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とんでもない行為を行ったベルベットはすぐに使用人達に取り押さえられ、そのまま警備兵に突き出された。
しかし、代償があまりにも大きい。
「義兄様……なんで私を庇って……」
私は義兄様に助けられた。
刃物が私の心臓を突き刺す数センチまで迫っていたところで私の身体は、義兄様に突き飛ばされ回避できた。
だが、義兄様の腹部に刃物が刺さってしまったのだ。
「ジュリ……俺はお前のことをずっと愛しているからだ。愛するものを守るのは当然だろう」
「でも、今までそんな素振り……そんなことより、もう喋らないで義兄様! 死んでしまうわ!!」
「かまわんから聞いてくれ。俺は義兄妹として一緒になった時からずっとお前を異性としてしか見ていなかった。だが、こんな義兄よりも良い相手が見つかると思って見守ることを選択した。その結果がこれだ。俺が最初からジュリを守れていれば……これは俺に対する罰だから気にするな」
「そんな……も……もうすぐ専属の医師が来るはずですから大人しくして──」
腕を上げることすら困難なはずなのに、義兄様は私の頬を優しく撫で、流れる涙を拭き取ってくれた。
ことの状況を理解できていないザーガルは混乱しているのだろうか。空気も読まずにとんでもないことを言い出したようだ。
「アルト義兄様、あなたのおかげで愛とは何か今理解しました。これからは気持ちが生まれ変われた俺が、アルト義兄様の分も身を持ってジュリアを守ります。ですから安心してください──」
もはや私の耳には雑音が全く入ってこない。
後ろの方でザーガルのお父様にザーガルが思いっきり殴られている瞬間だけ気がつくことができた。
「ジュリ……俺は義兄として一緒にいることができて幸せだった。ジュリ、ありがとう……」
そのまま義兄様は目を閉じてしまった。
♢
事件から数日が過ぎた今も、義兄様は未だに昏睡状態のまま。
流血に加えて、刃物には毒まで盛られていたのだ。
医師からは目を覚ませるかは五割と言われてしまった。
私は、あれからずっと義兄様が目を開いてくれることを願って一緒にいる。
離婚の話ははっきりと覚えていない。護衛や使用人達が任務を遂行できなかったと謝罪の上、辞表を願ってきたそうだが、それすらも記憶に残っていないのだ。
お父様とザーガルの両親が立ち合いの元、私に変わり話を進めてくれた。
離婚が正式に受理されていない状態でこのようなことをしていたら、私も不倫同然なのかもしれない。
だって、今の私にはザーガルのことは脳裏に全く入っていないし、義兄様のことばかり考えているのだから。
義兄様のことは今まで異性としては見てこなかった。
だからこそ本当の兄弟のように仲良く幼少期から過ごせた。
それを今になって……、しかも極限の状態であんな告白をされてしまうなんて、どうして私はもっと早く気がつくことが出来なかったのだろうか。
ため息しか出ずに落ち込んでしまう毎日。一方、義兄様は昏睡しながらもどこか笑顔に見えてしまうのは気のせいだろうか。
「ジュリアよ……話があるのだが良いか?」
「えぇお父様……ここで良ければ」
義兄様のそばから離れたくはなかった。
「分かった。こんな時に言いづらいのだが……ザーガル氏との離婚は正式に成立し受理される。慰謝料は一萬紙幣三十万枚に加え、借用した金も同時に支払ってもらうことになる。更に今後ポルカ家への援助も支援も一切しない。尚、エイプリル家にもジュリアにも今後一切近づかないことも制約した」
「そう……」
こんな状況でも直ぐに想像はできた。額からして、あの家も両親の所有するポルカ家もお取り潰しになるだろう。
彼らの所有する資産全額で成立させたということか。
「あとはジュリアがサインすれば全ては終わる」
「そうね……」
サインか……こんなものを書くだけで離婚は済むだけだったはずなのに、どうしてアルト義兄様がこんな目に合わなければいけないのかわからない。
「それから……ベルベット氏の件だが」
「いや!!」
あの女の名前が出てくるだけでひどい恐怖と悲しみが出てしまう程、私は心を痛めていた。
「鉱山送りになる。残念ながら奴の財産が全くない上、完全に独り身だから慰謝料などは請求できないのだ……すまない」
「慰謝料なんていらないから義兄様の目を覚まさせて欲しい……」
私はそう言って泣き崩れてしまう。
もう慰謝料なんてどうでも良い。
私の願いは、命を張って守ってくれた義兄様が目を開けること。
サインはもう少ししたらしっかり書類に目を通してから書くとだけ言った。お父様は頷いてそのまま部屋を出て行った。
「義兄様……」
私は義兄様の手を両手で握って、何度も何度も願った。
しかし、代償があまりにも大きい。
「義兄様……なんで私を庇って……」
私は義兄様に助けられた。
刃物が私の心臓を突き刺す数センチまで迫っていたところで私の身体は、義兄様に突き飛ばされ回避できた。
だが、義兄様の腹部に刃物が刺さってしまったのだ。
「ジュリ……俺はお前のことをずっと愛しているからだ。愛するものを守るのは当然だろう」
「でも、今までそんな素振り……そんなことより、もう喋らないで義兄様! 死んでしまうわ!!」
「かまわんから聞いてくれ。俺は義兄妹として一緒になった時からずっとお前を異性としてしか見ていなかった。だが、こんな義兄よりも良い相手が見つかると思って見守ることを選択した。その結果がこれだ。俺が最初からジュリを守れていれば……これは俺に対する罰だから気にするな」
「そんな……も……もうすぐ専属の医師が来るはずですから大人しくして──」
腕を上げることすら困難なはずなのに、義兄様は私の頬を優しく撫で、流れる涙を拭き取ってくれた。
ことの状況を理解できていないザーガルは混乱しているのだろうか。空気も読まずにとんでもないことを言い出したようだ。
「アルト義兄様、あなたのおかげで愛とは何か今理解しました。これからは気持ちが生まれ変われた俺が、アルト義兄様の分も身を持ってジュリアを守ります。ですから安心してください──」
もはや私の耳には雑音が全く入ってこない。
後ろの方でザーガルのお父様にザーガルが思いっきり殴られている瞬間だけ気がつくことができた。
「ジュリ……俺は義兄として一緒にいることができて幸せだった。ジュリ、ありがとう……」
そのまま義兄様は目を閉じてしまった。
♢
事件から数日が過ぎた今も、義兄様は未だに昏睡状態のまま。
流血に加えて、刃物には毒まで盛られていたのだ。
医師からは目を覚ませるかは五割と言われてしまった。
私は、あれからずっと義兄様が目を開いてくれることを願って一緒にいる。
離婚の話ははっきりと覚えていない。護衛や使用人達が任務を遂行できなかったと謝罪の上、辞表を願ってきたそうだが、それすらも記憶に残っていないのだ。
お父様とザーガルの両親が立ち合いの元、私に変わり話を進めてくれた。
離婚が正式に受理されていない状態でこのようなことをしていたら、私も不倫同然なのかもしれない。
だって、今の私にはザーガルのことは脳裏に全く入っていないし、義兄様のことばかり考えているのだから。
義兄様のことは今まで異性としては見てこなかった。
だからこそ本当の兄弟のように仲良く幼少期から過ごせた。
それを今になって……、しかも極限の状態であんな告白をされてしまうなんて、どうして私はもっと早く気がつくことが出来なかったのだろうか。
ため息しか出ずに落ち込んでしまう毎日。一方、義兄様は昏睡しながらもどこか笑顔に見えてしまうのは気のせいだろうか。
「ジュリアよ……話があるのだが良いか?」
「えぇお父様……ここで良ければ」
義兄様のそばから離れたくはなかった。
「分かった。こんな時に言いづらいのだが……ザーガル氏との離婚は正式に成立し受理される。慰謝料は一萬紙幣三十万枚に加え、借用した金も同時に支払ってもらうことになる。更に今後ポルカ家への援助も支援も一切しない。尚、エイプリル家にもジュリアにも今後一切近づかないことも制約した」
「そう……」
こんな状況でも直ぐに想像はできた。額からして、あの家も両親の所有するポルカ家もお取り潰しになるだろう。
彼らの所有する資産全額で成立させたということか。
「あとはジュリアがサインすれば全ては終わる」
「そうね……」
サインか……こんなものを書くだけで離婚は済むだけだったはずなのに、どうしてアルト義兄様がこんな目に合わなければいけないのかわからない。
「それから……ベルベット氏の件だが」
「いや!!」
あの女の名前が出てくるだけでひどい恐怖と悲しみが出てしまう程、私は心を痛めていた。
「鉱山送りになる。残念ながら奴の財産が全くない上、完全に独り身だから慰謝料などは請求できないのだ……すまない」
「慰謝料なんていらないから義兄様の目を覚まさせて欲しい……」
私はそう言って泣き崩れてしまう。
もう慰謝料なんてどうでも良い。
私の願いは、命を張って守ってくれた義兄様が目を開けること。
サインはもう少ししたらしっかり書類に目を通してから書くとだけ言った。お父様は頷いてそのまま部屋を出て行った。
「義兄様……」
私は義兄様の手を両手で握って、何度も何度も願った。
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