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After a long time spiral
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(片桐 視点)
ピピッと起床時間をしらせる音がなる。夕飯の献立をメモしていた手を止めた。寝室の扉に目を向けるが、まったく動かない。
いつもなら時間ぴったりに身支度がすべて整った状態で出てくる彼の姿がない。寝室には一応、シャワーやトイレ、洗面所などほぼほぼ完備されている。もしかしたら身支度に時間がかかっているのかもしれない。けれどいつも真面目な彼が遅れるなんて早々ない。
そこで俺は思い出した。一時間ほど前、北谷に呼び出され起床時間より速く家を出た組長の表情を。
そういえば、朝は人ひとり殺せるくらいに機嫌が悪いうえに起床時間よりはやい出勤だったのに無駄に爽やかに出ていった。
「あー…?なんか嫌な予感するぞ…?」
メモをテーブルに置き、寝室の扉をノックするが返事は返ってこない。
「冰澄さん起きてますか?」
……。
数十秒の静寂がすぎ俺はゆっくりドアノブを回した。
「冰澄さん、学校遅れますよー…?冰澄さーん…?」
顔だけ部屋に入れて呼びかけるがベッドの上の布団の塊は動かない。珍しく熟睡している。入っていいものか迷っていると足の隙間からシロが部屋に入り、冰澄さんの眠るベッドの上に飛び乗った。
「…んー…?」
小さな声が聞こえた。
「冰澄さーん。あさですよ。時間大丈夫ですか?」
「ぇ…?あさ……。え!?7時!?やばい遅刻する!」
ばさっと起き上がった冰澄さんはこちらを見た。俺は冰澄さんの姿を見て熟睡の原因が誰であるか気付いた。
「片桐さんおはようございます!」
焦ってベッドから降りようとする冰澄さんを見ておもわず「ストップ!!!!」と叫んだ
「す、すとっぷですか?」
「あー…あー…その今の格好で布団から出ないほうが…」
冰澄さんにそう告げると冰澄さんはゆっくりとしたを向き自分の格好を確かめた。
「うわぁ…!!!」
ベッドの上にいたシロを抱き上げ綺麗に自分の体を隠した冰澄さんは、少し引き気味に笑った。
「えっと…すぐ用意して、出るので」
「そ、そうですね。俺は朝ごはん弁当に入れますね、学校で食べれるように。」
「あ、ありがとうございます。…あはは」
「あ、あははははー」
変に笑いながら俺は扉を閉めた。
そして今見たものがとんでもないものだと知った。
……すごい数のキスマークを見てしまった。
あの変態組長の相手をしてたらそりゃぁこんな時間まで寝るわ。
「…あ、弁当に詰めねぇと。」
寝室の中から走る音が聞こえた気がした。
****
「……おはようございます。」
顔が赤いのか青いのか、なんとも言えない表情で全ての身支度が整った冰澄さんが出てきた。よく見れば首元に絆創膏が貼ってあった。
「お疲れ様です…。」
俺は冰澄さんの朝ごはんの入った弁当と昼ごはんの入った弁当を袋に入れて渡した。
「朝から本当にすみません。」
「いえいえ、組長を一発殴ってもいいと思いますよ。ちょっとのことじゃあキレないんで(冰澄さんには)」
「一度殴ってみようと思います…教科書の角で」
げんなりした冰澄さんはそう言うとシロをひとなでしてから迎えに来た高梨ととも部屋を出た。疲労感が滲み出ていた小さな背中は珍しく猫背になっていた。
……あー…可哀想。
自然と眉が下がる。なんだかんだ言って彼もまだまだ高校生、まだ出来上がっていない体は、疲労を溜め込んでいるのではと心配になった。
いろんなことにも悩んでいるから尚更心配だった。
もし彼も、あの子と一緒の選択をしてしまったら……。
「あー……ダメだ。しっかりしろ俺。」
ピピピッと電子音が響く、こんな時間に北谷から電話だった。
俺は両頬を両手で叩いてから電話に出た。
ピピッと起床時間をしらせる音がなる。夕飯の献立をメモしていた手を止めた。寝室の扉に目を向けるが、まったく動かない。
いつもなら時間ぴったりに身支度がすべて整った状態で出てくる彼の姿がない。寝室には一応、シャワーやトイレ、洗面所などほぼほぼ完備されている。もしかしたら身支度に時間がかかっているのかもしれない。けれどいつも真面目な彼が遅れるなんて早々ない。
そこで俺は思い出した。一時間ほど前、北谷に呼び出され起床時間より速く家を出た組長の表情を。
そういえば、朝は人ひとり殺せるくらいに機嫌が悪いうえに起床時間よりはやい出勤だったのに無駄に爽やかに出ていった。
「あー…?なんか嫌な予感するぞ…?」
メモをテーブルに置き、寝室の扉をノックするが返事は返ってこない。
「冰澄さん起きてますか?」
……。
数十秒の静寂がすぎ俺はゆっくりドアノブを回した。
「冰澄さん、学校遅れますよー…?冰澄さーん…?」
顔だけ部屋に入れて呼びかけるがベッドの上の布団の塊は動かない。珍しく熟睡している。入っていいものか迷っていると足の隙間からシロが部屋に入り、冰澄さんの眠るベッドの上に飛び乗った。
「…んー…?」
小さな声が聞こえた。
「冰澄さーん。あさですよ。時間大丈夫ですか?」
「ぇ…?あさ……。え!?7時!?やばい遅刻する!」
ばさっと起き上がった冰澄さんはこちらを見た。俺は冰澄さんの姿を見て熟睡の原因が誰であるか気付いた。
「片桐さんおはようございます!」
焦ってベッドから降りようとする冰澄さんを見ておもわず「ストップ!!!!」と叫んだ
「す、すとっぷですか?」
「あー…あー…その今の格好で布団から出ないほうが…」
冰澄さんにそう告げると冰澄さんはゆっくりとしたを向き自分の格好を確かめた。
「うわぁ…!!!」
ベッドの上にいたシロを抱き上げ綺麗に自分の体を隠した冰澄さんは、少し引き気味に笑った。
「えっと…すぐ用意して、出るので」
「そ、そうですね。俺は朝ごはん弁当に入れますね、学校で食べれるように。」
「あ、ありがとうございます。…あはは」
「あ、あははははー」
変に笑いながら俺は扉を閉めた。
そして今見たものがとんでもないものだと知った。
……すごい数のキスマークを見てしまった。
あの変態組長の相手をしてたらそりゃぁこんな時間まで寝るわ。
「…あ、弁当に詰めねぇと。」
寝室の中から走る音が聞こえた気がした。
****
「……おはようございます。」
顔が赤いのか青いのか、なんとも言えない表情で全ての身支度が整った冰澄さんが出てきた。よく見れば首元に絆創膏が貼ってあった。
「お疲れ様です…。」
俺は冰澄さんの朝ごはんの入った弁当と昼ごはんの入った弁当を袋に入れて渡した。
「朝から本当にすみません。」
「いえいえ、組長を一発殴ってもいいと思いますよ。ちょっとのことじゃあキレないんで(冰澄さんには)」
「一度殴ってみようと思います…教科書の角で」
げんなりした冰澄さんはそう言うとシロをひとなでしてから迎えに来た高梨ととも部屋を出た。疲労感が滲み出ていた小さな背中は珍しく猫背になっていた。
……あー…可哀想。
自然と眉が下がる。なんだかんだ言って彼もまだまだ高校生、まだ出来上がっていない体は、疲労を溜め込んでいるのではと心配になった。
いろんなことにも悩んでいるから尚更心配だった。
もし彼も、あの子と一緒の選択をしてしまったら……。
「あー……ダメだ。しっかりしろ俺。」
ピピピッと電子音が響く、こんな時間に北谷から電話だった。
俺は両頬を両手で叩いてから電話に出た。
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