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第一章
1 婚約破棄
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「リリーナ、俺はお前の姉と結婚することにした。だからお前との婚約は取り消しにさせろ」
婚約者のザグローム様が命令口調で怒鳴ってきました。
公爵家のご子息ともあろうお方がこのような態度で、毎度のこと呆れてしまいます。
しかし私リリーナは、婚約破棄だと言い渡されることを待っていました。
嬉しい表情は出さないようにして、ザグローム様の発言に合わせます。
「いきなり何故そのようなことを言うのでしょう? サフランお姉様がザグローム様に近づいていたことは知っていますが、簡単に乗り換えるのですか?」
「乗り換えるわけではない。俺は政略結婚ならばその家の長女にするべきだと思っていた。だが、サフランは既に別の人間と婚約が決まっていた……」
私とザグローム様の婚約は、新しく就任した国王陛下からの推薦だと聞いていました。
理由も実家の執事から聞かされていましたが、傲慢な性格と思われてしまうので理由は控えておきます。
たとえお姉様に婚約者がいなかったとしても、陛下は私を推奨していたのではないかと……。
「そもそも俺は我慢して次女であるリリーナと婚約をしたんだぞ。だが、姉のサフランは最近婚約破棄をしたそうじゃないか。ならば俺は本命に乗り換える! 筋も通っているし、当然のことだろう」
結局乗り換えるんですね。
悪気すら持っていないような態度をしていますが、日常的なので慣れました。
尚、公爵家からだけでなく、家族からも私のことはゴミ扱いです。
婚約を奪ったサフランお姉様も非常識の上、私を奴隷のように扱ってきていたのでそろそろ限界でした。
「念のためにお伺いしますが、私たちの婚約を推奨してくださった国王陛下は知ってのことですか?」
「はぁ? 陛下に言う必要もない。ですよね父上」
今まで黙っていた公爵様は、私を嘲笑いながら口を開きました。
「貴様ら伯爵家に目をつけて推奨してきたに決まっている。本人もそうだが、兄上のご子息は皆婚約が決まっておられた。だから我が家に伯爵家との婚約を推奨してくださったのだろう。つまり、息子の言うとおり、伯爵家の長女がフリーになったのなら乗り換えて当然だ」
やはり公爵様であるドルドック様も同意見でした。
このような二人ですが、公の場では猫を被っているので、人気も高いです。
婚約が決まり何度か公爵家に行くようになり、ようやく彼らの本性に気がつきましたが、すでに遅かったのです。
しかしサフランお姉様が、私の婚約者であるザグローム様を狙っているであろうと気がついたときから、こうなると予想していました。
ようやく私は地獄から解放されるかと思うと、満面の笑みを隠すことが困難になってきます。
「わ……わかりました」
「ふむ、素直でよろしい! 当然だが慰謝料はないぞ。貴様の家にとっては長女の結婚となるのだからな」
家にいるときの公爵様は常識も通用しないようです。
「父上、違うでしょう。むしろリリーナから慰謝料を請求するべきかと。今までどれだけこの女に金を費やしたことか……」
プレゼントも婚約指輪も貰っていませんし、お茶や紅茶を飲ませていただいたくらいですが……。
「ふむ、だがそこまですると変な噂が広まってしまう。婚約の乗り換えは兄上の考えを考慮すれば当然のことだから問題はないんだがな」
問題大有りかと思いますが、あえて黙っておきます。
やはり国王陛下が、何故私と婚約を推奨したのかわかっていないようです。
おそらくサフランお姉様がここに嫁いだら、彼らはいずれわかるかと思います。
これ以上ここにいても仕方がないので、私はさっさと退散することにしました。
「サフランお姉様とお幸せになってください」
「ふんっ! そんな綺麗事を言ってもお前が怒り狂っているのはわかっているぞ。どんなにおだてようともお前自体には今後何の援助もしないからな」
え? 怒り狂っていませんよ?
むしろ大喜びですからね。
婚約者のザグローム様が命令口調で怒鳴ってきました。
公爵家のご子息ともあろうお方がこのような態度で、毎度のこと呆れてしまいます。
しかし私リリーナは、婚約破棄だと言い渡されることを待っていました。
嬉しい表情は出さないようにして、ザグローム様の発言に合わせます。
「いきなり何故そのようなことを言うのでしょう? サフランお姉様がザグローム様に近づいていたことは知っていますが、簡単に乗り換えるのですか?」
「乗り換えるわけではない。俺は政略結婚ならばその家の長女にするべきだと思っていた。だが、サフランは既に別の人間と婚約が決まっていた……」
私とザグローム様の婚約は、新しく就任した国王陛下からの推薦だと聞いていました。
理由も実家の執事から聞かされていましたが、傲慢な性格と思われてしまうので理由は控えておきます。
たとえお姉様に婚約者がいなかったとしても、陛下は私を推奨していたのではないかと……。
「そもそも俺は我慢して次女であるリリーナと婚約をしたんだぞ。だが、姉のサフランは最近婚約破棄をしたそうじゃないか。ならば俺は本命に乗り換える! 筋も通っているし、当然のことだろう」
結局乗り換えるんですね。
悪気すら持っていないような態度をしていますが、日常的なので慣れました。
尚、公爵家からだけでなく、家族からも私のことはゴミ扱いです。
婚約を奪ったサフランお姉様も非常識の上、私を奴隷のように扱ってきていたのでそろそろ限界でした。
「念のためにお伺いしますが、私たちの婚約を推奨してくださった国王陛下は知ってのことですか?」
「はぁ? 陛下に言う必要もない。ですよね父上」
今まで黙っていた公爵様は、私を嘲笑いながら口を開きました。
「貴様ら伯爵家に目をつけて推奨してきたに決まっている。本人もそうだが、兄上のご子息は皆婚約が決まっておられた。だから我が家に伯爵家との婚約を推奨してくださったのだろう。つまり、息子の言うとおり、伯爵家の長女がフリーになったのなら乗り換えて当然だ」
やはり公爵様であるドルドック様も同意見でした。
このような二人ですが、公の場では猫を被っているので、人気も高いです。
婚約が決まり何度か公爵家に行くようになり、ようやく彼らの本性に気がつきましたが、すでに遅かったのです。
しかしサフランお姉様が、私の婚約者であるザグローム様を狙っているであろうと気がついたときから、こうなると予想していました。
ようやく私は地獄から解放されるかと思うと、満面の笑みを隠すことが困難になってきます。
「わ……わかりました」
「ふむ、素直でよろしい! 当然だが慰謝料はないぞ。貴様の家にとっては長女の結婚となるのだからな」
家にいるときの公爵様は常識も通用しないようです。
「父上、違うでしょう。むしろリリーナから慰謝料を請求するべきかと。今までどれだけこの女に金を費やしたことか……」
プレゼントも婚約指輪も貰っていませんし、お茶や紅茶を飲ませていただいたくらいですが……。
「ふむ、だがそこまですると変な噂が広まってしまう。婚約の乗り換えは兄上の考えを考慮すれば当然のことだから問題はないんだがな」
問題大有りかと思いますが、あえて黙っておきます。
やはり国王陛下が、何故私と婚約を推奨したのかわかっていないようです。
おそらくサフランお姉様がここに嫁いだら、彼らはいずれわかるかと思います。
これ以上ここにいても仕方がないので、私はさっさと退散することにしました。
「サフランお姉様とお幸せになってください」
「ふんっ! そんな綺麗事を言ってもお前が怒り狂っているのはわかっているぞ。どんなにおだてようともお前自体には今後何の援助もしないからな」
え? 怒り狂っていませんよ?
むしろ大喜びですからね。
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