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第一章

6 待遇が良すぎる

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「おそらくあの国では私のような立場の人たちが他にもいるかと思います。ごく稀に出席した社交界やパーティーでも同じような境遇の方とお話ししたこともありますから」

 とは言っても、私の場合は異例でしょう。ここまで酷い仕打ちを受けているわけではないですし、長男長女を最優先しているくらいだとは思います。これはあちらの国の貴族家では不思議ではないことですが。
 ただ、エスカレートして私みたいな境遇になってしまった方も中にはいたような気がします。

「伯爵家でこのような騒動があったことが国中に公表されれば、同じような境遇になっている方達も少しは変わっていくのではないかと……。そう思い婚約破棄され、お姉様に婚約相手を奪われ、尚且つ家から追放される今の状態まで耐えてきました。任せきりで申し訳ないのですが、ルルガムさんが今頃動いてます」

「他の貴族の子を考え耐えてきた……か。噂どおり、いやそれ以上だ」
「リリーナさん、あなたは自らを犠牲にしすぎです。今まで頑張ってきた行い、我々も協力致しましょう!」

 これほど心強い味方はなかなかいないでしょう。ですが、国を相手にするわけですから、軽々とお願いしますとは言えませんね。
「いえ、そんなご迷惑になるようなことは……聞いていただけただけでも嬉しかったですし。それに明日にでもこちらの国で仕事を探そうかと思ってます」

 現状、私は平民です。公爵様の家でご迷惑をかけるわけにもいきません。
 明日にでもオーブルジェの住民になる手続きを行い、自立していけるように動くべきです。

「聞くところによると、リリーナ嬢はとても高度な知識と仕事ができると聞いているが……」
「元婚約者のもとで散々国務を任せられていましたし、お姉様の仕事もやっていましたからそれなりには……」

「ふむ。ならばしばらくの間、息子ライカルの勉強を見てやってはくれないか? その間はここに住むが良い。リリーナ嬢専用の部屋も与えよう」

 聞いた瞬間に私の顔が真っ赤になってしまったようです。
 これほどの美形のライカル様のお相手をすると考えたらドキドキしてしまいました。

 とは言っても、初対面にもかかわらず公爵家に仕えるようなことをしていいのかというのは疑問です。

「いいのでしょうか? 私などがそのような特別扱いをされてしまって……」
「ライカルよ、お前はどう思う?」
「もちろん歓迎です。私としても、もう少しリリーナさんとお話がしたいですし、まだまだ未熟な私にとって、厳しい教育とご指導が必要なのです」
 ライカル様がとても喜んでいるように笑顔になっています。
 この顔を見ただけで、とても断れるような状況ではありません。

「ありがとうございます。では、私はライカル様のメイドとして働かさせてい──」
「まぁまぁ、そう畏ることもあるまい。しばらくライカルと話をしながら、国務の不足部分を指導し補ってくれれば良い。無論見合った謝礼も払う」

 住む場所までいただける上に謝礼など至尽せりすぎですね……。

「これからよろしく頼みます。リリーナさん」
「は……はい! よろしくお願い致します!」

 移民に関しても簡単に受け入れてくれる国のようで、翌日には手続きを済ませてオーブルジェ王国の住民になりました。
 正式に公爵様の家でライカル様との生活が始まります。
 緊張のしすぎで、ほとんど眠れませんでしたが……。


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