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「ジュリア、住込で使用人を雇おうと思っているのだが」
新婚生活が始まって数ヶ月。
これが私、ジュリア=エイプリルと、旦那のザーガル=ポルカとの関係が壊れ、私の人生が大きく変わっていく行動の始まりだった。
「必要ないかと思います。それに、私の家事では不満でしょうか?」
「そんなことはない。ただ周りの目が気になっている」
「と……言いますと?」
「流石に資産家の御曹司である俺の家に、使用人がいないというのが気になるのだよ……」
資産家と言っても、私のお父様から融資を得ているだけで、一般民衆の稼ぎと大差ない。御曹司という言葉を使って良いものなのだろうかと疑問である。
それにこういう台詞は、ザーガル自身でお金を稼ぐようになってから言ってほしいものだ。
この家だってザーガルの義父様の物件だ。全く住み手が見つからないから利益に貢献できるように住んでいる。
尚、賃貸だけでなく生活費の支払いは全部私。
婚約後、ザーガルは全く仕事をしなくなり、不安を抱えたまま結婚してしまった。
そして今もなお、グータラでダラダラな生活をしていて、私の稼ぎをあてにしているのだ。
最近ようやく外に出るようにはなっているが、何をしているのか私は知らない。
「愛するジュリアの身体も心配なんだ。いつか倒れてしまったらと思うと……」
「それはありがとうございます。ですが、家事は好きでやっていることですし無理もしていません。ザーガルも働くようになってから使用人を雇いましょう」
少々意地悪なことを言ってしまった。でも、このまま雇えば間違いなく私の稼いでいるお金で使用人の報酬を支払うことになる。お金を払ってまで家事をしてもらいたいとは思えないのだ。
「そのことだが、俺も稼ぎ始めた。最近昼間は外に行っているだろ? ほら、これが報酬だ」
そう言って一萬貨幣を五百枚程、懐から出してきた。
「いつの間に!?」
「すごいだろ?」
一般市民ならば一年から二年は働かなければ稼げないような額だ。
何をして稼いだのかは知らない。でも、ザーガルが一生懸命稼いだお金を使って使用人を雇い、私を楽させたいという気持ちがあると思うと、嬉しかった。
「……失礼しました。お気遣い感謝します」
私のお父様からも、使用人を雇ってゆっくり暮らせば良いと言われたことはあった。
掃除、洗濯、料理、整理まで全て私が担当しているのだが、家事はやりたいからと、自ら進んでやっていた。
でも、今回のザーガルの優しさに気持ちが少しだけ変わったのだ。
「わかりました。使用人を雇って私は仕事に専念します」
「よかった」
両親からの縁談によってザーガルと知り合う。おまけにスピード婚だったのもあり、ザーガルのことはよく知らないまま婚約を承認したのが間違いだとずっと思っていた。
今までザーガルの発言や行動によって、ザーガルへの愛も消え、完全に冷めていた。
だが、今回の提案でザーガルが旦那で良かったと初めて思えたのだ。
これからは愛していけるかもしれない。
新婚生活が始まって数ヶ月。
これが私、ジュリア=エイプリルと、旦那のザーガル=ポルカとの関係が壊れ、私の人生が大きく変わっていく行動の始まりだった。
「必要ないかと思います。それに、私の家事では不満でしょうか?」
「そんなことはない。ただ周りの目が気になっている」
「と……言いますと?」
「流石に資産家の御曹司である俺の家に、使用人がいないというのが気になるのだよ……」
資産家と言っても、私のお父様から融資を得ているだけで、一般民衆の稼ぎと大差ない。御曹司という言葉を使って良いものなのだろうかと疑問である。
それにこういう台詞は、ザーガル自身でお金を稼ぐようになってから言ってほしいものだ。
この家だってザーガルの義父様の物件だ。全く住み手が見つからないから利益に貢献できるように住んでいる。
尚、賃貸だけでなく生活費の支払いは全部私。
婚約後、ザーガルは全く仕事をしなくなり、不安を抱えたまま結婚してしまった。
そして今もなお、グータラでダラダラな生活をしていて、私の稼ぎをあてにしているのだ。
最近ようやく外に出るようにはなっているが、何をしているのか私は知らない。
「愛するジュリアの身体も心配なんだ。いつか倒れてしまったらと思うと……」
「それはありがとうございます。ですが、家事は好きでやっていることですし無理もしていません。ザーガルも働くようになってから使用人を雇いましょう」
少々意地悪なことを言ってしまった。でも、このまま雇えば間違いなく私の稼いでいるお金で使用人の報酬を支払うことになる。お金を払ってまで家事をしてもらいたいとは思えないのだ。
「そのことだが、俺も稼ぎ始めた。最近昼間は外に行っているだろ? ほら、これが報酬だ」
そう言って一萬貨幣を五百枚程、懐から出してきた。
「いつの間に!?」
「すごいだろ?」
一般市民ならば一年から二年は働かなければ稼げないような額だ。
何をして稼いだのかは知らない。でも、ザーガルが一生懸命稼いだお金を使って使用人を雇い、私を楽させたいという気持ちがあると思うと、嬉しかった。
「……失礼しました。お気遣い感謝します」
私のお父様からも、使用人を雇ってゆっくり暮らせば良いと言われたことはあった。
掃除、洗濯、料理、整理まで全て私が担当しているのだが、家事はやりたいからと、自ら進んでやっていた。
でも、今回のザーガルの優しさに気持ちが少しだけ変わったのだ。
「わかりました。使用人を雇って私は仕事に専念します」
「よかった」
両親からの縁談によってザーガルと知り合う。おまけにスピード婚だったのもあり、ザーガルのことはよく知らないまま婚約を承認したのが間違いだとずっと思っていた。
今までザーガルの発言や行動によって、ザーガルへの愛も消え、完全に冷めていた。
だが、今回の提案でザーガルが旦那で良かったと初めて思えたのだ。
これからは愛していけるかもしれない。
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