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第一章
35 戦争後への対策
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「リリーナ嬢よ、今度は何を作っているのだ?」
デインヒール陛下としんちゃん、それからライカル様がじっと見てきます。
「これは以前にもアルガルデ王国で作っていた試作品だったのですが、飲食をしなくともしばらく生きていける魔道具のようなものです」
「「「ほぉ……!!」」」
三人とも驚いているようです。
「今後囚人が増えてしまい、毎回食事を与えるのも労力や国費がかかってしまうでしょう。ですから、何もせずとも最低限生きていけるようにする魔道具があれば便利かと思いまして」
「リリーナ嬢は素晴らしい! 戦争対策だけでなく、その後の対策まで考えていたとは!」
「手に入った薬草や医療の薬品では上手く調合するのが難しいので、もう少し時間がかかってしまうかとは思いますが……」
魔道具とは言いましたが、実際は魔力など入っていないただの薬です。
太陽の光と空気を皮膚に取り入れることで必要なビタミンミネラルその他の類を無理やり変化させてしまうという少々危険な薬になります。
以前にも試作したのですが、あと一歩というところでサフランお姉様とザグロームに奪われてしまいました。
「今回のは即効性が高いようにしているので、完成できれば囚人に与えるだけで概ね一年は監獄に閉じ込めたまま放置していても餓死することはないかと思います」
「つまり囚人でなくとも、たとえば何かの天変地異によって食べる物が不足してしまった時にこの魔道具を使えば餓死することもなくなると?」
ライカル様は私の本当の思惑を読んでくれているようでした。
「そうです。本当は飢えで苦しんでいる人たちのために開発していました。ですが、今の需要としては囚人用になりそうなので、急いで仕上げているところです」
「なるほどね。囚人相手に余計な経費を出さずに、しかも食事を作ったり与えたりする手間も省けるってわけね。リーナったらすごい発想じゃないの!」
「これならば警備だけしっかりしておけば良いですからね」
もしも王都の誰かを囚人の食事係担当係として雇ったとしても、おそらくその人は喜んで働くことはないでしょう。
こんなに平和で幸せな国ですから、嫌々仕事をしなければならない人たちを増やしてはいけませんからね。
陛下としんちゃんは国務があると言って部屋を出ていきました。
私は休むことなく集中して作業を続けます。
「ふぅ! これで完成したかと思います」
「お疲れさま。リリーの真剣な表情をずっと見ていて見惚れてしまった」
「ライカル様は大袈裟ですよ」
実はライカル様がずっとそばにいてくれたからこそ、最後まで集中して作業ができたのです。
ライカル様にはいつも助けてもらってばかりですね。
「ライカル様、いつもありがとうございます」
「おいおい、どうしたのだ?」
「感謝しているんですよ」
ずっと配合の微調整や研究をしていたので、流石に疲れてしまいました。
そばにいるライカル様の肩に無意識で寄っかかってしまったのです。
「ひゃ! ご、ごめんなさい!」
すぐに離れようとしましたが、ライカル様の腕で抱きしめられて動けなくなりました。
「気にしなくともいいんだ。リリーはとても頑張った! リリーが疲れたらいつでも私が支える」
「ありがとうございます……」
ライカル様と将来を誓い合って本当に良かったと思います。
安心してしばらくの間、至近距離でライカル様の胸の鼓動を聞きながら癒されていました。
デインヒール陛下としんちゃん、それからライカル様がじっと見てきます。
「これは以前にもアルガルデ王国で作っていた試作品だったのですが、飲食をしなくともしばらく生きていける魔道具のようなものです」
「「「ほぉ……!!」」」
三人とも驚いているようです。
「今後囚人が増えてしまい、毎回食事を与えるのも労力や国費がかかってしまうでしょう。ですから、何もせずとも最低限生きていけるようにする魔道具があれば便利かと思いまして」
「リリーナ嬢は素晴らしい! 戦争対策だけでなく、その後の対策まで考えていたとは!」
「手に入った薬草や医療の薬品では上手く調合するのが難しいので、もう少し時間がかかってしまうかとは思いますが……」
魔道具とは言いましたが、実際は魔力など入っていないただの薬です。
太陽の光と空気を皮膚に取り入れることで必要なビタミンミネラルその他の類を無理やり変化させてしまうという少々危険な薬になります。
以前にも試作したのですが、あと一歩というところでサフランお姉様とザグロームに奪われてしまいました。
「今回のは即効性が高いようにしているので、完成できれば囚人に与えるだけで概ね一年は監獄に閉じ込めたまま放置していても餓死することはないかと思います」
「つまり囚人でなくとも、たとえば何かの天変地異によって食べる物が不足してしまった時にこの魔道具を使えば餓死することもなくなると?」
ライカル様は私の本当の思惑を読んでくれているようでした。
「そうです。本当は飢えで苦しんでいる人たちのために開発していました。ですが、今の需要としては囚人用になりそうなので、急いで仕上げているところです」
「なるほどね。囚人相手に余計な経費を出さずに、しかも食事を作ったり与えたりする手間も省けるってわけね。リーナったらすごい発想じゃないの!」
「これならば警備だけしっかりしておけば良いですからね」
もしも王都の誰かを囚人の食事係担当係として雇ったとしても、おそらくその人は喜んで働くことはないでしょう。
こんなに平和で幸せな国ですから、嫌々仕事をしなければならない人たちを増やしてはいけませんからね。
陛下としんちゃんは国務があると言って部屋を出ていきました。
私は休むことなく集中して作業を続けます。
「ふぅ! これで完成したかと思います」
「お疲れさま。リリーの真剣な表情をずっと見ていて見惚れてしまった」
「ライカル様は大袈裟ですよ」
実はライカル様がずっとそばにいてくれたからこそ、最後まで集中して作業ができたのです。
ライカル様にはいつも助けてもらってばかりですね。
「ライカル様、いつもありがとうございます」
「おいおい、どうしたのだ?」
「感謝しているんですよ」
ずっと配合の微調整や研究をしていたので、流石に疲れてしまいました。
そばにいるライカル様の肩に無意識で寄っかかってしまったのです。
「ひゃ! ご、ごめんなさい!」
すぐに離れようとしましたが、ライカル様の腕で抱きしめられて動けなくなりました。
「気にしなくともいいんだ。リリーはとても頑張った! リリーが疲れたらいつでも私が支える」
「ありがとうございます……」
ライカル様と将来を誓い合って本当に良かったと思います。
安心してしばらくの間、至近距離でライカル様の胸の鼓動を聞きながら癒されていました。
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