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一枚の便箋

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昨日は帰ってからカップラーメン食べて横になったら
そのまま爆睡してしまった

目を覚ましたら朝の5時30分だった。
少し早起きしすぎたな
でも寝直すには中途半端な時間だ。

俺はまだ心の中にあるモヤモヤが忘れられない

「・・・やっぱりちゃんと確認して置かないとな」

カキカキ......

***************************
琴宮 美樹香 ●〇〇

10月5日 4時20分~5時20分

10月12日 5時35分~6時35分

シンクロ率 50%
***************************

☆☆☆ボワン☆☆☆

パチッ

琴宮さんを眷属にしてあれからもう一週間経った
いや・・まだ・・と言うべきか。
眷属ノートを手に入れてから何となく俺の周りが
慌ただしくなっていると思うのは気のせいだろうか?

スクッ

琴宮さんに憑依してベッドから起きて机の前に座る

正面にスタンドミラーその隣には例の写真立てがある

琴宮さんはパジャマを着ている。
最近夜中は冷えだしたからね、可愛いパジャマ・・結構似合っていますよ

(何か見つめていると胸が痛くなる)

この前よりは眷属ノートの使い方も分かっているつもりだ

だから鏡を介して眷属化した琴宮さんに質問する事にした、

「おはよう琴宮さん」
「おはようございます、舞風君」

にっこりと微笑む琴宮さん

「今から質問するから琴宮さんの知っている事を答えて貰って良い?」
「はい。」

問:「写真に写っている男は誰なの、ひょっとして君のお兄さんとか?」
  「いいえ、私と交際している藤堂竜巳さんです。 29歳です」
  「何でも代議士の息子さんだそうです」 

ガクゥーーー

俺の唯一の希望は呆気なく打ち崩された
おまけに良いとこのボンボン確定
しかも29歳~めっちゃ年上じゃん。

問「ええと、やっぱり結婚とか前提で付き合っているの?」
 「・・・・・・・・・・・・・・・」
 「ん?」
 「付き合い始めてから半年経ちますが月に1~2度デートに誘われています」
 「ただ・・彼からは会うたびに香水の匂いがして・・」

問「え、いや、男だって香水ぐらい付けるんじゃないの?」
 「女性用の香水です・・デートの度に違います」

ピシーーーーーッ!!

俺、一瞬発狂しそうになった

(それって二股とか三股って事?当日に取っ替え引っ替えしているって事?)

問「そ、それ、気付いているんだ?ええと、いつぐらいから?」
 「初めからです・・・」

問「ちょっと待って!何でそんな奴と付き合っているの!?」

 「彼とは上司の紹介で是非にと頼まれてお見合いしました」
 「上司には色々と父が便宜を図ってもらっていて断れませんでした」
 「今年突然父が仕事で借金を抱えてしまって大変だったのです」
 「・・・・・・・・・・・・・・」

問「その写真のペアルックは?」
 「彼から頂いたものです」
 「それで記念だからって一緒に撮影したのを頂いて」
 「別に私には他に付き合っている人も居ないから・・・」

問「いやいや、琴宮さん程の美人さんなら寄って来る男一杯いるでしょ?」
 「声をかけて来る人はその、危なそうな人が多くて」
 「でも私からは誰かに声を掛けるなんて・・・」

どういう事だよ、何でこんな事になっている?

「舞風君、女性は言葉に出して貰わないと気持ちは伝わらないものですよ」

眷属状態の琴宮さんに・・・言われてしまった。

問「琴宮さん、その・・俺の事、舞風広志って覚えている?」

 「はい、勿論覚えています、お話していると楽しくてもっと会話したかったです」
 「学生時代にもっと一緒にいれたらなって今でも時々思いだします」

 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

(何だよ・・・それ)

自分の部屋で本体の俺は茫然として震えていた

(何処までガキだったんだよ・・俺って)

でも29歳の男がペアルックを彼女に送る?
いや、あるかもしれないけどさ、他に何か意味あったりして?
可笑しくない?体のいいキープじゃん・・・

相手は銀行員の紹介って事はこいつも金がらみで好き勝手しているって事かよ
そう思って写真見ると完全にヤリチンにしか見えなくなった

だけど、俺に何が出来るんだ?
それに俺は魔界に輪廻するんだ、どっちみち離れてしまうんだ
でも・・・彼女が不幸になるのだけは許せないよ

どうするんだよ。考えろ、俺!!

(女性には言葉で言わないと伝わりません・・・・か)

だからって突然電話して好きでしたって恥ずかしげもなく言える?
そんな親しくも無かったじゃん!
それに恋人いるじゃん!!言えるわけないよ!!

ダン!ダンッ!

琴宮さんの拳で机を叩く・・・・音

俺は写真立てを取って壁に投げつけた

バキーーン!

カラカラ、タタン・・・

スッと机の引き出しを開ける

便箋だ・・・・

*******************

お久しぶりです、琴宮さん.....
俺、舞風広志です、ちょっと色々あって友達に聞いて側まで来ていました
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・琴宮さんが不幸になるのは許せません。
俺は世界中のどんな男よりも君の価値を知っています、大好きです
三か月後にまた来ます。それまでにもし何か困った事あったら
俺に電話ください。何があっても飛んできます。

090-****-****
*******************

俺に出来る事はこれくらいだ。
今は500万を何とかしなきゃいけない

自分の事で精一杯だから・・・戦う以前にマイナスの状態だ。
下手に動けば自滅するのは目に見えている。
戦うには戦略が必要だ。そうだよな・・・広志。

入り口のドアに便箋一枚挟んでベッドに戻った

ピッ  6:35

☆☆☆ボワン☆☆☆

パチッ

「あら?私って電気消し忘れていたのかしら」

「よいしょっ」

その時エアコンの風の影響か?入るはずのない隙間風の悪戯か?
ドアの方から一枚の便箋が吹き飛ばされて落ちる。

ヒラリッ.....

「えっ・・」

(何だろう?)

ピラッ

そっと拾い上げ目を通して立ったまま固まる琴宮美樹香

バッ!

タタタッ...バンッ!

「舞風くん!?」

ドアを開け舞風の姿を探すがそこには舞風の影も気配もなかった

「・・・・・・・・・・。」

ギュッッ

便箋を握り締める琴宮
部屋に戻るとバラバラになった写真立てが転がっていた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

これで良かったんだよな?
今の俺にはあれが精一杯だよ
しょうがないさ、何かあったら責任は俺が取ってやる

そうさ・・・自分の正義は自分が決める
他人の正義が阻むならそれは俺に取っては悪って事だ。

ふぅ~そういえば眷属化した状態でも今度は性欲でなかったな?
やっぱり琴宮さんは・・違う・・・

でも・・・なんか朝からやたらハードだったな・・・

バタン

もう一度ベッドの上に倒れ込んでしまった。

ピッ

7:00

そろそろ会社行く時間だ

バタン

朝の陽ざしが少し季節を感じさせる
拭き抜ける風、街の景色も秋の色に変化していく

さて、考えろよ、俺

3ヶ月間で500万を用意しなきゃいけない
俺にある武器は眷属ノートだけだ

いや・・眷属ノートがある
俺は用心深いだけで腕力も人並み程度しかない。
ラノベやアニメみたいな特殊なスキルも持ってない

唯一あるのは昔から持っている繋がり、オンライン上のコミュニティと
そのおかげで手に入れたサイコパスってどうしようもない黒歴史だ

・・でも御堂さんは神楽坂さんの為に700万も用意したんだよな?
ちょっと信じられないけど・・・
男って好きな女にならお金の額って厭わないのかな・・・?

もし、もしも、だけど俺が眷属ノートなんて知らないと仮定して
大好きな琴宮さんが抱けるとしたらいくら出せるだろう?

いやいやちょっと待て、いろいろ条件が難しすぎるだろ?
俺は彼女に嫌われる行為はしたくないんだ

・・・いや、もしそれを、クリアできると仮定した場合だ
俺ならいくら出す?

そう、チャンスは一回で、期限付きの条件なら
・・・・・・・・・・・・700万は無理でも借金してでも100万ならだすぞ・・
もしもそれがオークションで自分が抱かなきゃ他の誰かに抱く権利が移るとしたら?

俺には眷属化と、まだ検証は完全じゃないけど五感反転がある
これって眷属使って男から金取れるんじゃないだろうか?

もろに悪用する感じだけど
眷属はその時間ごとに記憶も物理的結果も全てリセットされるんだ。

俺が主として抱いた時、眷属を愛したり恋したりすると深層意識に記憶じゃなくて
感情が残存しそうな事は分かっている。

逆を言えばそれ以外は全ての記憶が消えるって事だ

でも待て、相手になる男の記憶は消せないんだろ?
当たり前だ、そんなことすりゃ後々トラブルになって
最悪、俺にも手が伸びる可能性がある

駄目か・・・・

何か手はないのか?

気付けば会社の正門に着いていた
人間って便利だな、考え事していても
普段通り勝手に電車に乗って、通勤道歩いて会社についてしまうんだから

「ん?・・・・まて?」
「・・・・・普段通り?」

「おはようございます!」

朝のミーティングが終わって仕事に取り掛かる

ぽんっ!

「ん?」

肩を叩かれ振り返る

「あ、おはようございます、きょ・・・」

キッ!

「・・御堂さん。あ、はは・・」

「おはよう、舞風君、昨日はお疲れ様、今日からまた頑張ってね」
「はい、お疲れ様でした~」

一言そう言って御堂さんは何時もの素っ気なさで製造フロアを後にした
危うく名前で呼びそうになって睨まれたよ

(ああいうとこってさすが主任だよな・・・)
(俺も御堂さんに迷惑かけないようにしなきゃ・・・)

「よぅ舞風、昨日はどうだった?横浜工場に行ってきたんだろう?」

佐藤班長だ

「はい、でも御堂主任が殆ど対応してくれたので俺は余計でしたね」
「あぁ良かったな、少し心配してたんだ、製造現場に何かクレーム入ったんじゃないかって」
「そう言う話は無かったみたいですけど主任が上手く説明していたみたいですし」
「そうか、良かった。遅くまで大変だったな、ありがとう」
「いえいえ」

俺も結構言うようになったよなぁ~
まさかずっと御堂さんとSEXしていたなんて
天地が裂けても班長には想像すら出来ないだろう。

・・・・・・・・・
さてさて・・・どうするかな?
相手の記憶が残るのがネック・・・
眷属の記憶は残らない・・・・・・
それからお金の受け渡しを如何するかだ

銀行振込だと簡単に足が付く
手渡し?・・・顔が割れるだろう

俺は眷属ノートを使って
好きな女性と金さえ払えばやれるって方法を考えていた

男って奴はホントに好きな女とやる為ならお金を厭わない生き物だと思う
所詮、人間の三大欲求は食欲、性欲、睡眠欲だ。
それを否定するのは人間を否定するのと一緒だ

ただし女にも選ぶ権利はある・・・当たり前かw

しかし、眷属ノートでは眷属の記憶は消せても相手の記憶が残る
どうした物か?・・・なんでもかんでも思い通りにはいかないな
何か良い手はないのか?

その日は結局いい案も思いつかなくてただ仕事して終わった

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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