健多くん

ソラ

文字の大きさ
上 下
46 / 66
番外編

しおりを挟む
それから俺は高校に入り家を出、一人暮らしを始めた。

高校は実家からも近かったが、親父も母親も特に反対はしなかった。うちはもともと放任主義だ。

俺が家を出たのは理由があった。

あれから表面上はいい親子関係を築いていたが、ある日偶然、あのときの男と母親が一緒に歩いているところを見てしまったのだ。

俺は二度、この世界と母親に幻滅させられた。

それでも母親のことはやっぱり嫌いにはなれなかった。

いくら父親を裏切ろうとも、彼女はこの先も間違いなく俺を生んだ人であり続ける。その家族の情は変わらない。

ただ、一緒にい続けることは、俺の精神に毎日小さな傷を作り続けることになる。

それまで神のように慕っていた一番大切な人のエゴイスティックな一面を見て、人を信じることを恐れるようになった俺は、一人でいるほうが楽だということに気づいた。

寂しいと感じるよりも、楽な方を選んで家を出た。

俺が知ってしまったことは誰にも言わなかった。

誰かに話せば、あのときのことを鮮明に思い出して気分が悪いし、第一他人に話すようなことじゃない。

なにより普通の家庭が、俺の一言で壊れていくところを見る勇気は俺にはなかった。

夏帆にも次の日、何食わぬ顔で会ったが、とくに何かに気づいた様子はなかった。

気付かないアイツが悪いわけじゃない。

ただ誰かに弱さを見せるほど、俺の心が強くなかっただけだ。

だからいろんな人を傷つけた。

誰も好きにならず、夏帆すら裏切って。

好かれて嬉しいと、そう彼女を欺きながら。







夏帆と付き合い始めて半年が過ぎた。

相変わらずアイツはよくしゃべって、俺はそれに適当に相槌をうって。

話を聞いてやるだけでアイツは満足そうだった。

もちろん付き合っている間、俺はアイツとセックスをした。

小学生の頃からなにも変わっていないと思っていた幼馴染は、俺が知らないうちに大人の女になっていた。

柔らかく白い肌、高い喘ぎ声。

嬉しそうに何度も背中に爪をたて、俺をのみこむカラダ。

初めて抱いたときは処女だった。

俺が開いて、二度と処女ではなくなった。

俺は夏帆の特別になり、俺はいつも女を抱くように夏帆を抱いた。

ただ、罪悪感だけが募っていく。

夏帆が俺のことを好きだというたびに、俺は胸の奥で夏帆に謝る。

俺は、お前の気持ちを受け止めることができない。できるのはお前のカラダを受け止めるだけだ。そう何度も。

そして一年が過ぎた。

別れはあっさりと訪れた。

「鳴人、今までゴメンね」

帰り道、突然夏帆が言った。

俺はなにを言われたのかわからず、思わず立ち止まってアイツを見た。

「私、頑張ったんだけど。鳴人の力になれなかった。私じゃ力不足だったね」

「・・・」

なにも言えなかった。

わかったことは、夏帆が俺の弱かった心を見抜いていたということだけだ。

見抜いていて、必死に助けようとしていたんだろう。

「ねぇ気づいてる?アンタね、突然誰かに触られそうになるとビクッてするんだよ。私にしかわからないくらい、ちっちゃくだけど。それで、自分から人には触ろうとしない」

そんなことは知らない。

無意識の行動だった。

たぶん、人に触られることすら汚いと思って。

「一年頑張って、それでも鳴人が心を開いてくれないようだったら・・・諦めるって決めてたから」

夏帆は俯きもしなかった。

まっすぐ前を見て、さっぱりとした顔をしていた。

それだけが、俺の唯一の救いだった。

「私じゃないんだね、きっと。あ、責めてるわけじゃないよ」

「・・・・・・・・・・悪かった」

小さな謝罪に、夏帆は少し黙った。

そしてにっこりと笑って、俺の手をとった。

「大丈夫。全然気にしてないって。鳴人に初めてあげちゃったのはもったいないけど、責任とれなんて言わないから!本当の本当に初めてだったんだけど!」

「・・・・・・・・嫌味か」

「やぁね、違うってば。もうしょうがないことだし!」

「・・・・・」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

部室強制監獄

裕光
BL
 夜8時に毎日更新します!  高校2年生サッカー部所属の祐介。  先輩・後輩・同級生みんなから親しく人望がとても厚い。  ある日の夜。  剣道部の同級生 蓮と夜飯に行った所途中からプチッと記憶が途切れてしまう  気づいたら剣道部の部室に拘束されて身動きは取れなくなっていた  現れたのは蓮ともう1人。  1個上の剣道部蓮の先輩の大野だ。  そして大野は裕介に向かって言った。  大野「お前も肉便器に改造してやる」  大野は蓮に裕介のサッカーの練習着を渡すと中を開けて―…  

山本さんのお兄さん〜同級生女子の兄にレ×プされ気に入られてしまうDCの話〜

ルシーアンナ
BL
同級生女子の兄にレイプされ、気に入られてしまう男子中学生の話。 高校生×中学生。 1年ほど前に別名義で書いたのを手直ししたものです。

開発される少年たち・家庭教師の淫らな性生活

ありさわ優那
BL
派遣家庭教師として働く三枝は、行く先々で少年の精通をさせてやったり、性的に開発することを趣味としていた。三枝は、勉強を教えながらも次々に派遣先で少年を毒牙にかける。勉強よりも、エッチなことを求めるようになってしまった少年たちの行方は……。 R-18作品です。少し無理矢理(あまり嫌がりません)。 乳首開発描写多めです。 射精管理やアナル開発の描写もありますが、既に開発されちゃってる子も多く出ます。 ※少年ごとにお話を書いていきます。初作品です。よろしくお願いします。

真・身体検査

RIKUTO
BL
とある男子高校生の身体検査。 特別に選出されたS君は保健室でどんな検査を受けるのだろうか?

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

受け付けの全裸お兄さんが店主に客の前で公開プレイされる大人の玩具専門店

ミクリ21 (新)
BL
大人の玩具専門店【ラブシモン】を営む執事服の店主レイザーと、受け付けの全裸お兄さんシモンが毎日公開プレイしている話。

柔道部

むちむちボディ
BL
とある高校の柔道部で起こる秘め事について書いてみます。

新しいパパは超美人??~母と息子の雌堕ち記録~

焼き芋さん
BL
ママが連れてきたパパは超美人でした。 美しい声、引き締まったボディ、スラリと伸びた美しいおみ足。 スタイルも良くママよりも綺麗…でもそんなパパには太くて立派なおちんちんが付いていました。 これは…そんなパパに快楽地獄に堕とされた母と息子の物語… ※DLsite様でCG集販売の予定あり

処理中です...