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21 王族の迫真な演技

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 私の聞き間違いだろうか。
 陛下は「アイリスとの結婚式の計画」と仰っていたような気がした。
 聞き間違いでなければ、私とジュエル殿下で結婚式をあげようと言っているのか!?

 先ほどのやりとりは全て演技なはず。
 それとも、まだ何かしらの理由で演技を継続しなければいけないとか?
 それならまだ納得はできる。

 犯人探しのためにジュエル殿下が私に求婚を申し出ているという演技は、王宮全体を巻き込んで行っていたというわけか。
 どうせなら本当にそうであってくれたら嬉しいが、さすがにこのままでは民間人になりそうな私が王子相手では手の届く相手ではないからな……。
 せめて演技だけでも満喫させてもらうことにしようか。

「ジュエル殿下の愛があるだけで、私は盛大な式など望みませんよ。一緒いていただけるだけで幸せです~」
「ほえ!?」

 ジュエル殿下が今まで発したことのないような声をあげて驚いていた。
 あんな臭いセリフを言った私自身も恥ずかしくなってしまい、顔が真っ赤になってしまった。
 だが、演技でなくとも本心ではある。
 嘘ではないのだが演技という複雑なセリフだったな。

「アイリスよ、今言ったことは本心か?」

 陛下が私に信じられないような表情をしながら聞いてきた。
 演技だし、私もだんだんノってきた。
 だが、せめて自己満足のために、本音で喋ってしまおうか。

「はい。ジュエル殿下のようなお方の側に付き添えるだけで幸せです。一緒にいられること以外何も望みません」
「なんと! これほどまでに欲もない者は初めて出会った……」

 陛下は大変驚いているようだが、続けて横にいるホルスタ殿下までもが私のことを心配しているような顔をしていた。

「アイリス殿よ、本来ならば王族と婚約が決まった女性は大概何かを望む、たとえ己の私利私欲であってもだ。大概のものは望み通り手に入るからな。このような機会は貴族ですら滅多にないのだぞ。それでも望まぬというのか……?」

「はい。元々私の家は貧乏一家でしたし、何かを買ってもらったりする習慣もありませんでしたからね」

 仮に本当に何か欲しいものはと言われても返答に困る。
 強いて言えば美味しいお菓子が食べたいとか、民間人でも容易に手に入るような望み程度だ。
 だが、さすがにそんなことを王族相手に望んでしまうのは失礼かと思って言わないでいるだけである。

「ふむ……どうやら偽りでもなく純粋に無欲なようだ。アイリスよ、それでも結婚式は行わさせてもらいたい。息子の幸せへの、そして国の発展のためにもだ」
「は……はぁ。私は構いませんが……」

 そのあとに演技ですよね? と一言聞きたかったが、今はやめておく。
 演技にしては物凄くみんな上手いなぁと思ってしまうが、王族は演技も上手なのかもしれないし。
 そんな方々に演技なのかと聞くようなことをしてしまえば、それこそ怒られる。
 せっかくここまで怒られずに済んでいるのだから、平和にいきたい。

「では決まりだ。日程は後日発表とする。それまではアイリス殿も王宮でゆっくり寛ぎたまえ」
「へ……あ、はい。ありがとうございます」

 えっと……、私はいつまでジュエル殿下との交際演技を続ければいいの!?
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