上 下
40 / 71
第一章

40 ライカル様の宣言

しおりを挟む
「これで最低限の対策は全て完了しました」
「リリー、国のためにこれだけ動いてくれてありがとう。どう感謝して良いのやら……」

 王宮へ向かう馬車の中、ライカル様は私の手を握りながら嬉しそうな表情でそう言ってくれました。

「弟のルルガムにも感謝ですな。本当に良いタイミングでお嬢様をこちらへ誘導してくれたのですから」

 執事のロロガルさんを見ていると、いつもルルガムのことを思い出します。
 アルガルデ王国の問題だった貴族の方々が一斉にいなくなったのであれば、おそらく国の再建もなんとかなるでしょう。

 そうすればきっと……。

「ところでリリー、今回の大きな問題が解決できたら頼みたいことがある」
「はい、何でしょうか?」

 ライカル様が急にモジモジとした態度に変わりました。
 普段からカッコいいライカル様が時折見せてくる、恥ずかしがっている姿はとても母性本能をくすぐってくるのです。

「結婚式を挙げたい」
「ひょえ!?」

 突然の宣言に驚いてしまいました。

「あ、あの……いきなり式の話をされて嬉しいんですけれども……」
 上手く言葉が出ません。
 嬉しいのと恥ずかしいのと、なぜ今ここで言ったのかが分かりませんでした。

「突然すまない。だが、これから大きな戦が始まるかもしれないだろう? 何が起こるかわからない。だから事前に私の気持ちを伝えておこうと思った」

「何かあったら困ります! ライカル様だけでなく、誰一人怪我人を出さないように今回も策を立てたのですから!」

 とは言っても、絶対なんてことは存在しませんからね……。

「もちろんリリーの作戦は完璧だと思っている。それでも気持ちを抑えきれなくなってしまった」
「……」

 それは私とて同じです。
 いくら好きと伝えても言葉では足りないくらい愛しているのですから。

「婚約は決まっていたが、まだ正式に日取りは決めていなかった。できればリリーがこの国に来た日付に入籍と結婚式を同時に挙げたいと思っていたのだが」

 私はライカル様といれるだけで幸せで、日どりはいつでも良いと思ってしました。
 こうやって考えてくれることがとても嬉しかったのです。

「ありがとうございます。ことが済んでも忙しくなりそうですね」
「今度は嬉しい忙しさだから何も問題はない」
「不謹慎ですが、私は今回も割と楽しんで対策を進めていましたよ」
「なんと!」

 口にはしませんでしたが、国のため、今後の防衛のために動けると考えたら嬉しかったのです。
 だからこそ多少苦戦はしましたが、苦ではありませんでした。

「リリーが私の妻になってくれて本当に良かった。きっと王都の皆も祝福してくれるだろう」
「ライカル様も王都の皆さんのことを愛していますものね。私も今はそうですが」

 だからこそ、平和な国を維持しなくてはいけませんね。
 必ず守りましょう。

 国の全員で協力して。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

公爵令嬢アナスタシアの華麗なる鉄槌

招杜羅147
ファンタジー
「婚約は破棄だ!」 毒殺容疑の冤罪で、婚約者の手によって投獄された公爵令嬢・アナスタシア。 彼女は獄中死し、それによって3年前に巻き戻る。 そして…。

お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから

結城芙由奈 
恋愛
【もう私は必要ありませんよね?】 私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。 その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。 ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない 自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。 そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが―― ※ 他サイトでも投稿中   途中まで鬱展開続きます(注意)

婚約破棄をされた悪役令嬢は、すべてを見捨てることにした

アルト
ファンタジー
今から七年前。 婚約者である王太子の都合により、ありもしない罪を着せられ、国外追放に処された一人の令嬢がいた。偽りの悪業の経歴を押し付けられ、人里に彼女の居場所はどこにもなかった。 そして彼女は、『魔の森』と呼ばれる魔窟へと足を踏み入れる。 そして現在。 『魔の森』に住まうとある女性を訪ねてとある集団が彼女の勧誘にと向かっていた。 彼らの正体は女神からの神託を受け、結成された魔王討伐パーティー。神託により指名された最後の一人の勧誘にと足を運んでいたのだが——。

[完結]婚約破棄してください。そして私にもう関わらないで

みちこ
恋愛
妹ばかり溺愛する両親、妹は思い通りにならないと泣いて私の事を責める 婚約者も妹の味方、そんな私の味方になってくれる人はお兄様と伯父さんと伯母さんとお祖父様とお祖母様 私を愛してくれる人の為にももう自由になります

妹に婚約者を奪われ、屋敷から追放されました。でもそれが、私を虐げていた人たちの破滅の始まりでした

水上
恋愛
「ソフィア、悪いがお前との婚約は破棄させてもらう」 子爵令嬢である私、ソフィア・ベルモントは、婚約者である子爵令息のジェイソン・フロストに婚約破棄を言い渡された。 彼の隣には、私の妹であるシルビアがいる。 彼女はジェイソンの腕に体を寄せ、勝ち誇ったような表情でこちらを見ている。 こんなこと、許されることではない。 そう思ったけれど、すでに両親は了承していた。 完全に、シルビアの味方なのだ。 しかも……。 「お前はもう用済みだ。この屋敷から出て行け」 私はお父様から追放を宣言された。 必死に食い下がるも、お父様のビンタによって、私の言葉はかき消された。 「いつまで床に這いつくばっているのよ、見苦しい」 お母様は冷たい言葉を私にかけてきた。 その目は、娘を見る目ではなかった。 「惨めね、お姉さま……」 シルビアは歪んだ笑みを浮かべて、私の方を見ていた。 そうして私は、妹に婚約者を奪われ、屋敷から追放された。 途方もなく歩いていたが、そんな私に、ある人物が声を掛けてきた。 一方、私を虐げてきた人たちは、破滅へのカウントダウンがすでに始まっていることに、まだ気づいてはいなかった……。

妹が嫌がっているからと婚約破棄したではありませんか。それで路頭に迷ったと言われても困ります。

木山楽斗
恋愛
伯爵令嬢であるラナーシャは、妹同伴で挨拶をしに来た婚約者に驚くことになった。 事前に知らされていなかったことであるため、面食らうことになったのである。 しかもその妹は、態度が悪かった。明らかにラナーシャに対して、敵意を抱いていたのだ。 だがそれでも、ラナーシャは彼女を受け入れた。父親がもたらしてくれた婚約を破談してはならないと、彼女は思っていたのだ。 しかしそんな彼女の思いは二人に裏切られることになる。婚約者は、妹が嫌がっているからという理由で、婚約破棄を言い渡してきたのだ。 呆気に取られていたラナーシャだったが、二人の意思は固かった。 婚約は敢え無く破談となってしまったのだ。 その事実に、ラナーシャの両親は憤っていた。 故に相手の伯爵家に抗議した所、既に処分がなされているという返答が返ってきた。 ラナーシャの元婚約者と妹は、伯爵家を追い出されていたのである。 程なくして、ラナーシャの元に件の二人がやって来た。 典型的な貴族であった二人は、家を追い出されてどうしていいかわからず、あろうことかラナーシャのことを頼ってきたのだ。 ラナーシャにそんな二人を助ける義理はなかった。 彼女は二人を追い返して、事なきを得たのだった。

妹と再婚約?殿下ありがとうございます!

八つ刻
恋愛
第一王子と侯爵令嬢は婚約を白紙撤回することにした。 第一王子が侯爵令嬢の妹と真実の愛を見つけてしまったからだ。 「彼女のことは私に任せろ」 殿下!言質は取りましたからね!妹を宜しくお願いします! 令嬢は妹を王子に丸投げし、自分は家族と平穏な幸せを手に入れる。

平凡な伯爵令嬢は平凡な結婚がしたいだけ……それすら贅沢なのですか!?

Hibah
恋愛
姉のソフィアは幼い頃から優秀で、両親から溺愛されていた。 一方で私エミリーは健康が取り柄なくらいで、伯爵令嬢なのに贅沢知らず……。 優秀な姉みたいになりたいと思ったこともあったけど、ならなくて正解だった。 姉の本性を知っているのは私だけ……。ある日、姉は王子様に婚約破棄された。 平凡な私は平凡な結婚をしてつつましく暮らしますよ……それすら贅沢なのですか!?

処理中です...