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第一章
41 陛下の覚悟
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「リリーナ嬢の活躍、誠に感謝する」
王の間でデインヒール陛下に讃えられてしまいました。
しかも、陛下の横ではしんちゃんことシンザーン殿下まで私に向かって膝を立てて頭を下げています。
「大袈裟ですよ……私はあくまで対策を立てただけですから」
「そんなことはない。それに、先ほどアルガルデ王国から伝書鳩で手紙が届きおった。しかもサージェント国王陛下から緊急の知らせだ。リリーナ嬢よ、其方の予想は全て当たっていたのだ」
「そうですか……」
こればかりは予想が当たって良かったとはとても思えませんね。
心のどこかで私の勘違いであって欲しいと思っていましたから。
「息子のダスフォールには失望したよ……」
「やはり手を組んでいたと書かれているのですか?」
「そこまで推測しているとはさすがだ。要約すると、アルガルデ王国の新改正を良く思わない殆どの貴族と兵士がこちらに向かって出発した。更に、こちら側の王族と思われる人間が大量の馬車を連れてアルガルデ王国に来てすぐに手を組んだと書いてある。間違いなくダスフォールであろう……」
大量の馬車と書いてあったのなら間違いないでしょう。
陛下は話を続けます。
「馬車が追加され、アルガルデ王国の殆どの貴族が乗り込み国を出て行った。向かった先はオーブルジェ王国で間違いない。更にオーブルジェ王国を滅ぼし戦力を更に整えやがてアルガルデ王国も滅ぼすだろうと書いてあった」
前国王陛下ならそう企んでもおかしくありませんね。
ですが、大人しくダスフォール殿下と手を組むとも思えません。
きっと利用だけして、目的を達成させたら始末するつもりでしょう。
そしてお父様たちやサフランお姉様、更にザグロームもきっと一緒に……。
「だが、私たちは不安は無い。リリーナ嬢が事前にこれだけの対策をしてくれたのだ」
麻酔銃を使う射撃部隊。
王都の入り口での簡易検問所。
更に住民の団結力。
そして……。
「伝書鳩と馬車のスピードを計算すると、早くてあと八日で到着するでしょう。それまでにもう一つだけより安全にする策があるんですが……」
「ふむ、既に完璧と思っておったがまだあるというのか。どのような?」
「これは悪手でもあるので、陛下にご判断いただきたいのです。国のお金が必要になってしまうかもしれないのですが……」
「リリーナはこの件の専門家もしくは英雄とも言える。詳しく聞こうではないか」
陛下は真剣な表情をしています。
「麻酔薬部隊以外の住民を、七日後から騒ぎが始まるまでの間、家の中から一歩も出さないようにするという案です。やむを得ず外出する際は、以前大量に仕入れ配布した射撃大会の衣装を着用義務で出てもらいたいのです」
「なんと!」
「勿論強制行為になってしまうので、住民の皆様に謝礼と数日間分の食料を提供するというのが絶対条件になると思うのですが……」
強制的に家に閉じ込めてしまうのです。
王都がゴーストタウンのような状態になってしまうでしょう。
いくら仲良し国家とはいえ、住民には絶大なストレスを与えてしまうはずです。
当たり前のことですが、協力してもらう分の謝礼と食料を十分に用意する必要があります。
流石に陛下はすぐには判断できないでしょうし、大事な財政を無駄に出費してしまうことは嫌がるはずですが……。
「ふむ、緊急事態だというのは確定しておる。その案、すぐに皆に知らせよう。勿論全責任は私が取るからリリーナは何も心配せずとも良い!」
「良いのですか!?」
あっという間に決断してしまう陛下でした。
「むしろ当然の行為だろう。外は危険な場所になる。予め家にいてくれた方が安全度は上がるだろう? そうだな……全住民に去年納税してもらっていた分を全額返還と、更に定額で上乗せし、十日分の食料と生活必需品を提供する措置を行えば、ある程度は協力いただけるだろうか」
納税を全額返還すれば国が傾くほどの金額になってしまいます。
個人が稼いだ年俸の三割を返還するのですから、それだけでも相当な額になるでしょう。
それに長丁場になったとしても、おそらく十日ほどです。
まさかこれほどまでに支援する覚悟を持ち、しかも瞬時に決める陛下に驚いてしまいました。
でも、これだけの支援があれば反対するものは少ないんじゃないかと思いますね。
「ところで、外出時は例の衣装を着るようにしてほしいというのは何故だ?」
「ゴーストタウン状態で外出すれば目立ちます。その際に敵が攻めてきた場合、いくら射撃部隊でも判断が迷ってしまいます。しかし、あの衣装ならば敵は絶対に着ていません。衣装を着用している人間はこの国の者だと瞬時に判断ができるでしょう」
「ふむ、ここまで徹底できれば何も心配は要らぬだろう。数々の素晴らしい提案、感謝する」
感謝するのは私の方です。
果たして自由な王都の住民達は納得してくれるのでしょうか……。
王の間でデインヒール陛下に讃えられてしまいました。
しかも、陛下の横ではしんちゃんことシンザーン殿下まで私に向かって膝を立てて頭を下げています。
「大袈裟ですよ……私はあくまで対策を立てただけですから」
「そんなことはない。それに、先ほどアルガルデ王国から伝書鳩で手紙が届きおった。しかもサージェント国王陛下から緊急の知らせだ。リリーナ嬢よ、其方の予想は全て当たっていたのだ」
「そうですか……」
こればかりは予想が当たって良かったとはとても思えませんね。
心のどこかで私の勘違いであって欲しいと思っていましたから。
「息子のダスフォールには失望したよ……」
「やはり手を組んでいたと書かれているのですか?」
「そこまで推測しているとはさすがだ。要約すると、アルガルデ王国の新改正を良く思わない殆どの貴族と兵士がこちらに向かって出発した。更に、こちら側の王族と思われる人間が大量の馬車を連れてアルガルデ王国に来てすぐに手を組んだと書いてある。間違いなくダスフォールであろう……」
大量の馬車と書いてあったのなら間違いないでしょう。
陛下は話を続けます。
「馬車が追加され、アルガルデ王国の殆どの貴族が乗り込み国を出て行った。向かった先はオーブルジェ王国で間違いない。更にオーブルジェ王国を滅ぼし戦力を更に整えやがてアルガルデ王国も滅ぼすだろうと書いてあった」
前国王陛下ならそう企んでもおかしくありませんね。
ですが、大人しくダスフォール殿下と手を組むとも思えません。
きっと利用だけして、目的を達成させたら始末するつもりでしょう。
そしてお父様たちやサフランお姉様、更にザグロームもきっと一緒に……。
「だが、私たちは不安は無い。リリーナ嬢が事前にこれだけの対策をしてくれたのだ」
麻酔銃を使う射撃部隊。
王都の入り口での簡易検問所。
更に住民の団結力。
そして……。
「伝書鳩と馬車のスピードを計算すると、早くてあと八日で到着するでしょう。それまでにもう一つだけより安全にする策があるんですが……」
「ふむ、既に完璧と思っておったがまだあるというのか。どのような?」
「これは悪手でもあるので、陛下にご判断いただきたいのです。国のお金が必要になってしまうかもしれないのですが……」
「リリーナはこの件の専門家もしくは英雄とも言える。詳しく聞こうではないか」
陛下は真剣な表情をしています。
「麻酔薬部隊以外の住民を、七日後から騒ぎが始まるまでの間、家の中から一歩も出さないようにするという案です。やむを得ず外出する際は、以前大量に仕入れ配布した射撃大会の衣装を着用義務で出てもらいたいのです」
「なんと!」
「勿論強制行為になってしまうので、住民の皆様に謝礼と数日間分の食料を提供するというのが絶対条件になると思うのですが……」
強制的に家に閉じ込めてしまうのです。
王都がゴーストタウンのような状態になってしまうでしょう。
いくら仲良し国家とはいえ、住民には絶大なストレスを与えてしまうはずです。
当たり前のことですが、協力してもらう分の謝礼と食料を十分に用意する必要があります。
流石に陛下はすぐには判断できないでしょうし、大事な財政を無駄に出費してしまうことは嫌がるはずですが……。
「ふむ、緊急事態だというのは確定しておる。その案、すぐに皆に知らせよう。勿論全責任は私が取るからリリーナは何も心配せずとも良い!」
「良いのですか!?」
あっという間に決断してしまう陛下でした。
「むしろ当然の行為だろう。外は危険な場所になる。予め家にいてくれた方が安全度は上がるだろう? そうだな……全住民に去年納税してもらっていた分を全額返還と、更に定額で上乗せし、十日分の食料と生活必需品を提供する措置を行えば、ある程度は協力いただけるだろうか」
納税を全額返還すれば国が傾くほどの金額になってしまいます。
個人が稼いだ年俸の三割を返還するのですから、それだけでも相当な額になるでしょう。
それに長丁場になったとしても、おそらく十日ほどです。
まさかこれほどまでに支援する覚悟を持ち、しかも瞬時に決める陛下に驚いてしまいました。
でも、これだけの支援があれば反対するものは少ないんじゃないかと思いますね。
「ところで、外出時は例の衣装を着るようにしてほしいというのは何故だ?」
「ゴーストタウン状態で外出すれば目立ちます。その際に敵が攻めてきた場合、いくら射撃部隊でも判断が迷ってしまいます。しかし、あの衣装ならば敵は絶対に着ていません。衣装を着用している人間はこの国の者だと瞬時に判断ができるでしょう」
「ふむ、ここまで徹底できれば何も心配は要らぬだろう。数々の素晴らしい提案、感謝する」
感謝するのは私の方です。
果たして自由な王都の住民達は納得してくれるのでしょうか……。
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