稼げなくなって再就職もできないようなら離婚する」
「……」
脳内では、『このクソ旦那がぁぁ!』と思ってしまうほど頭にきている。
それでも、『早く昔の優しいザーガルトに戻ってほしい』と願っている。
怒りをぐっと堪えて、私は一人で買物に出かけて、夕飯の材料を再び買って準備を始めた。
遅くなってしまったが、夕飯の準備ができたのだが、ザーガルトは既に寝てしまっている。
仕方がないので、私は一人で寂しく食事した。
寝るのもいつの日か別々の部屋なので接点すらないのだ。
♢
「冴えない顔だな……何かあったのか?」
「うん、色々と悩んでいるの……」
今日は仕事が休みなので、行きつけのカフェに来て溜まったストレスを絶賛解放中だ。
ここのマスターは私の二個上で、ザーガルトの同級生でもある。
ちなみに、マスターには恩があって、私をソムリエの道へ導いてくれた張本人だ。
「またザーガルトのことか? 失礼だがよくイヤにならないよな……。あんな男のどこに惚れたんだ?」
「うん、まぁ私にとっては命の恩人だからね……」
「誰にも話さないんだもんな。余程大事な思い出なんだろうな」
そのとおりで、あの事件のことは誰にも話していない。
喋ればザーガルトの株が爆上りだろう。
それでもこれだけは私だけの秘密。
イヤな出来事ではあったものの、これだけは私だけの大事な思い出なのだ。
幸い、おしゃべりなザーガルトもこのことだけは誰にも喋っていないらしい。
私たちのことをほとんど知っているマスターですら、何かの事件で出会ったとしか知らない。
マスターと喋っていると、ドアがガランガランと音が鳴ってお客さんが入ってきた。
ふと見てみると、私は完全に固まってしまった。
別に石化の魔法をかけられたとかそういうのではない。魔道具はあるが、魔法は存在しないし。
「マスター! いつものちょーだい」
「あいよ。ベルジャミちゃん相変わらず可愛いね」
「おだてても飲むのは二杯だからね!」
マスターと知り合いだったのか……。
私達が鉢合わせなかったのは偶然だったのだろう。
この顔は忘れるはずもない。
何故なら、昨日ザーガルトと一緒にくっついていた浮気相手なのだから!
「ごめんなさい……」
荷物を全部持たせて浮気していたくせにと言いたいがそれも言えない。
離婚はしたくないが、不倫関係はやめてほしい。
一番立場が弱いのだ。
「メシの準備もしない、せっかく買った荷物は忘れる……お前には脳味噌というものがあんのか!?」
「ごめんなさい……」
それでも必死に謝る。
おそらく周りにこのことを話してしまえば、全員が揃ってこんな奴と離婚しろって言ってくるだろう。
そんなことは私が一番理解している。
だが、このどうしようもないくらい好きだという気持ちには勝てやしないのだ。
なんとかして不倫を終わらせ、再び私と夫婦としてやっていけないだろうか。
それだけを考えていた。
「良いか? 今のお前の利点はソムリエとしての年収にある。もしも稼げなくなって再就職もできないようなら離婚する」
「……」
脳内では、『このクソ旦那がぁぁ!』と思ってしまうほど頭にきている。
それでも、『早く昔の優しいザーガルトに戻ってほしい』と願っている。
怒りをぐっと堪えて、私は一人で買物に出かけて、夕飯の材料を再び買って準備を始めた。
遅くなってしまったが、夕飯の準備ができたのだが、ザーガルトは既に寝てしまっている。
仕方がないので、私は一人で寂しく食事した。
寝るのもいつの日か別々の部屋なので接点すらないのだ。
♢
「冴えない顔だな……何かあったのか?」
「うん、色々と悩んでいるの……」
今日は仕事が休みなので、行きつけのカフェに来て溜まったストレスを絶賛解放中だ。
ここのマスターは私の二個上で、ザーガルトの同級生でもある。
ちなみに、マスターには恩があって、私をソムリエの道へ導いてくれた張本人だ。
「またザーガルトのことか? 失礼だがよくイヤにならないよな……。あんな男のどこに惚れたんだ?」
「うん、まぁ私にとっては命の恩人だからね……」
「誰にも話さないんだもんな。余程大事な思い出なんだろうな」
そのとおりで、あの事件のことは誰にも話していない。
喋ればザーガルトの株が爆上りだろう。
それでもこれだけは私だけの秘密。
イヤな出来事ではあったものの、これだけは私だけの大事な思い出なのだ。
幸い、おしゃべりなザーガルトもこのことだけは誰にも喋っていないらしい。
私たちのことをほとんど知っているマスターですら、何かの事件で出会ったとしか知らない。
マスターと喋っていると、ドアがガランガランと音が鳴ってお客さんが入ってきた。
ふと見てみると、私は完全に固まってしまった。
別に石化の魔法をかけられたとかそういうのではない。魔道具はあるが、魔法は存在しないし。
「マスター! いつものちょーだい」
「あいよ。ベルジャミちゃん相変わらず可愛いね」
「おだてても飲むのは二杯だからね!」
マスターと知り合いだったのか……。
私達が鉢合わせなかったのは偶然だったのだろう。
この顔は忘れるはずもない。
何故なら、昨日ザーガルトと一緒にくっついていた浮気相手なのだから!
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