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第一章

黒幕と威圧

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 すでに使用人がダイン第一王子を応接間に案内している。
 その応接間の前、フィリムは対談を始める前に、大きく深呼吸をしていた。

「フィリム、大丈夫?」
「えぇ、アイツの威圧感……昔から嫌いだったから、ちょっとトラウマなのよ。でも、大丈夫! 行くわよ」

 ♢

 ダイン王子は椅子に座って待っていた。足を大きく広げ、伸ばした足は踵立ちで床に触れている。
 いかにも自分が一番偉いというような雰囲気と態度を隠そうともしない様子だった。

「相変わらずいいご身分ね」
「当たり前だ。私は本来ならば国王の継承者なのだからな」

 ご機嫌な態度で座るダイン王子は対談の本題に入った。

「ヨハネスやお前達を抹殺しようと企んでいる者がいる事を知っているか?」
「そうなの? 知らなかったわね」
「フッ……無駄な嘘はいらん。お前たち、私を疑っていただろう?」
「それは……」

 フィルムは返答が出来なかった。
 ここで黙ったままでは更に向こうのペースになってしまう。
 フィリムには、俺は黙って聞いてるだけで良いと言われたが、流石にこれは……。

「フッ……別に隠す事もないだろう。末男のヨハネスが次期国王で決まれば、他の王子が黙っているわけがない。当然第一王子である私が真っ先にヨハネスをどうにかしようと疑っても仕方あるまい」

 確かに俺も小さい頃、義弟のミルトだけが父と義母に溺愛されて書庫で泣いていた記憶がある。でも俺は当時ミルトをどうにかしたいと思った事はなかった。
 そう考えてしまうと……。

「ま、正直私もアンタが怪しいと思ってたのは認めるけど」
「まぁそんな事だろうとは思った。だが、先に言っておこう。私は金が欲しいだけだ。別に王の座に執着はない。だがまあ、ヨハネスは気に食わんがな」

 平然と言ってのけて豪快に笑うダイン王子。

「で、目的はなんなのよ」
「フッ……今回はお前達に真実を教えてやろうと思ってここへわざわざ来たまでだ」
「真実? アンタ、黒幕が誰か知っているの!?」
「当たり前だろう? 私はヨハネスと同じく、ガブネスも嫌いでな。今回の黒幕はあいつだ」
「ガブネスね……アンタかガブネスだとは思っていたけど、まさかアンタの口から教えてくれるとは思わなかったわ」
「ガブネス第二王子……」

 父が最も敬愛していた王子だ。嫌でもこの名前は知っている。
 父と同じように、魔眼を忌み嫌う王子であるならば可能性はあるかもしれない。

「信じるも信じないも好きにしろ。だが私はこの件に首を突っ込む気はない。今のところな」

 ダイン王子が立ち上がり、会談も終わろうとした時、ダイン王子が振り返り、突然こちらを見て言った。

「お前……」
「──!?」

 目線が合った瞬間、呼吸を忘れるほどの圧を身体に受ける。

「ふっ……面白い力だな。精々上手く活かすが良い」

 ダイン王子は嘲笑うように笑ってフィリムの家から姿を消していった。
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