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第三章

素材の有効活用

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「でも、レイスが退治してくれたわよ。ドラゴンの素材もレイスのマジックボックスにばっちり入ってるし」
「ちょっと待て。フィリムの石化魔眼がなければ対峙はできなかったぞ」
「でも、私は足止めをしただけで、ほとんどレイスの魔眼で倒したようなもんでしょ」
「どちらにしても倒したのか⁉︎」
「見てみるか?」

 倒したドラゴンをマジックボックスから取り出した。
 すると、ヨハネスだけでなく、ジェンも目をまんまるくしながら固まってしまった。

「私も初めて見たぞ……。これが噂で聞くドラゴンか。よく二人だけで倒せたものだな」
「レイスの魔眼が凄かったのよね」
「いや、あれはほぼハメ技だ」

 上空に転移させて本体ごと落とすだけだったし、クレアが知ったら呆れるだろう。
 だが、そうでもしないと被害が甚大になるかもしれなかったから仕方のないことだった。
 いずれ正攻法で倒せるようになれればいいのだが。
 俺は冒険者でもあるがそちらに特化しているわけではない。
 今後もドラゴンのような化け物が相手だとしたら魔眼を駆使して挑むしかないだろう。

「ドラゴンの素材は全てにおいて貴重だ。骨や爪は強力な武器や盾を作る素材になるし、肉は極上級に美味いらしく市場で取引など滅多にされていない。どうするつもりだ?」
「とりあえずマジックボックスにしまっておくよ。俺の魔眼で作ったマジックボックスにしまっておけば腐ったり劣化の心配はいらないし」
「相変わらずレイスの魔眼は規格外よね……。王宮の保存食や仕入れた食材も保存しているんでしょ?」
「あぁ。料理長に頼まれてな。今は必要な食材以外は全てマジックボックスの中だ」

 無限というわけではないが、俺のマジックボックスにしまえる容量が依然と比べても増えた。
 魔眼の力が前よりも強くなってきたのかもしれない。
 ジェンの魔眼も、今が発展途上だとしたら、いずれは治癒も一瞬で治せるようになれる可能性はある。
 これがどれだけ貴重な力なのか、本人はまだ気がついていないようだ。

「ここにいましたか。クレア、ただいま帰還致しました!」
「随分と早かったな」

 クレアの後ろにはいかにも強そうな男が何人もいた。
 そのうちの一人は女性だ。

「彼らを騎士団に迎え入れようと思います」
「ふむ……」

 ヨハネスはこっそりと心眼鑑定をしているようだ。
 騎士団候補一人一人をじっと見つけて確かめている。
 やがて、ヨハネスはニコリと微笑み首を縦に振った。

「承知した。新たな国家再生に力を貸してほしい」

「「「「「はい!」」」」」
「「「「「よろしくお願いします‼︎」」」」」

 新たな騎士団は、綺麗に規律の姿勢をとってヨハネスに忠誠を誓っていた。

「それで陛下、一つお願いが」
「クレアの頼みならば可能な限りは叶える。申してくれ」
「彼らに新たな剣と盾を進呈したいと思っております」

 よく見てみると、彼らの装備している盾は錆びつき、剣のケースもボロボロだ。
 ヨハネスも、そのことに気がついたらしい。

「ふむ……、では鍛冶師に新品を用意させよう」
「ありがとうございます!」
「どうせ作るならドラゴンの素材使っていいよ」
「「「「「は⁉︎」」」」」

 ここにいる全員が唖然とした表情をしていた。
 別に驚くようなことを言った覚えはないのだが……。

「俺の取り分のドラゴンの骨と爪使ってくれて構わない。どうせ俺には使い道もなかったし」
「ちょっとまてレイスよ! ドラゴンの骨や爪は国宝級に貴重なものだ! 取引するにしても一国の富豪者ですら手を出すのを躊躇うほどの金が必要だ」
「とは言っても、俺には使い道もないしな……。それに俺たちは協力関係で国を変えていくんだろ? クレアの騎士団が使ってくれるなら歓迎だ」

 物の価値なんて人それぞれだ。
 確かに貴重品なのかもしれないが、俺がマジックボックスに永遠と収納しているよりも何かに使われた方が良いにきまっている。
 それに、金目的だったら、別のモンスターを討伐すればいいだけのことだ。
 俺はドラゴンの爪と骨の部分の一部を取り出し、さっさとヨハネスに渡した。

「これがドラゴンの素材か。見た目に反して信じられんほど軽い。その上に頑丈だな。これは鍛冶師に見せたら腰を抜かすかもしれんぞ」
「お、俺たちのためにこんな貴重な素材まで提供してくださるなんて……ありがとうございます! 絶対に国に恥じぬ騎士になります!」

 思わぬところでドラゴンの素材が役に立ってよかった。
 俺は軽い気持ちでそう思っていただけだったのだ。
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