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ルリナはお茶会でリベンジする
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「緊張する必要はありませんよ。今のルリナ様なら他のご令嬢様にも遅れを取りませんから」
「ありがとうツバキ。行ってくるね」
お茶会。
前回と同じようにテーブルにはたくさんのご馳走やお菓子、飲み物が用意されている。
今までの私だったら、食べ物の誘惑に負けて見境なく全て手掴みで食べていただろう。
だが、ニルからフォークやナイフの使いかたを習った。
今なら行儀良く食べることができるはずだ。
自信を持って、貴族令嬢が集まっている近くまで移動した。
すると最初に目に入ったのは、前回のお茶会で最初私に声をかけてきた女の子だった。
すぐに目線が合い、彼女も私に気がついたらしい。
彼女は驚きながらも私のほうへ近づいてきた。
「たしかあなたはルリナ元公爵令嬢では?」
「覚えてくださりありがとうございます。今は公爵令嬢でもなんでもありません、家名もないただのルリナです」
私は両手でドレスを軽く握ったままお辞儀をした。
すると、彼女はさらに驚きながらも同じように挨拶をしてきた。
「ふふ……。ご挨拶が遅れました。ディラップ伯爵が娘、マーレット=ディラップと申します」
マーレットさんはニコリと微笑みながら手を差し伸べてくれた。
私も喜んで飛び跳ねそうになる気持ちを抑え、冷静な態度で彼女と握手を交わした。
「噂ではルリナ様は貴族界からも追放されたと聞きましたが、そうではなかったのですね」
「いえ、追放はされてしまいましたが、とあるお方に助けていただいたのです。おかげで今こうしてお茶会に参加させていただいているのです」
「そうだったのですね。先日のお茶会では失礼なことを言ってしまい申し訳ありませんでした」
マーレットさんは深々と頭を下げてきた。
こちらの様子を見て他の令嬢たちが慌てた様子でこちらに走ってきた。
「マーレット様! いったいなにをしているのですか!?」
「たしかそのかたは見覚えが……。追放されて庶民になったはず!」
「そのような人間になぜ頭を下げているのですか?」
マーレットさんは体勢をもとに戻し、令嬢たちにニコリと微笑んだ。
「身嗜みを見てもわかるでしょう。彼女は大きく変わられたのです。話してみてそれがハッキリとわかりました」
「しかし……、あくまで庶民では……?」
「庶民だろうと貴族だろうと、ここにいる以上関係ありません。あなた方も彼女と話してみればわかることでしょう」
マーレットさんのおかげで、令嬢たちと話せるキッカケを与えてくれた。
私は教わったとおりにしっかりとした挨拶を彼女たちにした。
すると……。
「以前はバカにしてしまって申し訳ありません」
「ルリナ様は前回の行動は演技だったのですか?」
「噂に聞いていたルリナ様とは大違いですね」
なんだか話していてとても楽しい。
こんなに大勢の人と会話をするなんて初めてだから、なにを話せば良いのかわからないものの、居心地がとても良い。
「ありがとうございます。マーレットさんのおかげで、こんなに大勢の人たちとご挨拶ができて嬉しいです」
「ふふ……。ルリナ様はどうか私のことはマーレットとお呼びください」
「でも今の私は貴族ではありませんよ。伯爵家のご令嬢ともあろうおかたを呼び捨てなど……」
「これだけの嗜みがあれば追放されることもないでしょう。再び公爵令嬢として立派にやっていかれると思いますから」
それはそれで勘弁してほしい。
私はもう、公爵家に戻りたくはないのだから。
それに、公爵様は私が聖女でないこととシャインを長女にしたいという理由で追放したのだ。
私がどんなに変わろうとも公爵令嬢に逆戻りすることはないだろう。
「おそらく戻ることはないかと……」
「公爵様は寛大なおかたですよ。それに今のルリナ様を見れば誰もが認めるはずです。ルリナ様も必死にお勉強されていたのですね」
マーレットは、ところどころ勘違いをしているようだ。
よほど公爵様のことを信頼しているからなのだろう。
私がなにを言っても無意味だろうから、これ以上のことは言わないでおこう。
だが、このタイミングであまり会いたくなかった人と再会してしまったのだ。
「ル……ルリナ……オネエサマ?」
シャインが幽霊でも見ているかのような目で私にそう言ってきた。
「ありがとうツバキ。行ってくるね」
お茶会。
前回と同じようにテーブルにはたくさんのご馳走やお菓子、飲み物が用意されている。
今までの私だったら、食べ物の誘惑に負けて見境なく全て手掴みで食べていただろう。
だが、ニルからフォークやナイフの使いかたを習った。
今なら行儀良く食べることができるはずだ。
自信を持って、貴族令嬢が集まっている近くまで移動した。
すると最初に目に入ったのは、前回のお茶会で最初私に声をかけてきた女の子だった。
すぐに目線が合い、彼女も私に気がついたらしい。
彼女は驚きながらも私のほうへ近づいてきた。
「たしかあなたはルリナ元公爵令嬢では?」
「覚えてくださりありがとうございます。今は公爵令嬢でもなんでもありません、家名もないただのルリナです」
私は両手でドレスを軽く握ったままお辞儀をした。
すると、彼女はさらに驚きながらも同じように挨拶をしてきた。
「ふふ……。ご挨拶が遅れました。ディラップ伯爵が娘、マーレット=ディラップと申します」
マーレットさんはニコリと微笑みながら手を差し伸べてくれた。
私も喜んで飛び跳ねそうになる気持ちを抑え、冷静な態度で彼女と握手を交わした。
「噂ではルリナ様は貴族界からも追放されたと聞きましたが、そうではなかったのですね」
「いえ、追放はされてしまいましたが、とあるお方に助けていただいたのです。おかげで今こうしてお茶会に参加させていただいているのです」
「そうだったのですね。先日のお茶会では失礼なことを言ってしまい申し訳ありませんでした」
マーレットさんは深々と頭を下げてきた。
こちらの様子を見て他の令嬢たちが慌てた様子でこちらに走ってきた。
「マーレット様! いったいなにをしているのですか!?」
「たしかそのかたは見覚えが……。追放されて庶民になったはず!」
「そのような人間になぜ頭を下げているのですか?」
マーレットさんは体勢をもとに戻し、令嬢たちにニコリと微笑んだ。
「身嗜みを見てもわかるでしょう。彼女は大きく変わられたのです。話してみてそれがハッキリとわかりました」
「しかし……、あくまで庶民では……?」
「庶民だろうと貴族だろうと、ここにいる以上関係ありません。あなた方も彼女と話してみればわかることでしょう」
マーレットさんのおかげで、令嬢たちと話せるキッカケを与えてくれた。
私は教わったとおりにしっかりとした挨拶を彼女たちにした。
すると……。
「以前はバカにしてしまって申し訳ありません」
「ルリナ様は前回の行動は演技だったのですか?」
「噂に聞いていたルリナ様とは大違いですね」
なんだか話していてとても楽しい。
こんなに大勢の人と会話をするなんて初めてだから、なにを話せば良いのかわからないものの、居心地がとても良い。
「ありがとうございます。マーレットさんのおかげで、こんなに大勢の人たちとご挨拶ができて嬉しいです」
「ふふ……。ルリナ様はどうか私のことはマーレットとお呼びください」
「でも今の私は貴族ではありませんよ。伯爵家のご令嬢ともあろうおかたを呼び捨てなど……」
「これだけの嗜みがあれば追放されることもないでしょう。再び公爵令嬢として立派にやっていかれると思いますから」
それはそれで勘弁してほしい。
私はもう、公爵家に戻りたくはないのだから。
それに、公爵様は私が聖女でないこととシャインを長女にしたいという理由で追放したのだ。
私がどんなに変わろうとも公爵令嬢に逆戻りすることはないだろう。
「おそらく戻ることはないかと……」
「公爵様は寛大なおかたですよ。それに今のルリナ様を見れば誰もが認めるはずです。ルリナ様も必死にお勉強されていたのですね」
マーレットは、ところどころ勘違いをしているようだ。
よほど公爵様のことを信頼しているからなのだろう。
私がなにを言っても無意味だろうから、これ以上のことは言わないでおこう。
だが、このタイミングであまり会いたくなかった人と再会してしまったのだ。
「ル……ルリナ……オネエサマ?」
シャインが幽霊でも見ているかのような目で私にそう言ってきた。
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