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第二章
57 【視点変更】復讐の信念
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ザグロームとサフランがひたすら歩き続けて数十日。
広い森を抜けて地平線になっている平原を、ただただ歩き続けていた。
「おい……一体いつになったらオーブルジェ王国に着くんだ!?」
「知りませんわよ……。もう何回朝を迎えたと思っているのですか!?」
「知らん! 二十回過ぎた辺りで何回目か忘れてしまったぞ」
二人はオーブルジェ王国とは別の方向へひたすら歩いていた。
遥か彼方先にあるキレガダム王国へと向かっていることを二人は知らずに歩いている。
だが、リリーナから奪った薬を飲んでいるので、飲み食いせずに倒れることなく歩き続けることが可能になっていたのである。
とは言っても、飲食をせずに生きていける身体になっただけである。
弊害は色々とあるのだ。
「ザグローム様、流石に距離を空けて歩きたいですわ!」
「なぜだ!?」
「だって……ずっと水浴びができていないんですもの……肌荒れは酷いし髪も痛んでいます。おまけに……その」
「心配無用だ! 例えサフランがハゲようとも臭くとも、愛していくつもりだ!」
ザグロームに悪意はなかった。
初めて人を愛することができたのがサフランなのである。
「酷いですわ!! 私が今一番気にしていることを平気で……」
「仕方がないだろう! 私自身も臭い! だが水がどこにもないではないか! ならば一刻も早くオーブルジェ王国へ向かいしかない」
「もう限界です!! 足は棒のようですしザグローム様も酷い! ここで私は野垂れ死ぬんですわ!」
サフランは過度な疲労とストレスで限界だった。
だが、それはザグロームも同じである。
「いい加減にしろ。こうなったのは全てリリーナのせいなのだぞ。あいつさえいなければ私たちが道中捨てられることもなかったのだ。だからこそサフランは死んでもオーブルジェまで連れて行く! そして私の復讐の目的をしっかりと手伝ってもらうからな」
「私を道具扱いしているんですの!?」
「勿論復讐が終わった後はサフランと新婚暮らしだ。私が王でサフランは王妃となる」
ザグロームも、サフランの扱いにはある程度慣れてきていた。
すっかり機嫌を取り戻したサフランは、再び立ち上がった。
「分かりましたわ……。でも今日はゆっくり休ませて欲しいです。流石に足がもう動かない」
「分かった。では明日の日の出と共に出発する!」
二人は何があってもオーブルジェへ辿り着き、自らを捨てたゼオン達含め全員に復讐することを誓い合ったのだ。
だが、進んだ先にあるキレガダム王国まで辿り着くには、今まで歩いた二倍の距離を歩かなければならないことを理解していない。
二人はそれでも復讐の信念だけで歩いていくのだった。
広い森を抜けて地平線になっている平原を、ただただ歩き続けていた。
「おい……一体いつになったらオーブルジェ王国に着くんだ!?」
「知りませんわよ……。もう何回朝を迎えたと思っているのですか!?」
「知らん! 二十回過ぎた辺りで何回目か忘れてしまったぞ」
二人はオーブルジェ王国とは別の方向へひたすら歩いていた。
遥か彼方先にあるキレガダム王国へと向かっていることを二人は知らずに歩いている。
だが、リリーナから奪った薬を飲んでいるので、飲み食いせずに倒れることなく歩き続けることが可能になっていたのである。
とは言っても、飲食をせずに生きていける身体になっただけである。
弊害は色々とあるのだ。
「ザグローム様、流石に距離を空けて歩きたいですわ!」
「なぜだ!?」
「だって……ずっと水浴びができていないんですもの……肌荒れは酷いし髪も痛んでいます。おまけに……その」
「心配無用だ! 例えサフランがハゲようとも臭くとも、愛していくつもりだ!」
ザグロームに悪意はなかった。
初めて人を愛することができたのがサフランなのである。
「酷いですわ!! 私が今一番気にしていることを平気で……」
「仕方がないだろう! 私自身も臭い! だが水がどこにもないではないか! ならば一刻も早くオーブルジェ王国へ向かいしかない」
「もう限界です!! 足は棒のようですしザグローム様も酷い! ここで私は野垂れ死ぬんですわ!」
サフランは過度な疲労とストレスで限界だった。
だが、それはザグロームも同じである。
「いい加減にしろ。こうなったのは全てリリーナのせいなのだぞ。あいつさえいなければ私たちが道中捨てられることもなかったのだ。だからこそサフランは死んでもオーブルジェまで連れて行く! そして私の復讐の目的をしっかりと手伝ってもらうからな」
「私を道具扱いしているんですの!?」
「勿論復讐が終わった後はサフランと新婚暮らしだ。私が王でサフランは王妃となる」
ザグロームも、サフランの扱いにはある程度慣れてきていた。
すっかり機嫌を取り戻したサフランは、再び立ち上がった。
「分かりましたわ……。でも今日はゆっくり休ませて欲しいです。流石に足がもう動かない」
「分かった。では明日の日の出と共に出発する!」
二人は何があってもオーブルジェへ辿り着き、自らを捨てたゼオン達含め全員に復讐することを誓い合ったのだ。
だが、進んだ先にあるキレガダム王国まで辿り着くには、今まで歩いた二倍の距離を歩かなければならないことを理解していない。
二人はそれでも復讐の信念だけで歩いていくのだった。
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