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2 婚約解消を報告したら喜ばれた
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クリヴァイム家に戻り、義父様にゴルギーネ様から婚約解消されたこと、ゴルギーネ様は義妹のフリンデルと婚約をしたいという二点だけを伝えた。
すると、義父様は大喜びをした表情をしながら満面の笑みを私に見せつけてくる。
「ほう、ゴルギーネ君がフリンデルのことを……? むしろ願ったり叶ったりだ! フリンデルは自由にさせてやりたいと思っていたからお前に婚約を任せたつもりだったが、もしもフリンデルが縁談を望むのであれば完璧だ」
婚約解消された私のことなど、何も考えていないらしい。
それよりも、義妹のフリンデルがゴルギーネと婚約できるかもしれないことについて喜んでいるようだ。
「つまり、お前のような者でも役にたったというわけか。思い返してみれば憎き親戚のローゼン家が火事になり、何故か焼け跡の屋敷から奇跡的に生き残ったお前を仕方なく我がクリヴァイム家で引き取った……。国の命令だからしかたなかったが、そのおかげで我が家の株は少しは上がったが、ついに娘の幸せまでも運んでくれたようだな」
「そうですか……。私も引き取られて住まわせていただいていることに関しては感謝しています」
「感謝してもらうのは当然だろう。だがここまで役に立った今、お前はもう必要ない。確か去年十六歳になっただろう?」
「そうですが……」
「法律的に自立可能な歳になったというわけか。ならば早急に家から出ていくがよい。ゴルギーネ君とフリンデルが結ばれれば、お前がいる価値などどこにもない」
概ね予想はしていたが、まさか婚約解消当日に宣告されるとは想定以上だ。
私は義父様の命令で毎日休む日もなく、家事やその他内職まで強制労働させられていた。
ついにその呪縛からも解放されると思えばむしろ好都合かもしれない。
「むろん、今までどおり毎日我が家に来て家事と内職はやってもらうが」
「え!?」
義父様はあたりまえのような表情をしながら、大きくため息まで吐く。
まるで、私が驚いたことに対して馬鹿にしているようだった。
「おいおい、当たり前のことだろう……。今まで我が家に置いてやった宿泊費を精算するためには、お前が一生かけてこの家で働いてもらわないと採算が合わない。出て行けというのは、ここで寝泊りはさせぬと言っているだけにすぎない」
「それでは私の人生は……」
義父様が怒れば手をあげてくる。
だが、私はこれ以上従いたくなかったため、勇気を出して反論した。
「そもそもゴルギーネ君に捨てられる時点で人生が終わったようなものだろう。今更幸せがあるとでも? 我が家で死ぬまで働けるだけありがたく思いたまえ。どちらにせよ、ゴルギーネ君の元に嫁いだところでお前はこの家で毎日働く義務はあったが。それを承知の上で彼は婚約を引き受けていたのだよ?」
主従関係を考えれば、私は理不尽な命令に逆らうことができない。
だが、このまま家からも追い出された上、今までどおり強制労働させられると思うと、逃げ出したい気持ちの方が勝る。
私が絶望状態になっている表情を見て、義父様は私の顔を見て嘲笑っていた。
一体なんの恨みがあってここまで私を奴隷のように扱うのだろう……。
揉めている最中、義妹のフリンデルが家に帰ってきたようで、玄関のドア越しから大声が家中に響き渡った。
「お父様!! 重大な報告があります!! ついさっき、アイリス義姉様の元婚約相手から縁談を申し込まれましたわ!」
私が家の中にいることを知っていてわざと大声で言っているようにしか聞こえない。
私の気持ちなどお構いなしに、義父様は大声でフリンデルへ向けて返事をした。
「さすがフリンデルだ! つまりは婚約を望むのだな。おめでとう! 幸せになるのだよ」
「はいっ!! あ、肝心の捨てられたアイリス義姉様はどちらー?」
「一緒にいる。入ってきなさい」
「はーい!」
この程度の茶飯事は慣れっこだ。
だが、さすがに婚約解消をネタにここまで言いたい放題されると私の心にも傷がつく。
フリンデルが満面の笑みで私たちがいる部屋に入ってきた。
すると、義父様は大喜びをした表情をしながら満面の笑みを私に見せつけてくる。
「ほう、ゴルギーネ君がフリンデルのことを……? むしろ願ったり叶ったりだ! フリンデルは自由にさせてやりたいと思っていたからお前に婚約を任せたつもりだったが、もしもフリンデルが縁談を望むのであれば完璧だ」
婚約解消された私のことなど、何も考えていないらしい。
それよりも、義妹のフリンデルがゴルギーネと婚約できるかもしれないことについて喜んでいるようだ。
「つまり、お前のような者でも役にたったというわけか。思い返してみれば憎き親戚のローゼン家が火事になり、何故か焼け跡の屋敷から奇跡的に生き残ったお前を仕方なく我がクリヴァイム家で引き取った……。国の命令だからしかたなかったが、そのおかげで我が家の株は少しは上がったが、ついに娘の幸せまでも運んでくれたようだな」
「そうですか……。私も引き取られて住まわせていただいていることに関しては感謝しています」
「感謝してもらうのは当然だろう。だがここまで役に立った今、お前はもう必要ない。確か去年十六歳になっただろう?」
「そうですが……」
「法律的に自立可能な歳になったというわけか。ならば早急に家から出ていくがよい。ゴルギーネ君とフリンデルが結ばれれば、お前がいる価値などどこにもない」
概ね予想はしていたが、まさか婚約解消当日に宣告されるとは想定以上だ。
私は義父様の命令で毎日休む日もなく、家事やその他内職まで強制労働させられていた。
ついにその呪縛からも解放されると思えばむしろ好都合かもしれない。
「むろん、今までどおり毎日我が家に来て家事と内職はやってもらうが」
「え!?」
義父様はあたりまえのような表情をしながら、大きくため息まで吐く。
まるで、私が驚いたことに対して馬鹿にしているようだった。
「おいおい、当たり前のことだろう……。今まで我が家に置いてやった宿泊費を精算するためには、お前が一生かけてこの家で働いてもらわないと採算が合わない。出て行けというのは、ここで寝泊りはさせぬと言っているだけにすぎない」
「それでは私の人生は……」
義父様が怒れば手をあげてくる。
だが、私はこれ以上従いたくなかったため、勇気を出して反論した。
「そもそもゴルギーネ君に捨てられる時点で人生が終わったようなものだろう。今更幸せがあるとでも? 我が家で死ぬまで働けるだけありがたく思いたまえ。どちらにせよ、ゴルギーネ君の元に嫁いだところでお前はこの家で毎日働く義務はあったが。それを承知の上で彼は婚約を引き受けていたのだよ?」
主従関係を考えれば、私は理不尽な命令に逆らうことができない。
だが、このまま家からも追い出された上、今までどおり強制労働させられると思うと、逃げ出したい気持ちの方が勝る。
私が絶望状態になっている表情を見て、義父様は私の顔を見て嘲笑っていた。
一体なんの恨みがあってここまで私を奴隷のように扱うのだろう……。
揉めている最中、義妹のフリンデルが家に帰ってきたようで、玄関のドア越しから大声が家中に響き渡った。
「お父様!! 重大な報告があります!! ついさっき、アイリス義姉様の元婚約相手から縁談を申し込まれましたわ!」
私が家の中にいることを知っていてわざと大声で言っているようにしか聞こえない。
私の気持ちなどお構いなしに、義父様は大声でフリンデルへ向けて返事をした。
「さすがフリンデルだ! つまりは婚約を望むのだな。おめでとう! 幸せになるのだよ」
「はいっ!! あ、肝心の捨てられたアイリス義姉様はどちらー?」
「一緒にいる。入ってきなさい」
「はーい!」
この程度の茶飯事は慣れっこだ。
だが、さすがに婚約解消をネタにここまで言いたい放題されると私の心にも傷がつく。
フリンデルが満面の笑みで私たちがいる部屋に入ってきた。
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