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 ──ジュリ……?

 義兄様が私のことを呼び目を覚ました。
「お……義兄様!!」

 直ぐに医師を呼び出して容態を確認してもらう。

「奇跡ですな」
 なんと、回復に向かっていると告げられた。


「ジュリが何度も俺のことを呼んでくれていた気がしたんだ……」
「義兄様……」

 私はしばらくの間、義兄様の手を握ってそのままそばにいた。
「目が覚めて良かったです……」
「ジュリのおかげだと思う。ずっと俺のそばにいてくれた気がした。だから、俺も必死になれたんだと思う」

 ほぼ不眠不休でご飯も食べずにずっと手を握っていたことは間違いない。
 理由はなんであれ、こうして目を覚ましてくれたことが何よりも嬉しかった。

 ♢

「すまないが、もう一度言ってくれるか?」

 お父様は目をつぶり呆れたような口調で私に再度確認をするのだった。

「ですから、慰謝料はザーガルさんと住んでいた家のお取り潰し分と、貸していた分を返済いただければ結構です」
「正気か!? 本来ならば不倫関係の慰謝料は民衆同士であっても一萬紙幣二十万枚は降らないのだぞ? とても払える額ではないから通常は鉱山送りとなって生涯奴隷として人生を終えるのが一般的なんだぞ」
「でしたら私だって鉱山送りですよ?」

 正式に離婚をする前に義兄様のことしか考えず、心の中では完全に愛してしまっている気持ちがあった。

「身体の関係もないだろう? 違法性はないのだぞ」
「示談してくれたお父様達には申し訳ないですが、これは私の気持ちの問題ですから」

 もちろん行為もしていなければ何もしていない。私としては、慰謝料の相殺が発生しなければ、私が義兄様に対する気持ちを否定してしまうことと同じだと思ってしまう。

「ならば何もいうことはない」
「ごめんなさい」
「いや、ジュリアならばそういう判断をするかもしれないと薄々感づいていたがな」

 私は書類を一部訂正した上でサインをした。
 これを国に提出してもらい、ようやく正式に離婚が成立した。

 ザーガルさんも、人生をやり直して新たな愛を築けば良いと思っている。
 まぁ、今回の事件は国中に広まってしまい、ザーガルさんの立場もとんでもない状況になっていることを知っての上なのだが。
 国中探しても、ザーガルさんの行為や行動を知った上で好きになるという人は、ザーガルが幼馴染として仲良くしてたベルベットくらいだろうから。
 ある意味、鉱山送りよりも残酷なのかもしれない、とは言わなかった。
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