小人のビト

ふがぁ

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1話 虫好きの男の子

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僕の名前は、ビト。

名字は無いんだ。

僕の日課は、虫の写真を撮ること。

いつも学校帰りに、虫を観察しているんだ。

そして、今日も観察している。

「アリの大群だぁ、」

ビトは、アリの大群を見つけ、つい写真を撮る。

「あ、ダンゴムシ!バッタもいる!」

いろいろな種類の虫を見つけることができてとても嬉しかった。

パシャ、

撮った写真を見直して、にこりと笑う。

そして、他にもムカデやカマキリなどの虫を見つけて、写真を撮れた。

「今日は、たくさん撮れた。」

ビトは、家に帰りお母さんに見せた。

すると、お母さんはそれを見て、

「気持ち悪い!もう、本当にやめて!」

お母さんは、虫が嫌いなのかな。

こんなに、可愛いのに。

僕は、お母さんに写真をたくさん撮れたことを自慢したかった、褒めて欲しかったのに。

どうしても自慢したかったビトはお父さんに見せようと思った。

しかし、お父さんは仕事の帰りが遅いため、それまで待ってないといけない。

「はぁ、まだかなぁ、」

ビトが待ちくたびれていると、玄関の扉が開く音がした。

それに気づいたビトは、すぐに見せにいった。

お父さんに見せてみると、

「すごいじゃないか、頑張ったなビト。」

と、褒めてくれた。

お父さんは、虫が好きなのかな。

それから、お父さんが夜ご飯を食べている間、僕は自分の部屋で飼っている虫に餌をあげていた。

本当は、リビングで飼いたいけど、お母さんがダメと言ったので、部屋で飼っている。

飼っているのは、カブトムシ、クワガタ、カミキリムシ、カマキリの4匹。

みんな、ずっと元気に生きている。

でも、学校の友達に虫が好きなビトはいない。

僕が虫を触ることが、気持ち悪いと思っている人もいる。

特に、トラタくんという子が僕をよくいじめてくる。

僕のあだ名は虫だった。

僕は、悲しくなかった。

むしろ、嬉しかった。

でも、やっぱり、学校のみんなにも虫を好きになってもらいたい。

そのために、ビトは一晩かけて虫についての作文を書いた。

これで、クラスのみんなの前で発表すれば、虫を好きになる人が出てくるかもしれない。

ビトは、朝起きて、すぐに学校に行った。

説明をするときに、大変なので実際に飼っているカブトムシとクワガタを持っていった。

みんな、ビックリするかな。

でも、僕がちゃんと説明すれば。

分かってくれるはず。

僕は、校門を抜け、校舎に入った。

僕に対してのたくさんの視線が感じられた。

先生や、高学年の生徒たちがこっちを見ている。

僕は、自分の教室に向かった。

教室に入ると、みんなは少し驚いていた。

何を持ってきたの?と聞かれると思った。

だけど、誰も聞いてくることは無く、僕は普通に自分の席に座った。

なんでだろう。

なんでみんな、虫に興味を持たないのかな。

カブトムシとクワガタが入った虫かごを机に  置いた。

すると、トラタくんが来て虫かごをよく見てきた。

「なんだこれ?」

「カブトムシとクワガタだよ?」

「あ、そう、」

そして、聞いた後、虫かごを持って黒板に向かって投げつけた。

「えっ!?ちょっと、トラタくん!」

「なんだよ、虫を投げてるだけじゃん。」

「でも!虫だって生きてるし!」

「いやいや、みんなはどう思う?」

「いいぞいいぞ!」

「やっちまえー!」

「だってさ?」

クラス全員が、トラタくんに賛成だったらしく、僕は抗うのをやめた。

せめて、カブトムシとクワガタは持ち帰ろうとトラタくんからカブトムシの虫かごを取ろうとする。

それに気づいたトラタくんは、高く手を上げ届かないようにしてきた。

僕は、生まれつき背が低く、周りの子よりも低かった。

なので、これじゃ取れない。

「ねえ、僕のだよ、返して?」

「やだね、それなら殺した方が良いよ。」

「なんでよ!!」

僕は、全力で取り返そうとしたけど、取り返せなかった。

そして、授業が始まり、トラタくんの席の足元には僕のカブトムシがいた。

僕とトラタくんの席は正反対の位置にあり、授業中に取るのは無理だ。

だから、トラタくんが油断しているときに取りに行こうと思った。

しかし、トラタくんに油断はなく、僕が近づこうとすると、毎回、目を合わせてきた。

どうすれば良いんだ。

そして、考えた結果、先生に相談することにした。

「先生、トラタくんが僕のカブトムシを取りました。」

「そうなんですか?でも、学校に虫を持ってくるなんて、関心できないですね。」

「すみません、」

「分かりました、私から話してみるので。」

僕は先生に任せることにした。

そして、教室に戻ると僕の机の上にカブトムシの虫かごがあった。

クワガタの虫かごは、ロッカーに隠したため、大丈夫だと思った。

しかし、トラタくんはクワガタの虫かごを見つけていて、金属製のハンマーでクワガタを叩こうとしていた。

「やめろぉぉ!!!!」

「はっ?うぁぁ!」

ピキ、

何かを踏んだ気がした。

それは、クワガタだった。

周りの子はみんな笑っていた。

特に、トラタくんが。

僕は、虫を殺してしまったという罪悪感から、教室を離れた。

そして、教室から出るとき自分の席の横を通り、横目で見るとかごの中に入ったカブトムシはボロボロにされていた。

金属製のハンマーで叩かれたんだろう。

僕は、トイレで泣いた。

虫を殺してしまったことと、虫を殺されたことの2つに対して。

しかしどちらも、トラタくんのせいだ。

僕は、トラタくんに仕返しをしたいと思った。

しかし、トラタくんの大切にしている物なんて分からないため、何もできなかった。

ビトは家に帰っている途中、再び虫を見つけた。

今日も、カメラを持ってきていたため、写真を撮っていった。

すると、隣から聞き覚えのある声が聞こえた。

トラタくんだ。

どんどん近づいてきて、声をかけようとした瞬間に、虫に向かって石を投げていた。

「ねえ、やめてくれ!」

「だから、なんでー?虫だよ?」

僕は、ここで全てを言おうと思った。

「僕のカブトムシを殺したことは許さない、勝手にかごから出したことも許さない。」

「そう?別に恨んでも良いけど?」

僕の言っていることに気にすることなく、次は、アリの巣にホースで水を入れた。

「可哀想だとは、思わないの?」

「思わない。」

「そうか、じゃあ、またね。」

「あ、ああ。」

トラタくんからすると、もっと話すと思っていたらしく、少し驚いていた。

僕は、家に向かった。

____________________

今回は、ありがとうございました。

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