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第4章 精霊駆動
第4章43幕 <サツキ修行編参>
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「ふぅ。ごちそう様。これはどこの食材を?」
「これは『ブラルタ』からの交易品を本都市の市場で購入したものだよ」
「ほう。実はワタシは『ブラルタ』に行ったことが無いんだ。美味しい食べ物が多いのかい?」
「うん。食材も料理も別格だよ」
「それは期待できるね。この修行が終わって、チェリーの用事が済んだら行ってみようかな」
「いってみて。じゃぁ訓練再開しよう」
「そうだね」
ワタシは立ち上がりリアルと同じように伸びをする。
「おや。訓練を再開するのですネ」
「あぁ。そのつもり……誰かな?」
「失礼しましタ。私はリョクと申しまス。精霊神様の眷属ですネ」
「こちらこそ失礼した。サツキだ」
「白が来ると思ってた」
「白が来るつもりでしたヨ。ただ精霊神様が駄々っ子発病してしまったので残ってもらいましタ」
「そうだったのね。サツキ準備はいい?」
「あぁ」
「じゃぁまず先ほどの続きかな」
「わかった」
シャンプーに言われた通り、先ほど赤とやっていた訓練のように、魔銃に魔力を流し込みながら、格闘をし、打撃の瞬間にスキルを放つという一連の動作を始める。
「ほウ。これはなかなかですネ。ほとんど基礎ができていまス」
「赤のおかげなのか、外の人の万能性のおかげなのか」
「彼女の場合、どちらでも無いようにみえますけどネ。一歩進んだ訓練に行きましょうカ」
サツキの視界に入らない位置でリョクが魔銃を顕現させ、構える。
「これを使うのも久々ですネ」
そしていきなりサツキの魔銃目掛けて玉を飛ばす。
「!?」
格闘の為に持ち上げていた右手の魔銃に直撃し、蓄えられていた魔力が霧散してしまった。
「なるほど。外部からの意図しない強力な刺激があると維持が困難になる、そういうわけだね」
「えエ。一度で理解できるのはさすがですネ。では私とシャンプーでタイミングを見て刺激をあげますからお気をつけテ」
「あぁ。思い描いていた修行そのものだ」
魔銃に込める魔力を少し増やしつつ、ワタシはそう言い放った。
日が沈み、2時間ほど経った現在、ワタシは外部からの刺激に惑わされないようになってきた。
「ふっ!」
込める魔力を一瞬だけ増やし、魔銃に直撃した玉を魔力の厚さを変える事で弾く。
ここまでは反射として行えるようになった。
「二度目でス」
そして連続でリョクが魔銃に向かって玉を撃ちこんでくる。
無意識で行えていた、≪いなし≫の行動に意識が持っていかれ、魔力が霧散してしまう。
「はっ……はっ……」
「少し休憩にしましょうカ」
リョクが顕現させていた魔銃を消滅させ、指をパチリと鳴らすと、目の前に場に似合わないティーセットが出てきた。
「これは凄いね」
「私は精霊神様のお世話係ですからネ。このくらいは晩飯前ですネ」
「朝飯前ではないのだね」
「魔精霊は晩飯前と言っていまス」
「そうなのか。ではいただくね」
椅子に座り、出来上がった紅茶で喉を潤す。
「これは、おいしいね」
運動中であることを考えてなのか、少し砂糖が多めに入っており、一息に煽っても平気な温度で作られていた。
「外の人に褒められたのは初めてでス。というより初めてソトの人にあったんですけどネ」
「そう聞くと少し申し訳ない気持ちになって来るね。ワタシは他の人と比べて、少し変わっている」
「精霊の加護を受け得る者は皆どこかかわっていまス」
「ふふっ。そうだね」
仲の良い一人の女性を思い出しつつ、笑いながら答えた。
その日私は【衝銃士】の【称号】を取ることはできず、リアルに帰り、睡眠を取った。
6時間ほどの適度な睡眠から目を冷まし、ワタシはシャワーを浴びる。
この起き抜けのまどろみの時間も悪くは無いんだけれど、如何せん時間がもったいない気がしてしまうからね。
少し冷えてきた事もあり、熱めのお湯を全身に浴びると、冷えていた身体の末端まで血が通うような感覚がし、一気に意識が覚醒する。
身体が冷えないうちに、全身を拭き、バスローブを着用する。
コーヒーを入れ、日課となっている情報番組を眺めつつ、軽めの朝食を取る。
あぁ。そうだった。あまり悠長にはしていられないね。早めにログインしようか。
そう考え、コーヒーをコクコウと飲み干し、シンクにカップを沈め、部屋へと戻る。
椅子をリクライディングさせ、頭に専横端末をかぶり、<Imperial Of Egg>の世界へと没入する。
「おや?」
ログインしたワタシは異変に気付いた。
やはりそのようだ。
何かと言われれば、【衝銃士】を獲得していた。
理由はわからないが、取得できた事でステップアップが望めそうだ。
すでにこの狭間と呼ばれる訓練場には、赤とシャンプーの姿があった。
「やぁ。おはよう」
「おはよう」
「おはようございます」
「今しがた戻ってきたんだけどね、【衝銃士】を手に入れていたようだ」
「おお。一晩で! これは素晴らしい」
「私もびっくり。寝てる間に獲得したのは一緒だけど早いね」
寝ている間に獲得していたのか。筋肉の超回復みたいなものなのだろうか。
「これでやっと次のステップに入れるね」
「そうですね。次は【衝銃士】で≪銃衝術≫を用いて私を攻撃してみてください」
「加減が分からないから、気を付けてくれ」
「大丈夫です。実際の肉体で存在しているわけではないので」
「そうか。では行くよ」
≪銃衝術≫。
頭の中でそう念じながら右手の【機甲魔銃 シャンガンカル】を突き出す。
「!?」
昨日までとは違い魔力の些細なコントロールが可能になり、なおかつ、無意識の内に魔銃から、最適なタイミングで魔力が放たれた。
「みごとです」
腹部が無くなり、反対側が見えるようになってしまった、赤は一瞬で元の姿に戻り、そう言った。
「≪銃衝術≫はほぼ完ぺきですね」
「ソウみたいだね。だから次はサツキに必要な、私の秘伝と、【奇銃士】を取ってもらう」
「分かった。どちらからやるべきかな?」
「魔銃を複数扱うなら先に【奇銃士】だね。秘伝は最後に伝えるのでいいかな。それほど伝承に時間がかかるものじゃないし」
「わかった。【奇銃士】はどうやって取ればいいんだい?」
「複数の魔銃を取り出してみて」
「こうかな?」
言われた通りに魔銃をいくつも取り出す。
「それをくるくる回したり、入れ替えたり、色々やるんだよ。【奇術師】みたいに」
「なるほど。ワタシはこういうの好きでね」
そう言いながら魔銃を複数上空に飛ばしジャグリングしながら一発ずつ撃っていく。
「十分【奇銃士】のレベルだと思う。もしかしてそっち系の【称号】を持っているのかな?」
「同じ系統かどうかは分からないけれど、【怪術師】は持っているよ」
「あぁ。なるほど。【怪術師】は【奇術師】よりも幅が狭いですが概ね同じ系統ですね。幅が狭いというのは効果の対象ですけど。例えばですね。【奇術師】は他人のものを操作できますね。こんな感じです」
そう実践を始める赤がワタシが手に持っていた魔銃のグリップにカードを一枚出現させた。
「【怪術師】は自分しか対象に取れませんが、その分質と強度が高いのです」
「なるほど。分かりやすい説明で、とても助かるよ」
「いえいえ」
「つまりサツキにはその過程を全部飛ばして秘伝を伝えれば良いということだね。早速やろうか」
「あ、あぁ」
そしてチェリー達と別れてまだ一夜しか明けていないのだが、免許皆伝として私は解放され、先ほどまでチェリー達がいた、『雷精の里 サンデミリオン』という場所まで送って貰った。
しかし、私が到着した矢先、突然いなくなった愛猫姫とエルマ、そしてほどほどの速度で移動するステイシーとチェリーに少しの不安を感じつつも、おとなしく喫茶店で待っていようと考えた。
to be continued...
「これは『ブラルタ』からの交易品を本都市の市場で購入したものだよ」
「ほう。実はワタシは『ブラルタ』に行ったことが無いんだ。美味しい食べ物が多いのかい?」
「うん。食材も料理も別格だよ」
「それは期待できるね。この修行が終わって、チェリーの用事が済んだら行ってみようかな」
「いってみて。じゃぁ訓練再開しよう」
「そうだね」
ワタシは立ち上がりリアルと同じように伸びをする。
「おや。訓練を再開するのですネ」
「あぁ。そのつもり……誰かな?」
「失礼しましタ。私はリョクと申しまス。精霊神様の眷属ですネ」
「こちらこそ失礼した。サツキだ」
「白が来ると思ってた」
「白が来るつもりでしたヨ。ただ精霊神様が駄々っ子発病してしまったので残ってもらいましタ」
「そうだったのね。サツキ準備はいい?」
「あぁ」
「じゃぁまず先ほどの続きかな」
「わかった」
シャンプーに言われた通り、先ほど赤とやっていた訓練のように、魔銃に魔力を流し込みながら、格闘をし、打撃の瞬間にスキルを放つという一連の動作を始める。
「ほウ。これはなかなかですネ。ほとんど基礎ができていまス」
「赤のおかげなのか、外の人の万能性のおかげなのか」
「彼女の場合、どちらでも無いようにみえますけどネ。一歩進んだ訓練に行きましょうカ」
サツキの視界に入らない位置でリョクが魔銃を顕現させ、構える。
「これを使うのも久々ですネ」
そしていきなりサツキの魔銃目掛けて玉を飛ばす。
「!?」
格闘の為に持ち上げていた右手の魔銃に直撃し、蓄えられていた魔力が霧散してしまった。
「なるほど。外部からの意図しない強力な刺激があると維持が困難になる、そういうわけだね」
「えエ。一度で理解できるのはさすがですネ。では私とシャンプーでタイミングを見て刺激をあげますからお気をつけテ」
「あぁ。思い描いていた修行そのものだ」
魔銃に込める魔力を少し増やしつつ、ワタシはそう言い放った。
日が沈み、2時間ほど経った現在、ワタシは外部からの刺激に惑わされないようになってきた。
「ふっ!」
込める魔力を一瞬だけ増やし、魔銃に直撃した玉を魔力の厚さを変える事で弾く。
ここまでは反射として行えるようになった。
「二度目でス」
そして連続でリョクが魔銃に向かって玉を撃ちこんでくる。
無意識で行えていた、≪いなし≫の行動に意識が持っていかれ、魔力が霧散してしまう。
「はっ……はっ……」
「少し休憩にしましょうカ」
リョクが顕現させていた魔銃を消滅させ、指をパチリと鳴らすと、目の前に場に似合わないティーセットが出てきた。
「これは凄いね」
「私は精霊神様のお世話係ですからネ。このくらいは晩飯前ですネ」
「朝飯前ではないのだね」
「魔精霊は晩飯前と言っていまス」
「そうなのか。ではいただくね」
椅子に座り、出来上がった紅茶で喉を潤す。
「これは、おいしいね」
運動中であることを考えてなのか、少し砂糖が多めに入っており、一息に煽っても平気な温度で作られていた。
「外の人に褒められたのは初めてでス。というより初めてソトの人にあったんですけどネ」
「そう聞くと少し申し訳ない気持ちになって来るね。ワタシは他の人と比べて、少し変わっている」
「精霊の加護を受け得る者は皆どこかかわっていまス」
「ふふっ。そうだね」
仲の良い一人の女性を思い出しつつ、笑いながら答えた。
その日私は【衝銃士】の【称号】を取ることはできず、リアルに帰り、睡眠を取った。
6時間ほどの適度な睡眠から目を冷まし、ワタシはシャワーを浴びる。
この起き抜けのまどろみの時間も悪くは無いんだけれど、如何せん時間がもったいない気がしてしまうからね。
少し冷えてきた事もあり、熱めのお湯を全身に浴びると、冷えていた身体の末端まで血が通うような感覚がし、一気に意識が覚醒する。
身体が冷えないうちに、全身を拭き、バスローブを着用する。
コーヒーを入れ、日課となっている情報番組を眺めつつ、軽めの朝食を取る。
あぁ。そうだった。あまり悠長にはしていられないね。早めにログインしようか。
そう考え、コーヒーをコクコウと飲み干し、シンクにカップを沈め、部屋へと戻る。
椅子をリクライディングさせ、頭に専横端末をかぶり、<Imperial Of Egg>の世界へと没入する。
「おや?」
ログインしたワタシは異変に気付いた。
やはりそのようだ。
何かと言われれば、【衝銃士】を獲得していた。
理由はわからないが、取得できた事でステップアップが望めそうだ。
すでにこの狭間と呼ばれる訓練場には、赤とシャンプーの姿があった。
「やぁ。おはよう」
「おはよう」
「おはようございます」
「今しがた戻ってきたんだけどね、【衝銃士】を手に入れていたようだ」
「おお。一晩で! これは素晴らしい」
「私もびっくり。寝てる間に獲得したのは一緒だけど早いね」
寝ている間に獲得していたのか。筋肉の超回復みたいなものなのだろうか。
「これでやっと次のステップに入れるね」
「そうですね。次は【衝銃士】で≪銃衝術≫を用いて私を攻撃してみてください」
「加減が分からないから、気を付けてくれ」
「大丈夫です。実際の肉体で存在しているわけではないので」
「そうか。では行くよ」
≪銃衝術≫。
頭の中でそう念じながら右手の【機甲魔銃 シャンガンカル】を突き出す。
「!?」
昨日までとは違い魔力の些細なコントロールが可能になり、なおかつ、無意識の内に魔銃から、最適なタイミングで魔力が放たれた。
「みごとです」
腹部が無くなり、反対側が見えるようになってしまった、赤は一瞬で元の姿に戻り、そう言った。
「≪銃衝術≫はほぼ完ぺきですね」
「ソウみたいだね。だから次はサツキに必要な、私の秘伝と、【奇銃士】を取ってもらう」
「分かった。どちらからやるべきかな?」
「魔銃を複数扱うなら先に【奇銃士】だね。秘伝は最後に伝えるのでいいかな。それほど伝承に時間がかかるものじゃないし」
「わかった。【奇銃士】はどうやって取ればいいんだい?」
「複数の魔銃を取り出してみて」
「こうかな?」
言われた通りに魔銃をいくつも取り出す。
「それをくるくる回したり、入れ替えたり、色々やるんだよ。【奇術師】みたいに」
「なるほど。ワタシはこういうの好きでね」
そう言いながら魔銃を複数上空に飛ばしジャグリングしながら一発ずつ撃っていく。
「十分【奇銃士】のレベルだと思う。もしかしてそっち系の【称号】を持っているのかな?」
「同じ系統かどうかは分からないけれど、【怪術師】は持っているよ」
「あぁ。なるほど。【怪術師】は【奇術師】よりも幅が狭いですが概ね同じ系統ですね。幅が狭いというのは効果の対象ですけど。例えばですね。【奇術師】は他人のものを操作できますね。こんな感じです」
そう実践を始める赤がワタシが手に持っていた魔銃のグリップにカードを一枚出現させた。
「【怪術師】は自分しか対象に取れませんが、その分質と強度が高いのです」
「なるほど。分かりやすい説明で、とても助かるよ」
「いえいえ」
「つまりサツキにはその過程を全部飛ばして秘伝を伝えれば良いということだね。早速やろうか」
「あ、あぁ」
そしてチェリー達と別れてまだ一夜しか明けていないのだが、免許皆伝として私は解放され、先ほどまでチェリー達がいた、『雷精の里 サンデミリオン』という場所まで送って貰った。
しかし、私が到着した矢先、突然いなくなった愛猫姫とエルマ、そしてほどほどの速度で移動するステイシーとチェリーに少しの不安を感じつつも、おとなしく喫茶店で待っていようと考えた。
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