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第二章

(前編)壇上と国王

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 次期国王の挨拶の時間になっても壇上に現れないヨハネスに対して民衆は不安になっていた。

「どうなっているんだ、次期国王は何故お姿を見せない」
「どうせ怖気付いて逃げたのよ、魔眼王子なんてそんなもんよ」
「そうだ、あんな王子など無視し他の王子が壇上に立てばいいのだ」

 壇上の横で民衆の声を聞いていたフリザス王子は苛立っていた。

「ったく、少し遅くなった程度でビービーうるせぇ連中だ。かっかっか、俺様が永久に喋れなくなるまで全員黙らせてやろうか……」

 フリザス王子が拳をバキバキバキバキと鳴らし始めた時にダイン第一王子が壇上前に現れた。

「かっかっか、ダインか。まさか壇上に上がろうとでもいうのか?」
「フッ……相変わらず口の利き方がなっていないなフリザスよ……。私は今から──」
「うむ。少々遅れたが騒ぎまではいかなかったようだな」
 魔眼の瞬間移動で俺とヨハネスとガブネス王子が帰還した。
 ヨハネスが一言呟いてそのまま壇上へ登ろうとしていた。

「待てダイン。そこで喋るのは俺の役目だろう?」
「フッ……相変わらず運の良い弟だな」

 ダイン王子はヨハネスの道を空けて、ヨハネスは、縛られているガブネス王子を連れて壇上に上がっていった。

 ♢

「皆の者、大事な挨拶に遅れてすまなかった。私がヨハネス=フォン=ディラストだ」

 ヨハネスの挨拶の際にロープで縛られているガブネス王子に民衆は注目しているようだった。

「あれはガブネス第二王子!」
「なぜあのようなお姿を!?」
「まさかヨハネス王子があのような目に遭わせたのか!?」

 ガブネス派の民衆が騒ぎ始めたが、すぐにヨハネスの説明が始まった。

「以前ディラスト王国にアーロン皇国が攻めようとしてきた事件があったのを覚えているであろう。その黒幕がこのガブネス第二王子であることが分かったのだ。私はこの者の配下に捕まり証拠を集めていたのだ。だが、流石に一人で脱出が困難になっていたところを私の配下のレイス君、フィリム公爵令嬢、剣聖クレアが救出してくれたのだ」
「フッ……嘘をつくかヨハネスよ。脱出が困難なのではなく、わざと脱出しないでレイス達を待っていたのだろう」

 俺の近くでボソッと呟きながらダイン王子は不気味な笑いをしていた。

「結論を先に言おう。ガブネス第二王子が戦争を起こすようにアーロン皇国に依頼をし、戦争の茶番を行った。ガブネス王子が戦争の勝利をしたように見せかけて手柄を立てようとしていた。更にガブネス王子の手下は全員同志を組み、私たちを殺そうと企んでいたのだ」

「かっかっか。どうりであの兵士どもは話にならんカスどもだったわけだ……ガブネスめ、俺様を失望させた罪は重いぞ!!」
「フッ……無能王子の考えそうな情けない計画だ……」

 ダイン王子もフリザス王子も呆れ果てているように見えた。
 ヨハネスの発言が終わり、民衆は騒ぎ始めた。

「嘘をつくなヨハネス王子! 醜い魔眼で何かしたんだろう!」
「きっとそうだ! ガブネス様が不正を見抜いて返り討ちにあったに決まっている!!」
「ヨハネス王子は国王の資格などない!!」

 ほんの一部の民衆は黙っているだけだが、殆どがヨハネスを敵対しているように見えた。

「本人の口からも聞いてもらったほうが良いのか。では……」
 ヨハネスは縛っていたガブネス王子のロープを口元の部分だけ解いた。

「み……皆の者……ボクはヨハネス王子の不正を暴いて捕まえようとしていたんだネ。でも卑怯な手口で捕まっちゃっただけなんだネ……」
 必死の言い訳で俺は呆れてしまった。
 近くにいるダイン王子やフリザス王子まで呆れ果てているように見える。

「私の口からでは信用が出来ないと言うのだな。ならばこれを公開しよう」

 ヨハネスが取り出した魔道具によって民衆は黙り込むのだった。
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