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第一章

弱味と孤児院

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「やはりダメだった……フィリム姫、レイス殿、ご迷惑をおかけした」

 ギルドの職員達の態度もクレアに対する理不尽なところもただ事ではない。

「ギルドの職員は何度も言わせるなって言ってましたよね。何か弱みを握られているとか?」
「あぁ……。実は、私が物心がついた頃から孤児院で育って、その孤児院にギルドガブリエルは出資をしているのだ」

 しかしその金額は孤児院をまかなえるほどの金額ではなかった。

「私のギルド報酬も、孤児院への寄付に回す契約をしていて、取り分が気がつけば殆どなくなってしまった……」

 クレアの受ける任務の難易度から、本来の報酬だったら家一軒買えるはずの金額が、犬小屋一軒買う程度の報酬しか貰えないこともあったとか。
 しかも、寄付の名目のはずが、横領されてギルドの上層部や王都の大臣に流れていると噂されている。

「だから、何度もギルドを辞めると言ったのだが、孤児院がどうなってもいいのかと脅迫されてしまい……なかなか抜け出せずにいたのだ……」

 孤児院を盾に取られると、クレアは何も出来ないという。仕方なく今までギルドの任務を行っていたと言うのだ。少ない報酬で。

「フィリム、これってギルドを管理している王都の連中に問題があるんじゃないのか?」
「おそらく。ギルドのやり方にも問題があることは間違いないわ。国の監査をいれればボロは出るけれど、同時に困る大臣たちもいるでしょうね。そいつらが邪魔をしてくる。だからあんなに強気でいられたのね」

 ヨハネスはおそらくギルドのことは知っていたんだ。ヨハネスは今は王子だから、ギルドに直接行って抗議しても大臣達に邪魔され分が悪くなる。俺たちだったら、個人で抗議した程度で済み、現場を徹底的に調べる事をにらんで。
 俺たちがクレアを救出して尚且つ現場で調査をしてどうすれば問題が解決するかが課題か。

「つくづく立場が弱いな……次期国王なのに」
「それがわかってヨハネスについてきたんでしょ?」

 フィリムは笑いながらツッコんでくるが、俺も思わず笑ってしまった。

「よし。まずは孤児院に行って支配人と話をしてみよう。クレア、少し俺たちに協力してもらえませんか?」
「合点承知!」

 まずは孤児院の状況、そしてクレアの弱みにつけ込んでいるものを徹底的に排除すれば、奴等も縛り付けることができなくなるだろう。

 この時、俺はまだ知らなかった。
 ギルドガブリエルの管理している大臣、いや、その更に上層部の正体が俺も知っているあの王子だということを……。
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