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第4章 精霊駆動
第4章24幕 怪力<Herculean strength>
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「ねおんさん……普通の人だった……」
扉の付近で待っていた4人の所へ戻り、私はそう言いました。
「本当かい? ロールプレイにしては自然だったね」
「いやいや、不自然でしょ」
エルマが首を横に振りながら答えます。
「まぁ人のしゃべり方なんていちいち気にしてないなー」
「マオ、も」
貴方たちも十分不自然な方ですよ。
『水精の湖 アクアンティア』へは先ほど軽く立ち寄っただけで、詳しく見ていなかったのでそちらへ行くことになりました。
「宿はどうしようか。こっちに泊まる?」
私がそう皆に聞きます。
「『エレスティアナ』に戻るメリットはそんな無いんじゃないかなー?」
「それもそうだね。どちらにしろ、向こうの宿は十日間押さえているわけだし、戻って宿なしにはならないからこちらでいいんじゃないかい?」
「マオ、どっちでも」
「あたしもどっちでもいいよ」
「じゃぁこっちに泊まろっか。限定クエストとかあるかもしれないし」
「チェリーの目的は精霊駆動式の二輪車だもんね」
「うん。手掛かりになるクエストを探したいな。情報屋からもらった入手クエストの詳細にも起点になるクエストは書いてなかったんだ」
「あー。なら案内所いかないとだねー。その前に宿だけどー」
「さらにいうとその前に『アクアンティア』に到達しないといけないね。幸い、そこまで遠くない、新武装の感触を確かめつつ行くとしよう」
『ねおん』周辺は樹と湖しかなく、それほど隠れやすいという印象はなかったのですが、『アクアンティア』の中心街へ向かうには森を抜けなければいけません。
ここは視界があまりよくないので、モンスターが潜伏している可能性があります。
先頭を歩くサツキと後方を歩くステイシーが戦闘態勢でいてくれているので危険は少ないでしょう。
「そういえばエルマ。あの謎果物は?」
「溶けて消えた……」
「やっぱりそうなんだ。インベントリに入れてても消えるのかな?」
「どうだろう。また買ってみよう」
ちょっと気に入ってるじゃん。
「お二人さん。楽しい会話中、割り込んで申し訳ないんだがモンスターだよ」
先頭を歩くサツキから警告が届いたので、会話を一度中断し、辺りを警戒します。
「『エレスティアナ』のモンスター
はみんな夜行性って聞いてたけど、昼間は寝てて襲ってこないだけなのかな?」
「どうだろうね。どちらかというと、精霊の力に中てられている感じだけれどね。では早速新武装をお披露目するとしようか」
「じゃぁ私とエルマはサポートで愛猫姫はステイシーと後方警戒ね」
「りょうかいー」
「わかったわ」
「ふふっ。いいチームになってきたね。≪クイック≫」
サツキはそう笑みを浮かべながら、先ほど購入したブーツのスキルを発動させました。一時的にAGIを底上げできるバフ系スキルだそうです。
「命中率にある意味で補正が入るいい、防具だ。では武器の方も試させてもらおうか。【機甲魔銃 シャンガンカル】存分に振るうがいい。≪エンチャント・サンダー≫、≪アイス・ショット≫」
魔銃が帯電し、氷属性の玉に雷属性を付与していますね。
なるほど。複数属性がわりとお手軽に使えるわけですね。それで【精霊女王】の効果を使えば……。あっ。私普通に勝てそうもないですね。
「ほう。なるほど。これはいい武器だ。でも残念なことに、このモンスターは魔法耐性が高い様だね。お手上げだ」
そう言ってサツキは中衛の位置にいる私とエルマの位置に後退してきました。
「物理はまだ使えないからね。あとはよろしく頼むよ」
「任せて!」
魔法剣を抜刀したエルマが前衛の位置へと走っていきます。魔法剣なら普通に斬れますし、物理耐性が低い敵なら苦労しないでしょう。
それよりも警戒すべきは……。
「チェリーお出ましだー!」
来ると思ってましたよ。
追手が5人とか少なすぎますからね。
最低でも10人、多くて20人を考えていました。
「昏睡させるよ。ガードよろしく」
「まかせてー」
ステイシーが私に障壁を張ってくれました。ステイシーの障壁なら普通に耐えそうなので、このまま詠唱始めちゃいましょうか。
「……『眠レ 我ガ歌ニテ』≪スリープ≫」
私が無属性魔法の≪スリープ≫を発動し、周辺に響かせます。
ちゃんとやるんでしたら一度≪探知≫を使って、周りに関係ない人がいないかたしかめなきゃいけないんですけど、夜狂暴化するモンスターが跋扈する森を散歩してる人はいなそうですしね。今回は省略です。
ドサドサドサと数人が倒れる音がします。
んー。やはりこちらにも状態異常に強い人を入れていたようですね。二人倒れていないようです。
「≪ファイヤー・ボール≫」
「≪サンダー・ボール≫」
魔導師二人ですか。
「薙ぎ、払って、≪ウォール≫」
愛猫姫が開いた扇子を縦に振り上げると、細い竜巻が生まれ、相手の魔法をかき消していました。
「いい魔法だね。美味しいところだけ頂こう。≪スタン・ブレッド≫」
私の後ろから魔銃でサツキが麻痺させる効果を持つ玉を撃ち、それが魔導師の頭部に直撃したようで、意識を失い倒れました。
「さてこれで処理が完了したわけだが、こいつらをまた連れて行くのは多少めんどくさいね」
「誰か紐持ってない?」
私はそう聞きます。
「紐なら僕が持ってるよー」
「貸して」
「ほい」
そして受け取った紐で追手の5人を縛ります。
「なるほど。身動きが取れないようにして放置するわけだね」
「えっ?」
5人を一まとめに縛り上げ、余った紐を私は握ります。
「引きずっていくつもりだけど?」
「あー。なんていうか……。まぁ、それがいいね」
「じゃぁ私が引きずっていくから護衛と警戒よろしくね。って言ってもそれほど中心街が遠いわけじゃなさそうだけど」
その後は何かを引きずった痕を残しつつ、中心街へとたどり着きました。
「何度もすまないね。また道中でスパイを見つけたから昏倒させて連れて来たよ」
「ご協力感謝致します!」
何度もすみません。
先ほど入らなかった中心街へと入ります。
中心街は思ったよりも広く、整備されていました。
湖をどこからでも望めるような作りであり、観光で来るにはもってこいだと思いましたが、人通りはなぜか少ないです。
「思うんだけど、いいかな?」
サツキも少し疑問そうな声で言葉を吐き出し始めます。
「元々、複数の都市がある連邦国家のようなものだったそうだね」
「そう聞いてる」
「この差は一体何なんだろうか。『エレスティアナ』がプライメイトシティというわけではないのだろう?」
「わからない。でも異常なまでに人が少ない」
私達が答えを知らぬ問いを繰り返していると、一人の少女が声をかけてきました。
「お姉ちゃんたちは観光客なの?」
するとすっとしゃがみ目線を合わせたサツキが答えます。
「あぁ。そうだよ。この都市はきれいだから、一度見ておこうと思ってね」
「この都市が好き?」
「正直なところ、来るまでは何とも思っていなかったね。でもこの景色を嫌いになれると思うかい?」
「ありがとう。みんなそう言ってくれる」
「一つ聞いてもいいかい?」
「いいよ」
「どうしてこんなに美しいのに人がいないんだい?」
「みんな、首都に連れて行かれちゃうの。それが嫌で国を出る人もいた。お兄ちゃんもそうだった」
「そうか。君はお兄さんがいたんだね。こんな時間に一人でいるのは危ないよ。おうちまで送るから場所教えてくれるかな?」
「おうちはあそこ」
そしてっその少女は中心にあまり主張せず建っているお城を指さしました。
またお姫様か……。
その少女を連れ、お城までやってきました。
「すまない。この子を保護したのだが」
「ん? あぁ。女給の娘か」
あっ。お姫様じゃないんですね。
「引き渡せ」
私はそう言う兵士から視線を少女へと移します。
するとサツキの服をぎゅっと握り、なるべくみられないように隠れているのがうかがえます。
何か事情がありそうですね。
to be continued...
扉の付近で待っていた4人の所へ戻り、私はそう言いました。
「本当かい? ロールプレイにしては自然だったね」
「いやいや、不自然でしょ」
エルマが首を横に振りながら答えます。
「まぁ人のしゃべり方なんていちいち気にしてないなー」
「マオ、も」
貴方たちも十分不自然な方ですよ。
『水精の湖 アクアンティア』へは先ほど軽く立ち寄っただけで、詳しく見ていなかったのでそちらへ行くことになりました。
「宿はどうしようか。こっちに泊まる?」
私がそう皆に聞きます。
「『エレスティアナ』に戻るメリットはそんな無いんじゃないかなー?」
「それもそうだね。どちらにしろ、向こうの宿は十日間押さえているわけだし、戻って宿なしにはならないからこちらでいいんじゃないかい?」
「マオ、どっちでも」
「あたしもどっちでもいいよ」
「じゃぁこっちに泊まろっか。限定クエストとかあるかもしれないし」
「チェリーの目的は精霊駆動式の二輪車だもんね」
「うん。手掛かりになるクエストを探したいな。情報屋からもらった入手クエストの詳細にも起点になるクエストは書いてなかったんだ」
「あー。なら案内所いかないとだねー。その前に宿だけどー」
「さらにいうとその前に『アクアンティア』に到達しないといけないね。幸い、そこまで遠くない、新武装の感触を確かめつつ行くとしよう」
『ねおん』周辺は樹と湖しかなく、それほど隠れやすいという印象はなかったのですが、『アクアンティア』の中心街へ向かうには森を抜けなければいけません。
ここは視界があまりよくないので、モンスターが潜伏している可能性があります。
先頭を歩くサツキと後方を歩くステイシーが戦闘態勢でいてくれているので危険は少ないでしょう。
「そういえばエルマ。あの謎果物は?」
「溶けて消えた……」
「やっぱりそうなんだ。インベントリに入れてても消えるのかな?」
「どうだろう。また買ってみよう」
ちょっと気に入ってるじゃん。
「お二人さん。楽しい会話中、割り込んで申し訳ないんだがモンスターだよ」
先頭を歩くサツキから警告が届いたので、会話を一度中断し、辺りを警戒します。
「『エレスティアナ』のモンスター
はみんな夜行性って聞いてたけど、昼間は寝てて襲ってこないだけなのかな?」
「どうだろうね。どちらかというと、精霊の力に中てられている感じだけれどね。では早速新武装をお披露目するとしようか」
「じゃぁ私とエルマはサポートで愛猫姫はステイシーと後方警戒ね」
「りょうかいー」
「わかったわ」
「ふふっ。いいチームになってきたね。≪クイック≫」
サツキはそう笑みを浮かべながら、先ほど購入したブーツのスキルを発動させました。一時的にAGIを底上げできるバフ系スキルだそうです。
「命中率にある意味で補正が入るいい、防具だ。では武器の方も試させてもらおうか。【機甲魔銃 シャンガンカル】存分に振るうがいい。≪エンチャント・サンダー≫、≪アイス・ショット≫」
魔銃が帯電し、氷属性の玉に雷属性を付与していますね。
なるほど。複数属性がわりとお手軽に使えるわけですね。それで【精霊女王】の効果を使えば……。あっ。私普通に勝てそうもないですね。
「ほう。なるほど。これはいい武器だ。でも残念なことに、このモンスターは魔法耐性が高い様だね。お手上げだ」
そう言ってサツキは中衛の位置にいる私とエルマの位置に後退してきました。
「物理はまだ使えないからね。あとはよろしく頼むよ」
「任せて!」
魔法剣を抜刀したエルマが前衛の位置へと走っていきます。魔法剣なら普通に斬れますし、物理耐性が低い敵なら苦労しないでしょう。
それよりも警戒すべきは……。
「チェリーお出ましだー!」
来ると思ってましたよ。
追手が5人とか少なすぎますからね。
最低でも10人、多くて20人を考えていました。
「昏睡させるよ。ガードよろしく」
「まかせてー」
ステイシーが私に障壁を張ってくれました。ステイシーの障壁なら普通に耐えそうなので、このまま詠唱始めちゃいましょうか。
「……『眠レ 我ガ歌ニテ』≪スリープ≫」
私が無属性魔法の≪スリープ≫を発動し、周辺に響かせます。
ちゃんとやるんでしたら一度≪探知≫を使って、周りに関係ない人がいないかたしかめなきゃいけないんですけど、夜狂暴化するモンスターが跋扈する森を散歩してる人はいなそうですしね。今回は省略です。
ドサドサドサと数人が倒れる音がします。
んー。やはりこちらにも状態異常に強い人を入れていたようですね。二人倒れていないようです。
「≪ファイヤー・ボール≫」
「≪サンダー・ボール≫」
魔導師二人ですか。
「薙ぎ、払って、≪ウォール≫」
愛猫姫が開いた扇子を縦に振り上げると、細い竜巻が生まれ、相手の魔法をかき消していました。
「いい魔法だね。美味しいところだけ頂こう。≪スタン・ブレッド≫」
私の後ろから魔銃でサツキが麻痺させる効果を持つ玉を撃ち、それが魔導師の頭部に直撃したようで、意識を失い倒れました。
「さてこれで処理が完了したわけだが、こいつらをまた連れて行くのは多少めんどくさいね」
「誰か紐持ってない?」
私はそう聞きます。
「紐なら僕が持ってるよー」
「貸して」
「ほい」
そして受け取った紐で追手の5人を縛ります。
「なるほど。身動きが取れないようにして放置するわけだね」
「えっ?」
5人を一まとめに縛り上げ、余った紐を私は握ります。
「引きずっていくつもりだけど?」
「あー。なんていうか……。まぁ、それがいいね」
「じゃぁ私が引きずっていくから護衛と警戒よろしくね。って言ってもそれほど中心街が遠いわけじゃなさそうだけど」
その後は何かを引きずった痕を残しつつ、中心街へとたどり着きました。
「何度もすまないね。また道中でスパイを見つけたから昏倒させて連れて来たよ」
「ご協力感謝致します!」
何度もすみません。
先ほど入らなかった中心街へと入ります。
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「思うんだけど、いいかな?」
サツキも少し疑問そうな声で言葉を吐き出し始めます。
「元々、複数の都市がある連邦国家のようなものだったそうだね」
「そう聞いてる」
「この差は一体何なんだろうか。『エレスティアナ』がプライメイトシティというわけではないのだろう?」
「わからない。でも異常なまでに人が少ない」
私達が答えを知らぬ問いを繰り返していると、一人の少女が声をかけてきました。
「お姉ちゃんたちは観光客なの?」
するとすっとしゃがみ目線を合わせたサツキが答えます。
「あぁ。そうだよ。この都市はきれいだから、一度見ておこうと思ってね」
「この都市が好き?」
「正直なところ、来るまでは何とも思っていなかったね。でもこの景色を嫌いになれると思うかい?」
「ありがとう。みんなそう言ってくれる」
「一つ聞いてもいいかい?」
「いいよ」
「どうしてこんなに美しいのに人がいないんだい?」
「みんな、首都に連れて行かれちゃうの。それが嫌で国を出る人もいた。お兄ちゃんもそうだった」
「そうか。君はお兄さんがいたんだね。こんな時間に一人でいるのは危ないよ。おうちまで送るから場所教えてくれるかな?」
「おうちはあそこ」
そしてっその少女は中心にあまり主張せず建っているお城を指さしました。
またお姫様か……。
その少女を連れ、お城までやってきました。
「すまない。この子を保護したのだが」
「ん? あぁ。女給の娘か」
あっ。お姫様じゃないんですね。
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私はそう言う兵士から視線を少女へと移します。
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