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1 プロローグと回想
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「……あの女、誰……!?」
私ジュリアーナと旦那であるザーガルトは久しぶりに二人で買物へ出かけた帰り道のこと。
旦那が一人で別行動をしたときに訳があったので跡を追った。そのときの疑惑は浮気疑惑などではない。
だが、今見たものは、さらなるトラブルの火種になりそうな光景だったのだ。
知らぬ女とザーガルトが腕を組んで楽しそうにしていた。
私は咄嗟に見つからないように隠れたが……。
こうなったのには色々とややこしい事情があったので、順を追って説明していこう。
♦︎
買物に行く数日前のこと。
「ザーガルト、今日も寝るのは別々なの? たまには一緒に寝たいんだけど……」
「あ? 休憩という言葉を知らんのか? 一人で寝た方が疲れは取れるだろ? 睡眠は効率よくとった方がいいと思う」
「そう……」
ザーガルトは、最近私のことを避けている。私に対しての愛情が全く感じられなくなってしまったのだ。
冷められているのはなんとなくわかっている。
好きになった方が負けとは良く聞くが、まさに私がそうなっている。
「お前……、まさか俺がヒモだからって元気だと思っているんじゃないだろうな? 俺だって仕事探しで外に毎日出ているだろ。だからお疲れなんだぞ」
本当に仕事探しなのかどうかはわからないが、ザーガルトは毎日外出している。
「仕事は見つかったの?」
「いや。なかなか俺が楽しくできそうなものが見つからなくてなぁ。そもそも、ジュリアーナの給料だけで十分食っていけるし、偉そうな貴族にも負けないくらい裕福だろ? 別に働かなくてもいいんじゃね?」
「あまり頼らないでほしいの……。それに、私の仕事って味覚と嗅覚が鈍ったら継続できなくなってしまうソムリエだから、今のうちにお金は貯めておきたいのよね」
もともと料理が好きで、昔から色々な調味料を味見したりしてきた結果、味覚だけは鋭くなってこの道に進んだ。
ありがたいことに、今では王宮での調理師達にアドバイスをさせていただいているので、王族様とも面識があるし、稼ぎもかなり良くなった。
だが、私はまだ二三歳。もし今後体力の衰えとともに味覚が鈍ってしまうようなことがあれば、仕事はできなくなるだろう。
「ダメになったら新しい仕事を探してくれ。俺はこの家で何かできそうな仕事探すから」
ダメになってしまった旦那が仕事を探すとは思えないが、ついつい甘やかしてしまう。
仕事はしないし、最近は私のことを愛してもくれない。
それでもザーガルトのことを愛しているのには理由があるのだ。
私が二十歳のとき、王宮からの帰り道に一人で歩いていたときのこと。
二人組の男に襲われそうになった。私の力は弱いので、抵抗しても無駄でそのまま裏路地に連れていかれてしまったのだ。
服を剥ぎ取られそうになったところを、ザーガルトが体を張って助けてくれたのだ。
尚、二人組は逃げたが、後に別の事件で捕まって即処刑されている。
今でもあのときの話は、私の中では彼がヒーローなのだ。
だからこそ、多少のことには目を瞑りたい。今、元気なのはザーガルトのおかげなのだから。
♢
そして今日、久しぶりに二人で買い物に出掛けた。
私からの半ば強引だったが、ザーガルトと手を繋ぐ。それだけで満足で嬉しかった。
しかし、ここで第一の事件が起きたのだ。
私ジュリアーナと旦那であるザーガルトは久しぶりに二人で買物へ出かけた帰り道のこと。
旦那が一人で別行動をしたときに訳があったので跡を追った。そのときの疑惑は浮気疑惑などではない。
だが、今見たものは、さらなるトラブルの火種になりそうな光景だったのだ。
知らぬ女とザーガルトが腕を組んで楽しそうにしていた。
私は咄嗟に見つからないように隠れたが……。
こうなったのには色々とややこしい事情があったので、順を追って説明していこう。
♦︎
買物に行く数日前のこと。
「ザーガルト、今日も寝るのは別々なの? たまには一緒に寝たいんだけど……」
「あ? 休憩という言葉を知らんのか? 一人で寝た方が疲れは取れるだろ? 睡眠は効率よくとった方がいいと思う」
「そう……」
ザーガルトは、最近私のことを避けている。私に対しての愛情が全く感じられなくなってしまったのだ。
冷められているのはなんとなくわかっている。
好きになった方が負けとは良く聞くが、まさに私がそうなっている。
「お前……、まさか俺がヒモだからって元気だと思っているんじゃないだろうな? 俺だって仕事探しで外に毎日出ているだろ。だからお疲れなんだぞ」
本当に仕事探しなのかどうかはわからないが、ザーガルトは毎日外出している。
「仕事は見つかったの?」
「いや。なかなか俺が楽しくできそうなものが見つからなくてなぁ。そもそも、ジュリアーナの給料だけで十分食っていけるし、偉そうな貴族にも負けないくらい裕福だろ? 別に働かなくてもいいんじゃね?」
「あまり頼らないでほしいの……。それに、私の仕事って味覚と嗅覚が鈍ったら継続できなくなってしまうソムリエだから、今のうちにお金は貯めておきたいのよね」
もともと料理が好きで、昔から色々な調味料を味見したりしてきた結果、味覚だけは鋭くなってこの道に進んだ。
ありがたいことに、今では王宮での調理師達にアドバイスをさせていただいているので、王族様とも面識があるし、稼ぎもかなり良くなった。
だが、私はまだ二三歳。もし今後体力の衰えとともに味覚が鈍ってしまうようなことがあれば、仕事はできなくなるだろう。
「ダメになったら新しい仕事を探してくれ。俺はこの家で何かできそうな仕事探すから」
ダメになってしまった旦那が仕事を探すとは思えないが、ついつい甘やかしてしまう。
仕事はしないし、最近は私のことを愛してもくれない。
それでもザーガルトのことを愛しているのには理由があるのだ。
私が二十歳のとき、王宮からの帰り道に一人で歩いていたときのこと。
二人組の男に襲われそうになった。私の力は弱いので、抵抗しても無駄でそのまま裏路地に連れていかれてしまったのだ。
服を剥ぎ取られそうになったところを、ザーガルトが体を張って助けてくれたのだ。
尚、二人組は逃げたが、後に別の事件で捕まって即処刑されている。
今でもあのときの話は、私の中では彼がヒーローなのだ。
だからこそ、多少のことには目を瞑りたい。今、元気なのはザーガルトのおかげなのだから。
♢
そして今日、久しぶりに二人で買い物に出掛けた。
私からの半ば強引だったが、ザーガルトと手を繋ぐ。それだけで満足で嬉しかった。
しかし、ここで第一の事件が起きたのだ。
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