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第二章
63【ざまぁ】ひとときの休息
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二人で裸になり水浴びをしている最中、イチャつきながら楽しく会話をしていた。
移動中は、お互いの異臭が凄まじく、不用意に近づくことができなかったのである。
「ザグローム様ったら嘘も上手なんですね」
「何がだ? 私は嘘などついていないぞ」
「でも、公爵家の長男であるにもかかわらず、次期国王って言ってましたよね」
「おいおいサフランよ……公爵の子は過去の話だ。オーブルジェ王国を乗っ取った暁には、私が次期国王……つまり本当のことなのだよ」
サフランは、なるほどと納得してコクリと頷いた。
「さすがですわー。私勘違いをしてしまっていましたね」
「あんな警備の奴らもキレガダムとかいう国の連中も、アルガルデ王国やオーブルジェ王国の情報など何一つ知らんだろう。ならば王子だと言っておいた方が良いに決まっている。この国を味方につけてしまえば襲撃も楽ってもんだ」
ザグロームは頭は悪いが、悪知恵だけは冴えていた。
聞いていたサフランも、感動しているくらいである。
「ここからは話は別だ。まずはこの国の王族を味方につける。そのためにはとにかく嘘をつきまくって、とにかく私を偉大な人間であると思い込ませるのだ」
「いえ、ザグローム様は元々偉大な人ですわよ」
「それもそうだな。とにかく協力してくれ」
お互いの話がまとまったところで水浴びを終わらせ、用意されていた臭くない服を着た。
二人ともボロボロになって臭いが充満していた服では無くなったため、満足している。
「ザグローム殿下、それからサフラン様。此度の訪問の件でキレガダム王国のオルコック=キレガダム陛下が対談を希望されております」
「うむ。私も是非陛下とお会いしたいと思った……おるぞ」
ザグロームは慣れない王族口調に苦戦している。
所々で間違えた発言をしていることに、本人は気がついていない。
警備員はそのことには触れず、与えられている任務だけを全うしようとしていた。
「馬車の準備を致しますので、今しばらくこちらでお寛ぎください」
「うむ、では寛がさせてもらおう」
警備員が部屋を出ていくと、ザグロームはホッと一息してすぐにゴロゴロし始めた。
つられてサフランも横になる。
「ぷはーーー、疲れた! 王族の口調なんて独学だから焦ったがなんとかなるもんだな。それにしてもベッドは良いもんだ!」
「もう何年もベッドで横になれていなかった気分ですからね」
国から国へ移動するために毎日歩いていた二人にとっては、水浴びやベッドの有り難みを特に強く感じていた。
復讐の執念による根性だけは誰にも負けなかったから出来た偉業である。
暫く寛いでいると、警備員がドアをノックした後部屋へ入ってくる。
「大変お待たせして申し訳ございません。馬車の準備ができましたので……」
「ほう。ここの国は態度も良ければ行動も早くて良いではないか。褒めてやる」
ザグロームとサフランは馬車へ乗り込み、ゆっくりと動き出した。
しかし、このとき二人は気が付いていなかった。
何故警備の態度が急変して丁寧にもてなしたのか、いきなり王族と対面出来るかもわかっていなかったのである。
移動中は、お互いの異臭が凄まじく、不用意に近づくことができなかったのである。
「ザグローム様ったら嘘も上手なんですね」
「何がだ? 私は嘘などついていないぞ」
「でも、公爵家の長男であるにもかかわらず、次期国王って言ってましたよね」
「おいおいサフランよ……公爵の子は過去の話だ。オーブルジェ王国を乗っ取った暁には、私が次期国王……つまり本当のことなのだよ」
サフランは、なるほどと納得してコクリと頷いた。
「さすがですわー。私勘違いをしてしまっていましたね」
「あんな警備の奴らもキレガダムとかいう国の連中も、アルガルデ王国やオーブルジェ王国の情報など何一つ知らんだろう。ならば王子だと言っておいた方が良いに決まっている。この国を味方につけてしまえば襲撃も楽ってもんだ」
ザグロームは頭は悪いが、悪知恵だけは冴えていた。
聞いていたサフランも、感動しているくらいである。
「ここからは話は別だ。まずはこの国の王族を味方につける。そのためにはとにかく嘘をつきまくって、とにかく私を偉大な人間であると思い込ませるのだ」
「いえ、ザグローム様は元々偉大な人ですわよ」
「それもそうだな。とにかく協力してくれ」
お互いの話がまとまったところで水浴びを終わらせ、用意されていた臭くない服を着た。
二人ともボロボロになって臭いが充満していた服では無くなったため、満足している。
「ザグローム殿下、それからサフラン様。此度の訪問の件でキレガダム王国のオルコック=キレガダム陛下が対談を希望されております」
「うむ。私も是非陛下とお会いしたいと思った……おるぞ」
ザグロームは慣れない王族口調に苦戦している。
所々で間違えた発言をしていることに、本人は気がついていない。
警備員はそのことには触れず、与えられている任務だけを全うしようとしていた。
「馬車の準備を致しますので、今しばらくこちらでお寛ぎください」
「うむ、では寛がさせてもらおう」
警備員が部屋を出ていくと、ザグロームはホッと一息してすぐにゴロゴロし始めた。
つられてサフランも横になる。
「ぷはーーー、疲れた! 王族の口調なんて独学だから焦ったがなんとかなるもんだな。それにしてもベッドは良いもんだ!」
「もう何年もベッドで横になれていなかった気分ですからね」
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復讐の執念による根性だけは誰にも負けなかったから出来た偉業である。
暫く寛いでいると、警備員がドアをノックした後部屋へ入ってくる。
「大変お待たせして申し訳ございません。馬車の準備ができましたので……」
「ほう。ここの国は態度も良ければ行動も早くて良いではないか。褒めてやる」
ザグロームとサフランは馬車へ乗り込み、ゆっくりと動き出した。
しかし、このとき二人は気が付いていなかった。
何故警備の態度が急変して丁寧にもてなしたのか、いきなり王族と対面出来るかもわかっていなかったのである。
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