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第一章
18 国王陛下との会話
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デインヒール陛下の飲み物は私が継ぎました。
しかし、陛下が直接グラスを受け取り、すぐにゴクゴクと飲み始めてしまいます。
──毒見役いらっしゃらないんですか?
目を大きく開けて驚いてしまいました。
「……何かおかしなことでもしたかね?」
「いえ……この国に来てから驚くことばかりで……」
「リリーナ殿はアルガルデ出身だったな? あちらからやってきた者には皆に驚かれておるよ、はっはっは!」
とても王様とは思えないような口調と振る舞いで、尚且つ明るいのです。
私の緊張感もいつのまにかなくなり、にこりと微笑んでいました。
「とはいえ、リリーナ殿の出身国を悪くいうのはご法度かもしれぬが、前の国王陛下とは関わりたくなかったな……。新しい国王に変わったと聞いたが、果たしてどこまで国が変わるかどうか」
最近就任したアルガルデの新国王陛下は、さぞかし大変な苦労をしているかと思います。
そもそも全国王陛下は、伯爵家や公爵家に大量の国務を任せて、しかも今までミスがなかったからとはいえ完全に任せてこられたのも問題がありました。
私が提出していたものに関しては、必ず再鑑をお願いしていましたが、果たして確認していただけていたのか怪しいところですね。
今もなお、サフランお姉様に仕事が回ってきていたとして、ノーチェックで書類を通してしまったら大変なことになってしまうでしょう……。
「新国王陛下は優秀だと聞いていました。ですが、周りを取り巻く環境が悪すぎる状況らしく……」
「だろうな。私が一度あちらに訪問したときは、二度と関わらないようにしようか考えたほどだった。一層の事、王宮の人間を総入れ替えするくらいの行動をせんと変わらんだろう。いくらリーダーが有能でも部下が全員アホではどうすることもできまい」
デインヒール陛下はさらりと何でも言ってしまうようですね。
ですが、言っていることはどれも正当なので嫌な感じは全くしません。
何となくこのような発言も、私のことを気遣ってくれているようで、むしろ心に負っていた傷が癒えてしまいました。
「と言っても、私もいずれは身を引いて息子に王の座を譲ろうと思っているのだよ。この国が今後どうなるかも息子次第でな……」
何か引っかかる言い方でしたね。
陛下も苦笑いをしています。
「陛下は二人の王子どちらに継承するかずっと悩まれていましてね」
ライカル様がそう教えてくれました。
「第一王子殿下が継承するのでは?」
「うむ……だが国のことを考えればそうもいかんのだよ。かと言って簡単に次男のシンザーンに決めてしまえば、長男のダスフォールは一生恥じることになってしまうだろう」
この辺りは故郷と同じようですね。
王位継承は基本的には第一王子が継ぐようです。
ただ話を聞く限り、どうやら第一王子のダスフォール殿下に何か問題があるようですが。
「ライカル君に教育をしているほどの力を持つリリーナ殿が息子の教育もしてくれれば万事解決だとは思うがね」
「陛下! それは困ります!」
「……はっはっは、冗談だよ。ライカル君の婚約者だろう? 言われなくとも何となく察していたよ」
今のは冗談のように聞こえませんでしたが。
「ま、王位継承式はまだ先になるだろうから安心したまえ。ではライカル君、リリーナ殿、準備があるのでまたあとでな」
そう言い陛下は、王宮の中へと向かって行きました。
陛下と会話した時間は、私の中ではとても貴重な経験になり、緊張をほぐしてくれた大変有意義な時間でしたね。
また機会があればお話ししたいものです。
しかし、陛下が直接グラスを受け取り、すぐにゴクゴクと飲み始めてしまいます。
──毒見役いらっしゃらないんですか?
目を大きく開けて驚いてしまいました。
「……何かおかしなことでもしたかね?」
「いえ……この国に来てから驚くことばかりで……」
「リリーナ殿はアルガルデ出身だったな? あちらからやってきた者には皆に驚かれておるよ、はっはっは!」
とても王様とは思えないような口調と振る舞いで、尚且つ明るいのです。
私の緊張感もいつのまにかなくなり、にこりと微笑んでいました。
「とはいえ、リリーナ殿の出身国を悪くいうのはご法度かもしれぬが、前の国王陛下とは関わりたくなかったな……。新しい国王に変わったと聞いたが、果たしてどこまで国が変わるかどうか」
最近就任したアルガルデの新国王陛下は、さぞかし大変な苦労をしているかと思います。
そもそも全国王陛下は、伯爵家や公爵家に大量の国務を任せて、しかも今までミスがなかったからとはいえ完全に任せてこられたのも問題がありました。
私が提出していたものに関しては、必ず再鑑をお願いしていましたが、果たして確認していただけていたのか怪しいところですね。
今もなお、サフランお姉様に仕事が回ってきていたとして、ノーチェックで書類を通してしまったら大変なことになってしまうでしょう……。
「新国王陛下は優秀だと聞いていました。ですが、周りを取り巻く環境が悪すぎる状況らしく……」
「だろうな。私が一度あちらに訪問したときは、二度と関わらないようにしようか考えたほどだった。一層の事、王宮の人間を総入れ替えするくらいの行動をせんと変わらんだろう。いくらリーダーが有能でも部下が全員アホではどうすることもできまい」
デインヒール陛下はさらりと何でも言ってしまうようですね。
ですが、言っていることはどれも正当なので嫌な感じは全くしません。
何となくこのような発言も、私のことを気遣ってくれているようで、むしろ心に負っていた傷が癒えてしまいました。
「と言っても、私もいずれは身を引いて息子に王の座を譲ろうと思っているのだよ。この国が今後どうなるかも息子次第でな……」
何か引っかかる言い方でしたね。
陛下も苦笑いをしています。
「陛下は二人の王子どちらに継承するかずっと悩まれていましてね」
ライカル様がそう教えてくれました。
「第一王子殿下が継承するのでは?」
「うむ……だが国のことを考えればそうもいかんのだよ。かと言って簡単に次男のシンザーンに決めてしまえば、長男のダスフォールは一生恥じることになってしまうだろう」
この辺りは故郷と同じようですね。
王位継承は基本的には第一王子が継ぐようです。
ただ話を聞く限り、どうやら第一王子のダスフォール殿下に何か問題があるようですが。
「ライカル君に教育をしているほどの力を持つリリーナ殿が息子の教育もしてくれれば万事解決だとは思うがね」
「陛下! それは困ります!」
「……はっはっは、冗談だよ。ライカル君の婚約者だろう? 言われなくとも何となく察していたよ」
今のは冗談のように聞こえませんでしたが。
「ま、王位継承式はまだ先になるだろうから安心したまえ。ではライカル君、リリーナ殿、準備があるのでまたあとでな」
そう言い陛下は、王宮の中へと向かって行きました。
陛下と会話した時間は、私の中ではとても貴重な経験になり、緊張をほぐしてくれた大変有意義な時間でしたね。
また機会があればお話ししたいものです。
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