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After a long time spiral
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久しぶりに組長から呼び出しがかかって組長が経営する会社の一つに足を運んだ。
フロントに行けばすぐに社長室に通される。
見慣れた社長室の扉をノックして自分の名を言えばあちらから扉を開けた。
「…よお北谷」
「ああ、早かったな。」
「まぁ久々の呼び出しだしな。組長なんかありました?」
今の今まで机に顔を向けていた組長が顔を上げ俺の目を見た。
何か悩んだ後、組長は「すまん」と言った。俺は組長に謝られるような大儀なことはした覚えがない。
素直に驚いていると北谷も顔を歪めた。
「片桐、悪い知らせだ。いますぐ病院に向かってくれ」
北谷の言葉に目を見開いた。
「片桐、冰澄のことは高梨に任せる。お前はすぐに病院に行け、……容態が急変した。」
「ぁ……。すんませ、ん。」
「大丈夫か?」
組長の声が右から左へ流れた。
「下に高梨を呼んだ。すぐに行ける。」
俺は、小さく目を瞬いた。今一番この知らせを聞きたくないのは、俺かもしれない。
けれど、北谷だって聞きたくなかったはずだ。
今一番飛んで行きたいのは北谷のはずだ。
「……北谷は」
「俺はやらないといけないことが多すぎる。お前が先に行ってそばにいてやってくれ、俺は後で行く。」
険しい表情の北谷の手に拳が作られていた。
「片桐、早く行け」
北谷にそう言われては俺はもう何も言えなくなった。
「片桐ぃ、北谷のことは気にすんな。あいつは何も考えてないわけじゃない」
「ああ……わかってる」
車の中で、高梨が俺にそう言った。
高梨は俺の考えてることがすぐにわかる。北谷の考えてることも。
「冰澄さんのことは任せろ。どうするぅ?うまくごまかすか?」
「いや……聞かれたら正直に話してもらっていい、別にやましいことじゃねぇ」
「了解。ほらもう着くぜ」
その言葉に顔をあげれば確かに大学病院の目の前まで来ていた。
大きな病院の入り口を行き交う人たちを横目で見た。
車から降りて急いで受付に足を向ける。
「片桐ぃ」
高梨さんの低い声がして振り返る。
「本当にいいんだな弟のこと冰澄さんに話しても」
「……かまわねぇよ。」
「……いってこい」
「言われなくても行くに決まってんだろ。」
高梨に小さく笑ってみせると高梨も小さく笑った。
俺は受付まで駆け足で向かった。平日の昼間だが人の行き交いが激しい。
「すみません、入院してる片桐尚也(カタギリナオヤ)の兄です。」
受付で俺の言葉を聞いた女の人は前もって聞いていたのかすぐに案内してくれた。
集中治療室の前、俺は眠り続ける弟の姿を見た。
本来なら高校生。学校で楽しく過ごすはずの年だった。
暑い、熱い、真夏の日、弟は通っていた中学校の屋上から飛び降りた。
フロントに行けばすぐに社長室に通される。
見慣れた社長室の扉をノックして自分の名を言えばあちらから扉を開けた。
「…よお北谷」
「ああ、早かったな。」
「まぁ久々の呼び出しだしな。組長なんかありました?」
今の今まで机に顔を向けていた組長が顔を上げ俺の目を見た。
何か悩んだ後、組長は「すまん」と言った。俺は組長に謝られるような大儀なことはした覚えがない。
素直に驚いていると北谷も顔を歪めた。
「片桐、悪い知らせだ。いますぐ病院に向かってくれ」
北谷の言葉に目を見開いた。
「片桐、冰澄のことは高梨に任せる。お前はすぐに病院に行け、……容態が急変した。」
「ぁ……。すんませ、ん。」
「大丈夫か?」
組長の声が右から左へ流れた。
「下に高梨を呼んだ。すぐに行ける。」
俺は、小さく目を瞬いた。今一番この知らせを聞きたくないのは、俺かもしれない。
けれど、北谷だって聞きたくなかったはずだ。
今一番飛んで行きたいのは北谷のはずだ。
「……北谷は」
「俺はやらないといけないことが多すぎる。お前が先に行ってそばにいてやってくれ、俺は後で行く。」
険しい表情の北谷の手に拳が作られていた。
「片桐、早く行け」
北谷にそう言われては俺はもう何も言えなくなった。
「片桐ぃ、北谷のことは気にすんな。あいつは何も考えてないわけじゃない」
「ああ……わかってる」
車の中で、高梨が俺にそう言った。
高梨は俺の考えてることがすぐにわかる。北谷の考えてることも。
「冰澄さんのことは任せろ。どうするぅ?うまくごまかすか?」
「いや……聞かれたら正直に話してもらっていい、別にやましいことじゃねぇ」
「了解。ほらもう着くぜ」
その言葉に顔をあげれば確かに大学病院の目の前まで来ていた。
大きな病院の入り口を行き交う人たちを横目で見た。
車から降りて急いで受付に足を向ける。
「片桐ぃ」
高梨さんの低い声がして振り返る。
「本当にいいんだな弟のこと冰澄さんに話しても」
「……かまわねぇよ。」
「……いってこい」
「言われなくても行くに決まってんだろ。」
高梨に小さく笑ってみせると高梨も小さく笑った。
俺は受付まで駆け足で向かった。平日の昼間だが人の行き交いが激しい。
「すみません、入院してる片桐尚也(カタギリナオヤ)の兄です。」
受付で俺の言葉を聞いた女の人は前もって聞いていたのかすぐに案内してくれた。
集中治療室の前、俺は眠り続ける弟の姿を見た。
本来なら高校生。学校で楽しく過ごすはずの年だった。
暑い、熱い、真夏の日、弟は通っていた中学校の屋上から飛び降りた。
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