上 下
140 / 259
第4章 精霊駆動

第4章51幕 別れ<separation>

しおりを挟む
 『今みんなどこにいるの?』
 パーティーチャットで皆に聞きます。
 『今休憩所ー。見るものとか無かったー』
 するとステイシーから返事がありました。
 『そうなの?』
 『修練場は軍事機密だから見せられないってさ』
 エルマもそう教えてくれます。
 『わかった。じゃぁ休憩所まで戻るね』
 『まってるー』
 私は休憩所へ向かって歩き出しました。
 
 「おまたせ」
 「いや。それほどまってないよ。それより用は済んだのかい?」
 「うん。精霊駆動貰えた。でもちょっと変」
 「変とはどういうことだい?」
 「えっとね。ずっと起点のクエストがわからない状態だったのは話したっけ?」
 「あぁ。聞いたね」
 「その起点のクエストを『アクアンティア』で見つけたんだけど、それを進行したら精霊駆動がもらえちゃった。その先のクエストが今まだ出てない」
 「なるほどね。あぁ。あれじゃないか? 段階クエスト」
 「段階クエスト?」
 「うん。一つ目のクエストで手に入れたものを加工するときに何かしらのクエストが発生するタイプさ」
 あっ。そうかもしれません。
 「思うに精霊駆動とやらは、複数の入手方法があるのかもしれないね」
 「かもしれないね」
 入手する方法が一つだけとは限りませんよね。
 「さてこのあとはどうするつもりなのかな?」
 「私は本都市に戻ろうかなって」
 「じゃぁそれでいいね。皆もいいだろうか?」
 サツキがステイシーとエルマに聞きます。
 「いいよー」
 「いいよ」
 「あれ? マオは?」
 「マオは馬車で寝てるよ」
 「なるほど」
 「じゃぁ本都市に戻ろう」

 休憩所でクルミと合流します。
 「用は済んだ?」
 「うん。本都市に行こうと思う」
 「わかった。馬車だすね。マオさんは中で寝てる」
 「お願いね」
 「じゃぁ乗って。皆さんもお乗りください」
 
 「本都市まではちょっと距離があるのでゆっくりお過ごしください」
 そう言いながらクルミは馬車を発進させます。
 「この旅路が最後になっちゃうんだね」
 クルミが少し悲しそうに言います。
 「大丈夫。またお世話になるよ」
 「だといいな」

 私達もクルミも疲れているのか、本都市へ向かう道中会話はほとんどありませんでした。
 「もうじき到着です」
 「長い間ありがとね」
 「ううん。久々に楽しい仕事だった」
 「もし、もし早めに支店が開けるようだったらすぐ連絡するから」
 「これ受け取って」
 そう言って手綱を片手で持ち、カバンに入れていたものを私にくれます。
 「これは?」
 「精霊紙と精霊筆。これで連絡して」
 「わかった。ありがとう」
 「待ってるね。溜めたお金でフレンデールだけは引き取ろうと思ってる」
 「ならそれは経費だね」
 私は小包を渡します。
 「受け取れないよ」
 「受け取って。今までの仕事っぷりとかそう言うの諸々ひっくるめての最終報酬だから」
 「わかった。いつかチェリーのお店で働くときに労働で返す」
 「ありがとう」
 「じゃぁ到着。皆さんも足元お気をつけてお降りください」
 クルミが馬車を停め、私達は馬車から降ります。
 「ご利用ありがとうございました。またいつの日にか」
 「うん。きっと」
 「お世話になったねー」
 「ありがとね!」
 「助かった、わ」
 「君のこれからに幸あることを願う」
 皆が別れを告げると、少し泣きそうな顔をしたクルミは御者台に飛び乗り走り去っていきました。
 「なんかちょっと寂しい」
 「分かるよ。まぁ永久の別れじゃないんだ。いつかまた会える。それもそう遠くないうちに」
 「そうだね」
 慰めてくれているのかは分かりませんが、サツキの言う通り、永久の別れではないのでグッとこらえ、私は『精霊都市 エレスティアナ』へと帰ってきました。

 「宿は宿泊のままになってるよね?」
 エルマがそう聞いてきます。
 「そうだと思うけど、サツキどうだった?」
 私も色々あってよく覚えていないので、サツキに聞きます。
 「無論、長期間で宿泊予定を詰めてきたからね。向こう4.5日は泊まれるはずだ」
 「よかった。じゃぁ一度宿屋に行こうか。みんなも一度ログアウトしたいでしょ?」
 「そうだねー」
 「あたしも少し向こうでやることある」
 「マオも」
 「ワタシもだ。じゃぁ行こうか」
 歩き出したサツキについて私達も宿に向かって歩き始めます。
 
 「アンナさんお久しぶりです」
 「あー! チェリーさん! お久しぶりです」
 「『エレスティアーナ』に行ってきまして、ハンナとカンナの挨拶ついでにアンナさんのことも話してきました」
 「ありがとうございます。元気そうでしたか?」
 「ええ」
 「良かったです。あっお部屋そのままですのですぐ宿泊できますよ」
 「ありがとうございます」
 「またお話聞かせてくださいね」
 「はい。ではまた」
 私はそうアンナに挨拶をし、部屋へ行きます。
 自動で鍵穴に刺さる鍵を再び見てやはり便利だ、と思いつつ部屋へ入ります。
 心なしか家具が喜んでいるような気がしなくもないですが、ベッドに入り、一度ログアウトします。
 
 夕食にちょうど良い時間だったので早速自動調理機の拡張を使ってみます。
 やはり日本人ですし、ここは和食でしょう。
 自動調理機を動かし、和食を作ってもらいます。
 数分眺めていると、いつものようにプレートに乗って食事が出てきました。
 季節の野菜や魚のてんぷらが乗っていて、味噌汁もついている大変すばらしい物でした。
 家ではあまり食べることのない、ちゃんとした和食を久々に食べ、身も心も休まります。
 やはり日本人たるもの、和食ですね。
 デザートの拡張の中には和菓子などもあったのでそれを作らせ、舌鼓を打ちます。
 買ってよかったです。

 食事をしたら少し眠くなってしまったのですが、ゆっくりお風呂にでも浸かろうと思ったのでお湯を溜めます。
 ついでに脱いだ服を洗濯機に放り込み、乾燥までのコースを起動します。

 「ふぅー」
 やはりお風呂もいいですね。疲れが一気に取れるというか。
 あまり長く入っていると逆に疲れてしまうんですけどね。
 何事も適度にやらないといけませんよね。
 頭をわしゃわしゃ洗い、汚れを落とし切ったので、風呂から上がります。
 「お湯捨てといて」
 音声端末にそう指示を出し、脱衣所へと戻ります。
 感想されたパジャマを着込み、牛乳をのんで体を冷ますついでに動画投稿サイトで動画を見ます。

 どのくらい時間が経ったでしょうか。
 少しうとうとしてしまい、どこまで見たのか忘れてしまいました。
 なので私はベッドに入るべく立ち上がり、部屋へ戻ります。
 自分の匂いのするベッドに入ると否応なく夢の世界に引きずり込まれてしまいました。

 はっと目を覚まします。
 手元にあった携帯端末で時間を確認するとまだ夜中の2時を過ぎたところでした。
 端末をのぞき込んでいたので新着のメッセージに気が付きます。
 
 『智恵理先輩。お久しぶりです。最上桃子です。久々にお話したいので折り返し連絡くれますか?』

 小中高校時代の後輩で、実家のすぐ隣に住んでいた所謂幼馴染です。
 何かあったのかな、と少し心配になりながら私は折り返しの電話を入れます。
                                      to be continued...
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ーOnly Life Onlineーで生産職中心に遊んでたらトッププレイヤーの仲間入り

星月 ライド
ファンタジー
親友の勧めで遊び、マイペースに進めていたら何故かトッププレイヤーになっていた!? ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 注意事項 ※主人公リアルチート 暴力・流血表現 VRMMO 一応ファンタジー もふもふにご注意ください。

【第1章完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。

モノ作りに没頭していたら、いつの間にかトッププレイヤーになっていた件

こばやん2号
ファンタジー
高校一年生の夏休み、既に宿題を終えた山田彰(やまだあきら)は、美人で巨乳な幼馴染の森杉保奈美(もりすぎほなみ)にとあるゲームを一緒にやらないかと誘われる。 だが、あるトラウマから彼女と一緒にゲームをすることを断った彰だったが、そのゲームが自分の好きなクラフト系のゲームであることに気付いた。 好きなジャンルのゲームという誘惑に勝てず、保奈美には内緒でゲームを始めてみると、あれよあれよという間にトッププレイヤーとして認知されてしまっていた。 これは、ずっと一人でプレイしてきたクラフト系ゲーマーが、多人数参加型のオンラインゲームに参加した結果どうなるのかと描いた無自覚系やらかしVRMMO物語である。 ※更新頻度は不定期ですが、よければどうぞ

VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。

DPO~拳士は不遇職だけど武術の心得があれば問題ないよね?

破滅
ファンタジー
2180年1月14日DPOドリームポッシビリティーオンラインという完全没入型VRMMORPGが発売された。 そのゲームは五感を完全に再現し広大なフィールドと高度なグラフィック現実としか思えないほどリアルを追求したゲームであった。 無限に存在する職業やスキルそれはキャラクター1人1人が自分に合ったものを選んで始めることができる そんな中、神崎翔は不遇職と言われる拳士を選んでDPOを始めた… 表紙のイラストを書いてくれたそらはさんと イラストのurlになります 作品へのリンク(https://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=43088028)

Alliance Possibility On-line~ロマンプレイのプレーヤーが多すぎる中で、普通にプレイしてたら最強になっていた~

百々 五十六
ファンタジー
極振りしてみたり、弱いとされている職やスキルを使ったり、あえてわき道にそれるプレイをするなど、一見、非効率的なプレイをして、ゲーム内で最強になるような作品が流行りすぎてしまったため、ゲームでみんな変なプレイ、ロマンプレイをするようになってしまった。 この世界初のフルダイブVRMMORPGである『Alliance Possibility On-line』でも皆ロマンを追いたがる。 憧れの、個性あふれるプレイ、一見非効率なプレイ、変なプレイを皆がしだした。 そんな中、実直に地道に普通なプレイをする少年のプレイヤーがいた。 名前は、早乙女 久。 プレイヤー名は オクツ。 運営が想定しているような、正しい順路で少しずつ強くなる彼は、非効率的なプレイをしていくプレイヤーたちを置き去っていく。 何か特別な力も、特別な出会いもないまま進む彼は、回り道なんかよりもよっぽど効率良く先頭をひた走る。 初討伐特典や、先行特典という、優位性を崩さず実直にプレイする彼は、ちゃんと強くなるし、ちゃんと話題になっていく。 ロマンばかり追い求めたプレイヤーの中で”普通”な彼が、目立っていく、新感覚VRMMO物語。

いや、一応苦労してますけども。

GURA
ファンタジー
「ここどこ?」 仕事から帰って最近ハマってるオンラインゲームにログイン。 気がつくと見知らぬ草原にポツリ。 レベル上げとモンスター狩りが好きでレベル限界まで到達した、孤高のソロプレイヤー(とか言ってるただの人見知りぼっち)。 オンラインゲームが好きな25歳独身女がゲームの中に転生!? しかも男キャラって...。 何の説明もなしにゲームの中の世界に入り込んでしまうとどういう行動をとるのか? なんやかんやチートっぽいけど一応苦労してるんです。 お気に入りや感想など頂けると活力になりますので、よろしくお願いします。 ※あまり気にならないように製作しているつもりですが、TSなので苦手な方は注意して下さい。 ※誤字・脱字等見つければその都度修正しています。

運極ちゃんの珍道中!〜APの意味がわからなかったのでとりあえず運に極振りしました〜

斑鳩 鳰
ファンタジー
今話題のVRMMOゲーム"Another World Online"通称AWO。リアルをとことん追求した設計に、壮大なグラフィック。多種多様なスキルで戦闘方法は無限大。 ひょんなことからAWOの第二陣としてプレイすることになった女子高生天草大空は、チュートリアルの段階で、AP振り分けの意味が分からず困ってしまう。 「この中じゃあ、運が一番大切だよね。」 とりあえず運に極振りした大空は、既に有名人になってしまった双子の弟や幼馴染の誘いを断り、ソロプレーヤーとしてほのぼのAWOの世界を回ることにした。 それからレベルが上がってもAPを運に振り続ける大空のもとに個性の強い仲間ができて... どこか抜けている少女が道端で出会った仲間たちと旅をするほのぼの逆ハーコメディー 一次小説処女作です。ツッコミどころ満載のあまあま設定です。 作者はぐつぐつに煮たお豆腐よりもやわやわなメンタルなのでお手柔らかにお願いします。

処理中です...