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26話 フィアラは新たな使用人たちに興味をもつ
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「今日から使用人を雇うわけだが、ひとつだけ問題がでてしまった」
「問題ですか?」
私一人で侯爵邸全てを管理するのは無理があった。
ただ、侯爵様たちからは全部やらずとも良いと言われていた。
もちろん手抜きなどはしないが、それでも使用人として働く時間の限りでやれるところまではやった。
一緒に手伝ってくれる人が増えたら、もっと色々なところを掃除したりできるようになる。
私はこの日を楽しみにしていたのだ。
ところで、どんな問題あるのだろうか……。
変な人が来てしまうとか。
「それがだな……。最初は一人ずつ増やしていくつもりだったが、急遽いきなり二人になったのだ」
侯爵様が申し訳なさそうな顔をしていた。
侯爵様は新人教育する際、『最初の数日は、ミスもあるだろうし、上司がすぐに気がつけるよう新人に付きっきりで教えたほうが良い』と何度も言っていて、実際に王宮ではそのようにしてきたらしい。
私も最初はジェガルトさんや侯爵様からは、ガルディック侯爵邸の使用人としての仕事を付きっきりで教えてくれた。
おかげで、スムーズに覚えることができたのだ。
「無論、できるかぎりではあるがジェガルトも指導してくれることになっている。ただそれでもまたしてもフィアラ殿の負担が増えてしまうわけで」
「でも、急遽ということはなにかしら理由があるのでしょう?」
「あぁ、そうなのだよ。実は理不尽な扱いを受けてしまい逃げ出してしまったという新米使用人の噂を聞いてしまってね……」
「理不尽な扱い?」
「私も詳しくは知らないのだよ。無論、試しにここで働いてもらってから今後雇うかどうかは判断するつもりだ。もしもその者が露頭に迷ってしまってはあまりにも残酷だと思ったからね……」
「侯爵様はお優しいのですね」
私も侯爵様たちによって助けられた。
その人がどんな扱いを受けてしまったのかはわからないし、実際に理不尽な扱いで逃げたのかどうかも、現状でははっきりとはわからない。
だが、曖昧な状況でも侯爵様がすぐに行動して連れてこようとしてくれているのだから、私も二人同時に教えていけるように頑張りたい。
侯爵様の優しい気持ちに触れ、私のやる気はさらに上がった。
いったいどんな使用人が来るのだろう……。
♢
「本日よりお世話になりますミアと申します。よろしくお願いいたします」
「えぇと……、コトネと申します。不束者な私を拾ってくださり、ありがとうございます。一生懸命やっていきたいです!」
ミアさんもコトネさんも共通して私と同い年くらいのようだ。
コトネさんのほうは少し緊張しているようで、オドオドとした素振りを見せてくる。
「ミアは元々使用人経験は豊富で、新たな配属先を考えていたところを私がスカウトしたのだよ」
「主人様、執事長様。どうぞよろしくお願いいたします」
「コトネは初めての使用人経験で散々な目にあったようだ。この家ではそのようなことが起こらないから安心したまえ」
「全力で頑張ります! 色々と迷惑をかけてしまうかもしれませんが……」
どうやらコトネさんは激しく緊張しているようだ。
私はコトネさんに向かって笑顔を見せてさっそく一つだけ言いたいことを言っておく。
「最初は迷惑かけて当然ですよ。失敗しても構いません。そこから失敗しないよう学んでくだされば」
「は、はい! 一生懸命やってみます!!」
コトネさんのやる気がものすごく伝わってくる。
教える側としても楽しみだ。
ところで、こんなに良い子そうなコトネさんをひどい目に遭わせてきた家ってどこなんだろう。
第一印象だけなんだけど、悪い雰囲気が全くないし、コトネさんに非があるとは全く思えない。
だとすれば……、あまり酷いことを考えたくはないんだけど……、前の雇ってた人の見る目がなかったのかな。
「問題ですか?」
私一人で侯爵邸全てを管理するのは無理があった。
ただ、侯爵様たちからは全部やらずとも良いと言われていた。
もちろん手抜きなどはしないが、それでも使用人として働く時間の限りでやれるところまではやった。
一緒に手伝ってくれる人が増えたら、もっと色々なところを掃除したりできるようになる。
私はこの日を楽しみにしていたのだ。
ところで、どんな問題あるのだろうか……。
変な人が来てしまうとか。
「それがだな……。最初は一人ずつ増やしていくつもりだったが、急遽いきなり二人になったのだ」
侯爵様が申し訳なさそうな顔をしていた。
侯爵様は新人教育する際、『最初の数日は、ミスもあるだろうし、上司がすぐに気がつけるよう新人に付きっきりで教えたほうが良い』と何度も言っていて、実際に王宮ではそのようにしてきたらしい。
私も最初はジェガルトさんや侯爵様からは、ガルディック侯爵邸の使用人としての仕事を付きっきりで教えてくれた。
おかげで、スムーズに覚えることができたのだ。
「無論、できるかぎりではあるがジェガルトも指導してくれることになっている。ただそれでもまたしてもフィアラ殿の負担が増えてしまうわけで」
「でも、急遽ということはなにかしら理由があるのでしょう?」
「あぁ、そうなのだよ。実は理不尽な扱いを受けてしまい逃げ出してしまったという新米使用人の噂を聞いてしまってね……」
「理不尽な扱い?」
「私も詳しくは知らないのだよ。無論、試しにここで働いてもらってから今後雇うかどうかは判断するつもりだ。もしもその者が露頭に迷ってしまってはあまりにも残酷だと思ったからね……」
「侯爵様はお優しいのですね」
私も侯爵様たちによって助けられた。
その人がどんな扱いを受けてしまったのかはわからないし、実際に理不尽な扱いで逃げたのかどうかも、現状でははっきりとはわからない。
だが、曖昧な状況でも侯爵様がすぐに行動して連れてこようとしてくれているのだから、私も二人同時に教えていけるように頑張りたい。
侯爵様の優しい気持ちに触れ、私のやる気はさらに上がった。
いったいどんな使用人が来るのだろう……。
♢
「本日よりお世話になりますミアと申します。よろしくお願いいたします」
「えぇと……、コトネと申します。不束者な私を拾ってくださり、ありがとうございます。一生懸命やっていきたいです!」
ミアさんもコトネさんも共通して私と同い年くらいのようだ。
コトネさんのほうは少し緊張しているようで、オドオドとした素振りを見せてくる。
「ミアは元々使用人経験は豊富で、新たな配属先を考えていたところを私がスカウトしたのだよ」
「主人様、執事長様。どうぞよろしくお願いいたします」
「コトネは初めての使用人経験で散々な目にあったようだ。この家ではそのようなことが起こらないから安心したまえ」
「全力で頑張ります! 色々と迷惑をかけてしまうかもしれませんが……」
どうやらコトネさんは激しく緊張しているようだ。
私はコトネさんに向かって笑顔を見せてさっそく一つだけ言いたいことを言っておく。
「最初は迷惑かけて当然ですよ。失敗しても構いません。そこから失敗しないよう学んでくだされば」
「は、はい! 一生懸命やってみます!!」
コトネさんのやる気がものすごく伝わってくる。
教える側としても楽しみだ。
ところで、こんなに良い子そうなコトネさんをひどい目に遭わせてきた家ってどこなんだろう。
第一印象だけなんだけど、悪い雰囲気が全くないし、コトネさんに非があるとは全く思えない。
だとすれば……、あまり酷いことを考えたくはないんだけど……、前の雇ってた人の見る目がなかったのかな。
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