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第二章
52 故郷へ向かう
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私含め、陛下とライカル様、それから数名の兵士と狙撃部隊を加えてアルガルデ王国へ出発するときが来ました。
ダスフォール元殿下も、厳重な牢屋と共に馬車で運ばれます。
念のために言っておきますが、兵士と狙撃部隊は、陛下たちへの護衛と道中の危険があった場合の対処のためですよ。
「ではこれよりアルガルデ王国へ向け出発する。シンザーンよ、後のことは頼む」
「お任せを。民衆のみんなと一緒に死守しますわよ」
「兄上、それにライカルもリリーナもお気をつけて!」
留守の間はしんちゃんことシンザーン殿下と、それからライカル様のお父様であるラウジャム様が、しばらくの間オーブルジェ王国を守ってくれます。
もちろん守ってくれるのは彼らだけでなく、王都に住んでいる皆さんで協力してですからね。
いくつか対策も取っておいたので大丈夫だとは思います。
もし何事もなくとも、今回の対策はいずれ役に立つことがあるでしょう。
数台の馬車が動きはじめました。
「リリーよ、久々のアルガルデへ行く気持ちはどうだ?」
ライカル様と二人きりの馬車です。
本当は陛下も一緒にと思いましたが、陛下から遠慮されてしまいました。
今までだって、ライカル様と二人きりの時間はありました。
しかし、ここまで長時間というのは初めてなので、とても緊張しています。
「そうですね、帰ることは無いと思っていましたから。私を助けてくださった執事のルルガムとサージェント陛下に会えると思うと嬉しいですね」
はっきり言ってそれだけが楽しみです。
私の交友関係はほとんど無いに等しかったですからね。
そう考えると、オーブルジェ王国に来てからの人生は幸せそのものです。
「私もロロガルの弟さんに会えると考えるとワクワクしている。間違いなく万能で優秀な執事だったのだろう」
「もちろんです! ロロガルさんも万能ですよね。さすが兄弟だと感じました」
「今思えば彼らがいなければリリーと出会うこともなかっただろう……。感謝だな」
「そうですね」
ルルガムの助けがなければ今頃私は、アルガルデのどこかで独り孤独にひっそりと過ごしていたかもしれません。
オーブルジェ王国にしても、もしかしたらダスフォール元殿下によって荒らされていたかもしれませんね。
ルルガムとトトガルさんがいたからこそ、二つの国が救われたのでしょう。
ライカル様と二人きりの時間を過ごしながら、馬車はゆっくりとアルガルデ王国へ向かっています。
♢
アルガルデ王国とオーブルジェ王国のちょうど中間地点に位置する場所でしょうか。
夜に焚き火をしている最中に少々危険な事件が起きました。
「陛下! 虎か猛獣と思われる生物がこちらに向かってきています」
見張りの兵士が慌てたように叫んでいました。
「なんと! 急いで避難を──」
「いえ、すぐに麻酔銃の準備を!」
陛下が慌てていたので、私はすぐに銃の準備を始めました。
念のために身体に身に付けておいてよかったです。
何人かの兵士にも私の声に続いて麻酔銃を備えます。
「「「ひぃ……!!」」」
向かってくる実物を見た何人かは震えて固まってしまいました。
肉眼ではっきりとわかるところまで近づいてきましたが、やはり猛獣ですね。
実際に遭遇するのは初めてですが、肉食で火に恐れることもなく人間を襲う系だと何かの本で読んだことはあります。
身を守る為にも襲ってきたと判断したら躊躇せずに銃を発射した方が良いでしょう。
「リリーナ嬢よ、人間相手には有効ではあったが、あんな猛獣にも効くのか!?」
「成分だけで考えると問題はないはずです。しかしながら、実際に撃つのは初めてなのでもしも効かなかった場合は例の作戦を実行しましょう!」
「一か八かか……」
麻酔銃がダメだった場合にも、猛獣相手への作戦がまだあるので大丈夫だとは思います。
やはりこちらへ向かってきていますね。
「念のために撃ちます!」
ダスフォール元殿下も、厳重な牢屋と共に馬車で運ばれます。
念のために言っておきますが、兵士と狙撃部隊は、陛下たちへの護衛と道中の危険があった場合の対処のためですよ。
「ではこれよりアルガルデ王国へ向け出発する。シンザーンよ、後のことは頼む」
「お任せを。民衆のみんなと一緒に死守しますわよ」
「兄上、それにライカルもリリーナもお気をつけて!」
留守の間はしんちゃんことシンザーン殿下と、それからライカル様のお父様であるラウジャム様が、しばらくの間オーブルジェ王国を守ってくれます。
もちろん守ってくれるのは彼らだけでなく、王都に住んでいる皆さんで協力してですからね。
いくつか対策も取っておいたので大丈夫だとは思います。
もし何事もなくとも、今回の対策はいずれ役に立つことがあるでしょう。
数台の馬車が動きはじめました。
「リリーよ、久々のアルガルデへ行く気持ちはどうだ?」
ライカル様と二人きりの馬車です。
本当は陛下も一緒にと思いましたが、陛下から遠慮されてしまいました。
今までだって、ライカル様と二人きりの時間はありました。
しかし、ここまで長時間というのは初めてなので、とても緊張しています。
「そうですね、帰ることは無いと思っていましたから。私を助けてくださった執事のルルガムとサージェント陛下に会えると思うと嬉しいですね」
はっきり言ってそれだけが楽しみです。
私の交友関係はほとんど無いに等しかったですからね。
そう考えると、オーブルジェ王国に来てからの人生は幸せそのものです。
「私もロロガルの弟さんに会えると考えるとワクワクしている。間違いなく万能で優秀な執事だったのだろう」
「もちろんです! ロロガルさんも万能ですよね。さすが兄弟だと感じました」
「今思えば彼らがいなければリリーと出会うこともなかっただろう……。感謝だな」
「そうですね」
ルルガムの助けがなければ今頃私は、アルガルデのどこかで独り孤独にひっそりと過ごしていたかもしれません。
オーブルジェ王国にしても、もしかしたらダスフォール元殿下によって荒らされていたかもしれませんね。
ルルガムとトトガルさんがいたからこそ、二つの国が救われたのでしょう。
ライカル様と二人きりの時間を過ごしながら、馬車はゆっくりとアルガルデ王国へ向かっています。
♢
アルガルデ王国とオーブルジェ王国のちょうど中間地点に位置する場所でしょうか。
夜に焚き火をしている最中に少々危険な事件が起きました。
「陛下! 虎か猛獣と思われる生物がこちらに向かってきています」
見張りの兵士が慌てたように叫んでいました。
「なんと! 急いで避難を──」
「いえ、すぐに麻酔銃の準備を!」
陛下が慌てていたので、私はすぐに銃の準備を始めました。
念のために身体に身に付けておいてよかったです。
何人かの兵士にも私の声に続いて麻酔銃を備えます。
「「「ひぃ……!!」」」
向かってくる実物を見た何人かは震えて固まってしまいました。
肉眼ではっきりとわかるところまで近づいてきましたが、やはり猛獣ですね。
実際に遭遇するのは初めてですが、肉食で火に恐れることもなく人間を襲う系だと何かの本で読んだことはあります。
身を守る為にも襲ってきたと判断したら躊躇せずに銃を発射した方が良いでしょう。
「リリーナ嬢よ、人間相手には有効ではあったが、あんな猛獣にも効くのか!?」
「成分だけで考えると問題はないはずです。しかしながら、実際に撃つのは初めてなのでもしも効かなかった場合は例の作戦を実行しましょう!」
「一か八かか……」
麻酔銃がダメだった場合にも、猛獣相手への作戦がまだあるので大丈夫だとは思います。
やはりこちらへ向かってきていますね。
「念のために撃ちます!」
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