上 下
41 / 71
第一章

41 陛下の覚悟

しおりを挟む
「リリーナ嬢の活躍、誠に感謝する」

 王の間でデインヒール陛下に讃えられてしまいました。
 しかも、陛下の横ではしんちゃんことシンザーン殿下まで私に向かって膝を立てて頭を下げています。

「大袈裟ですよ……私はあくまで対策を立てただけですから」
「そんなことはない。それに、先ほどアルガルデ王国から伝書鳩で手紙が届きおった。しかもサージェント国王陛下から緊急の知らせだ。リリーナ嬢よ、其方の予想は全て当たっていたのだ」
「そうですか……」

 こればかりは予想が当たって良かったとはとても思えませんね。
 心のどこかで私の勘違いであって欲しいと思っていましたから。

「息子のダスフォールには失望したよ……」
「やはり手を組んでいたと書かれているのですか?」

「そこまで推測しているとはさすがだ。要約すると、アルガルデ王国の新改正を良く思わない殆どの貴族と兵士がこちらに向かって出発した。更に、こちら側の王族と思われる人間が大量の馬車を連れてアルガルデ王国に来てすぐに手を組んだと書いてある。間違いなくダスフォールであろう……」

 大量の馬車と書いてあったのなら間違いないでしょう。
 陛下は話を続けます。

「馬車が追加され、アルガルデ王国の殆どの貴族が乗り込み国を出て行った。向かった先はオーブルジェ王国で間違いない。更にオーブルジェ王国を滅ぼし戦力を更に整えやがてアルガルデ王国も滅ぼすだろうと書いてあった」

 前国王陛下ならそう企んでもおかしくありませんね。
 ですが、大人しくダスフォール殿下と手を組むとも思えません。
 きっと利用だけして、目的を達成させたら始末するつもりでしょう。

 そしてお父様たちやサフランお姉様、更にザグロームもきっと一緒に……。

「だが、私たちは不安は無い。リリーナ嬢が事前にこれだけの対策をしてくれたのだ」

 麻酔銃を使う射撃部隊。
 王都の入り口での簡易検問所。
 更に住民の団結力。

 そして……。

「伝書鳩と馬車のスピードを計算すると、早くてあと八日で到着するでしょう。それまでにもう一つだけより安全にする策があるんですが……」
「ふむ、既に完璧と思っておったがまだあるというのか。どのような?」

「これは悪手でもあるので、陛下にご判断いただきたいのです。国のお金が必要になってしまうかもしれないのですが……」
「リリーナはこの件の専門家もしくは英雄とも言える。詳しく聞こうではないか」

 陛下は真剣な表情をしています。

「麻酔薬部隊以外の住民を、七日後から騒ぎが始まるまでの間、家の中から一歩も出さないようにするという案です。やむを得ず外出する際は、以前大量に仕入れ配布した射撃大会の衣装を着用義務で出てもらいたいのです」

「なんと!」

「勿論強制行為になってしまうので、住民の皆様に謝礼と数日間分の食料を提供するというのが絶対条件になると思うのですが……」

 強制的に家に閉じ込めてしまうのです。
 王都がゴーストタウンのような状態になってしまうでしょう。
 いくら仲良し国家とはいえ、住民には絶大なストレスを与えてしまうはずです。
 当たり前のことですが、協力してもらう分の謝礼と食料を十分に用意する必要があります。

 流石に陛下はすぐには判断できないでしょうし、大事な財政を無駄に出費してしまうことは嫌がるはずですが……。

「ふむ、緊急事態だというのは確定しておる。その案、すぐに皆に知らせよう。勿論全責任は私が取るからリリーナは何も心配せずとも良い!」

「良いのですか!?」
 あっという間に決断してしまう陛下でした。

「むしろ当然の行為だろう。外は危険な場所になる。予め家にいてくれた方が安全度は上がるだろう? そうだな……全住民に去年納税してもらっていた分を全額返還と、更に定額で上乗せし、十日分の食料と生活必需品を提供する措置を行えば、ある程度は協力いただけるだろうか」

 納税を全額返還すれば国が傾くほどの金額になってしまいます。
 個人が稼いだ年俸の三割を返還するのですから、それだけでも相当な額になるでしょう。

 それに長丁場になったとしても、おそらく十日ほどです。
 まさかこれほどまでに支援する覚悟を持ち、しかも瞬時に決める陛下に驚いてしまいました。

 でも、これだけの支援があれば反対するものは少ないんじゃないかと思いますね。

「ところで、外出時は例の衣装を着るようにしてほしいというのは何故だ?」
「ゴーストタウン状態で外出すれば目立ちます。その際に敵が攻めてきた場合、いくら射撃部隊でも判断が迷ってしまいます。しかし、あの衣装ならば敵は絶対に着ていません。衣装を着用している人間はこの国の者だと瞬時に判断ができるでしょう」

「ふむ、ここまで徹底できれば何も心配は要らぬだろう。数々の素晴らしい提案、感謝する」

 感謝するのは私の方です。
 果たして自由な王都の住民達は納得してくれるのでしょうか……。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

公爵令嬢アナスタシアの華麗なる鉄槌

招杜羅147
ファンタジー
「婚約は破棄だ!」 毒殺容疑の冤罪で、婚約者の手によって投獄された公爵令嬢・アナスタシア。 彼女は獄中死し、それによって3年前に巻き戻る。 そして…。

お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから

結城芙由奈 
恋愛
【もう私は必要ありませんよね?】 私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。 その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。 ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない 自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。 そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが―― ※ 他サイトでも投稿中   途中まで鬱展開続きます(注意)

婚約破棄をされた悪役令嬢は、すべてを見捨てることにした

アルト
ファンタジー
今から七年前。 婚約者である王太子の都合により、ありもしない罪を着せられ、国外追放に処された一人の令嬢がいた。偽りの悪業の経歴を押し付けられ、人里に彼女の居場所はどこにもなかった。 そして彼女は、『魔の森』と呼ばれる魔窟へと足を踏み入れる。 そして現在。 『魔の森』に住まうとある女性を訪ねてとある集団が彼女の勧誘にと向かっていた。 彼らの正体は女神からの神託を受け、結成された魔王討伐パーティー。神託により指名された最後の一人の勧誘にと足を運んでいたのだが——。

[完結]婚約破棄してください。そして私にもう関わらないで

みちこ
恋愛
妹ばかり溺愛する両親、妹は思い通りにならないと泣いて私の事を責める 婚約者も妹の味方、そんな私の味方になってくれる人はお兄様と伯父さんと伯母さんとお祖父様とお祖母様 私を愛してくれる人の為にももう自由になります

妹に婚約者を奪われ、屋敷から追放されました。でもそれが、私を虐げていた人たちの破滅の始まりでした

水上
恋愛
「ソフィア、悪いがお前との婚約は破棄させてもらう」 子爵令嬢である私、ソフィア・ベルモントは、婚約者である子爵令息のジェイソン・フロストに婚約破棄を言い渡された。 彼の隣には、私の妹であるシルビアがいる。 彼女はジェイソンの腕に体を寄せ、勝ち誇ったような表情でこちらを見ている。 こんなこと、許されることではない。 そう思ったけれど、すでに両親は了承していた。 完全に、シルビアの味方なのだ。 しかも……。 「お前はもう用済みだ。この屋敷から出て行け」 私はお父様から追放を宣言された。 必死に食い下がるも、お父様のビンタによって、私の言葉はかき消された。 「いつまで床に這いつくばっているのよ、見苦しい」 お母様は冷たい言葉を私にかけてきた。 その目は、娘を見る目ではなかった。 「惨めね、お姉さま……」 シルビアは歪んだ笑みを浮かべて、私の方を見ていた。 そうして私は、妹に婚約者を奪われ、屋敷から追放された。 途方もなく歩いていたが、そんな私に、ある人物が声を掛けてきた。 一方、私を虐げてきた人たちは、破滅へのカウントダウンがすでに始まっていることに、まだ気づいてはいなかった……。

妹が嫌がっているからと婚約破棄したではありませんか。それで路頭に迷ったと言われても困ります。

木山楽斗
恋愛
伯爵令嬢であるラナーシャは、妹同伴で挨拶をしに来た婚約者に驚くことになった。 事前に知らされていなかったことであるため、面食らうことになったのである。 しかもその妹は、態度が悪かった。明らかにラナーシャに対して、敵意を抱いていたのだ。 だがそれでも、ラナーシャは彼女を受け入れた。父親がもたらしてくれた婚約を破談してはならないと、彼女は思っていたのだ。 しかしそんな彼女の思いは二人に裏切られることになる。婚約者は、妹が嫌がっているからという理由で、婚約破棄を言い渡してきたのだ。 呆気に取られていたラナーシャだったが、二人の意思は固かった。 婚約は敢え無く破談となってしまったのだ。 その事実に、ラナーシャの両親は憤っていた。 故に相手の伯爵家に抗議した所、既に処分がなされているという返答が返ってきた。 ラナーシャの元婚約者と妹は、伯爵家を追い出されていたのである。 程なくして、ラナーシャの元に件の二人がやって来た。 典型的な貴族であった二人は、家を追い出されてどうしていいかわからず、あろうことかラナーシャのことを頼ってきたのだ。 ラナーシャにそんな二人を助ける義理はなかった。 彼女は二人を追い返して、事なきを得たのだった。

妹と再婚約?殿下ありがとうございます!

八つ刻
恋愛
第一王子と侯爵令嬢は婚約を白紙撤回することにした。 第一王子が侯爵令嬢の妹と真実の愛を見つけてしまったからだ。 「彼女のことは私に任せろ」 殿下!言質は取りましたからね!妹を宜しくお願いします! 令嬢は妹を王子に丸投げし、自分は家族と平穏な幸せを手に入れる。

平凡な伯爵令嬢は平凡な結婚がしたいだけ……それすら贅沢なのですか!?

Hibah
恋愛
姉のソフィアは幼い頃から優秀で、両親から溺愛されていた。 一方で私エミリーは健康が取り柄なくらいで、伯爵令嬢なのに贅沢知らず……。 優秀な姉みたいになりたいと思ったこともあったけど、ならなくて正解だった。 姉の本性を知っているのは私だけ……。ある日、姉は王子様に婚約破棄された。 平凡な私は平凡な結婚をしてつつましく暮らしますよ……それすら贅沢なのですか!?

処理中です...