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 私はしばらくエイプリル家で滞在することになった。

 仕事で使う書類や道具、更に私が所有するお金も、内部調査の諜報員が家に潜入して持ってきてくれた。
 よくもまぁこれだけの量を持ってきてくれたと感心してしまう。

「お嬢様、報告になりますが……」

 黙って聞いていたが、私は爺やの言葉を疑ってしまう。

「あの、聞き間違えかもしれないわ……もう一度言ってくれる?」
「かしこまりました。調査の報告によりますと、『たとえベルベットと肉体関係を保とうともジュリアは許してくれる。むしろ今までなかった肉体関係を結べるきっかけを作ってくれたベルベットに感謝するだろう』との会話があったそうです」

「怒りを通り越して笑えるわね」
「ごもっともです。私も報告書の誤字ではないかと疑いましたから」

 離婚の理由としては十分すぎる行為を行なっている以上、すぐにでも離婚調停を行いたいのだけれど、お父様達にはこのままでは離婚の後にベルベットとザーガルが結ばれてしまうから待つように言われてしまった。
 私としてはその後二人がどうなろうと知ったことじゃないが。
 それに、たとえザーガルでも、ベルベットの仕事っぷりを見たらどうなることやら。

「それから諜報員からの質問がありました。ザーガル氏は賭博行為に興味があることをお嬢様はご存知でしょうかと」
「は!? 知らないわ! いつから!?」
「それは報告書にはまだ書かれていませんが、毎日賭博場へ足を運んでいるようで、ベルベット氏も連れ出しているそうです」

 私はお父様みたいに優秀な探偵ではない。それでも今までの謎が一本の線で結ばれた。

「私ってば……気がつかなかったなんて……」
「いえ、お嬢様が旦那を大事に思う気持ちで、今までは疑うことをしなかったのでしょうから……」

 爺やは察したようで、フォローをしてくれる。
 だが、冷静に考えれば疑うこともできたはずだ。

 昼間毎日のように出歩くことも、仕事のためだと思っていた。
 その結果、見せてきた一萬紙幣の束も仕事で稼いだお金だと思い込んだ。

 私たち投資家だって、たまに失敗することもある。
 だから稼いだお金がある程度なくなってしまったことも仕方がないと思い、提示してきた金額を貸すことにした。

 まさか仕事が賭博行為で、貸したお金も賭博行為に使うとは考えもしなかった。
 もちろんそれでしっかりと稼いでいるのなら私だって文句は言わない。けれど貸してしまった以上、失敗するのなら容赦はしない。

 そもそもザーガルは賭博行為をする人間ではなかったと思う。

 ここからは完全な推測だが、ベルベットさんとザーガルが結婚後に会うようになった日と、ザーガルが急に毎日のように外へ行くようになった日が一致する。
 ベルベットさんがザーガルに賭博行為を教え、ザーガルはどっぷりとハマったのではないだろうか。

 更に調査を行った結果、見事に予想通りだった。

 ついに私は行動することになる。
 とは言っても、書類に手書きで文章を書くだけなのだが。

 この書いた書面をお父様に確認してもらい、そのまま王宮に送られるのだった。
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