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第4章 精霊駆動
第4章9幕 液体金属<liquid metal>
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「まずインベントリにおいておける食べ物買いに行こうか」
「そう、ね。キャンプ、みたいで、楽しみ、だわ」
レディンに送ってもらうつもりなので道中の食糧などは考えなくてもいいですが、都市によって食糧が異なるので食べなれた食材を持っていくのは大切です。
『精霊都市 エレスティアナ』はご飯美味しくないと聞きますし。
『商都 ディレミアン』は商都というだけあって他の地域の食材が入手しやすいので好みの食材をたくさん買い込みます。
そして街の外でも調理ができるように、簡易料理キットも購入しておきます。
VR化する前は、簡易料理キットがなくても料理できたのですが、この辺はリアリティーの追求といったところでしょうか。
一通りの買い物を終え、エルマ、ステイシーと合流することになりました。
「チェリーはなにかったのー?」
そうステイシーに聞かれ、少し恥ずかしいですが、答えます。
「その……『ヴェンヘイデン』の食材が恋しくなった時用にちょっとね。あとは料理キット」
「なるほどー。エルマはー?」
「あたしは修理キットを買ったよ。チェリーが【上級鍛冶職人】と【魔具職人】持ってるからなんとかなるでしょ?」
「そうだね。簡易の修理キットがあれば破損状態以外はなんとかなるよ」
「ということ」
「んー。ほかに何かいるものあるかなー?」
「他は現地調達でいいんじゃない?」
エルマが両手を頭の後ろで組みながら答えます。
「私もそう思う。いざとなったら買いに戻ってくればいいんだよ」
「まー。そっかー。じゃぁ準備は完了かなー」
「そうなるね」
「サツキが第二陣でログインしてくるまであと3日かー。長いねー」
「あっ。それならいい暇つぶしがあるよ」
エルマが組んでいた腕を離し、私達の方を見ながら言ってきます。
「なにかなー?」
「気になる」
「ふっふっふ。〔流体金属傀儡 L・M・D ディージー〕の情報を手に入れたのだ!」
「おお!」
「おー」
かなり有用なユニーク装備を落とす〔ユニークモンスター〕ですね。発見数はほどほどに多いですが、発生条件は不明なので、探して出会える〔ユニークモンスター〕ではありません。
「聞きたいかい?」
「聞きたい!」
「ききたいー」
「マオ、も聞きたい」
「ふっふっふ。『神降山』に出るらしい。発生条件は『神降山』のモンスターを一定時間以内に100体討伐すること」
「それは裏が取れてる情報なの?」
私はつい聞いてしまいます。
「情報屋が見つけてきたんだけど、一定時間以内に100体討伐が難しいらしい。そこで情報をタダにする代わりに検証してきてくれっていわれた!」
素直に吐きましたね。
「自然発生のユニークじゃないみたいだし、その情報が本当なんだとしたら、なかなかおいしい話だよね」
「そうだねー。ちょっと行ってみようか」
「マオ、も行くわ」
〔流体金属傀儡 L・M・D ディージー〕の検証を行うことでみんなが納得したのですぐさま準備を整え、出発します。
エルマが前衛、愛猫姫と私が中衛、ステイシーが後衛です。
『神降山』はとても魔力や瘴気が濃くて、高レベルのモンスターが湧いたり、〔ユニークモンスター〕が発生したりするそうです。高レベルのプレイヤーにとっては天国ですね。
私もいくつかレベル上がるといいな。
場所的にはそれほど遠いわけでもなかったので、近場の都市である『海上都市 ブラルタ』まで転移します。
そしてそこから海を凍らせて歩き、海から生える大きな山に足を踏み入れました。
「ここが『神降山』かー」
「そうみたいだね」
「あたしも初めて来たからよくわからない」
「マオ、も初めて」
「「「思ったよりちっちゃい」」」
私とエルマ、ステイシーが見事なハモリを見せていると早速、お出迎えがやってきました。
〔アクア・サラマンダー〕というモンスターのようですね。
「チェリー。レベルもそれほど高くないし、ここはあいつに任せようー」
「そうだね。マオ、いける?」
「いける、わ。≪鎌鼬≫」
手に持っていた鉄扇を一閃し、風の刃を〔アクア・サラマンダー〕を両断します。
経験値は微量ですね。Lv166の愛猫姫が一撃で倒せるモンスターですから仕方ありませんね。
そしてそれほど強くない敵を倒しつつ、山を登っていきます。
魔力や瘴気がほどほどに濃くなりはじめ、しだいに高レベルのモンスターも交じり始めます。
「≪バックスラッシュ≫」
高レベルの敵はエルマが、低レベルの敵は愛猫姫がそれぞれ倒し、さらに山を登ります。
一定時間というのが漠然としすぎていてよくわかりませんが、このペースなら大丈夫でしょうか。すでに20体は倒していますし、登れば登るほど湧きも良くなっていますから。
それから私とステイシーも経験値稼ぎに没頭し、1時間ほどが経つと山頂が見えてきました。
パーティー全体での討伐数は100体を超え、何時、〔流体金属傀儡 L・M・D ディージー〕が出てきてもおかしくない程になります。
それを3人に伝えようとすると、一人先頭を行っていたエルマがこちらを振り返り、大声で伝えてきます。
「でたよ!」
エルマの声を聴いた中衛、後衛の私達は駆け出し、エルマの近くへとやってきました。
「アレが〔流体金属傀儡 L・M・D ディージー〕かな?」
「うんー。情報的にはそうだね」
「……。棒人形じゃん」
私がそういうと辺り一帯から音が無くなってしまったのかと錯覚してしまうほどに静かになった気がします。
もちろん気のせいですが。
「と、とりあえず戦闘準備!」
エルマの声をきっかけに各々戦闘準備を改めて整えます。
〔L・M・D ディージー〕はこちらを発見すると細い身体の手足にあたる部分をさらに細くします。そしてこちらに針のようになった手足で攻撃をしてきます。
「うぎゃ!」
髪の毛ほどに細くなっているようで、エルマがさばききれず右肩を貫かれていました。
「大丈夫!?」
「んにゃ! 平気! ダメージは大したことないよ!」
そう言ったエルマの足が少しふらついています。
「ステイシー!」
私は振り返りながらステイシーに分析を頼みます。
「麻痺にかかってるー」
「わかった!」
それを聞いた私はすぐに麻痺を解除するためのスキルを放ちます。
「≪キュア≫」
一瞬緑の膜のようなものに包まれたエルマがこちらに背を向けたまま親指をグッと立てるしぐさをしていました。
前衛役のエルマが攻撃をひきつけ、愛猫姫とステイシーが遠距離攻撃でHPを削っていきます。
なんていうか、〔ユニークモンスター〕にしては、弱いです。それもかなり。
私の疑問には誰も気付かず、攻撃を続けています。
エルマにかかった麻痺を解くために≪キュア≫を使用し、またエルマが攻撃をさばきに戻る。それを繰り返しています。
同じ攻撃パターンしか持っていない敵だったのでこれを繰り返すだけで難なく倒せました。
「あっけない……」
「〔ユニークモンスター〕とは思えないねー」
「マオ、が昔、戦ったのは、もっと手ごわそう、だった」
「私もそれが気になっていた。〔流体金属傀儡〕なのにそれっぽいことは何もしていなかったし」
「とりあえず、ドロップの確認しよっかー」
そう言ったステイシーの背後からきらりと光る何かが飛んで来たことに私は気が付きました。
「ステイシー!」
そう声をかけるとすぐ横に飛び回避してくれました。
「≪マテリアル・シールド≫」
私が張った障壁に突っ込み、ガラスを割るような音をたて、腹部に直撃した鉄の塊を見た瞬間、私の意識は途切れました。
to be continued...
「そう、ね。キャンプ、みたいで、楽しみ、だわ」
レディンに送ってもらうつもりなので道中の食糧などは考えなくてもいいですが、都市によって食糧が異なるので食べなれた食材を持っていくのは大切です。
『精霊都市 エレスティアナ』はご飯美味しくないと聞きますし。
『商都 ディレミアン』は商都というだけあって他の地域の食材が入手しやすいので好みの食材をたくさん買い込みます。
そして街の外でも調理ができるように、簡易料理キットも購入しておきます。
VR化する前は、簡易料理キットがなくても料理できたのですが、この辺はリアリティーの追求といったところでしょうか。
一通りの買い物を終え、エルマ、ステイシーと合流することになりました。
「チェリーはなにかったのー?」
そうステイシーに聞かれ、少し恥ずかしいですが、答えます。
「その……『ヴェンヘイデン』の食材が恋しくなった時用にちょっとね。あとは料理キット」
「なるほどー。エルマはー?」
「あたしは修理キットを買ったよ。チェリーが【上級鍛冶職人】と【魔具職人】持ってるからなんとかなるでしょ?」
「そうだね。簡易の修理キットがあれば破損状態以外はなんとかなるよ」
「ということ」
「んー。ほかに何かいるものあるかなー?」
「他は現地調達でいいんじゃない?」
エルマが両手を頭の後ろで組みながら答えます。
「私もそう思う。いざとなったら買いに戻ってくればいいんだよ」
「まー。そっかー。じゃぁ準備は完了かなー」
「そうなるね」
「サツキが第二陣でログインしてくるまであと3日かー。長いねー」
「あっ。それならいい暇つぶしがあるよ」
エルマが組んでいた腕を離し、私達の方を見ながら言ってきます。
「なにかなー?」
「気になる」
「ふっふっふ。〔流体金属傀儡 L・M・D ディージー〕の情報を手に入れたのだ!」
「おお!」
「おー」
かなり有用なユニーク装備を落とす〔ユニークモンスター〕ですね。発見数はほどほどに多いですが、発生条件は不明なので、探して出会える〔ユニークモンスター〕ではありません。
「聞きたいかい?」
「聞きたい!」
「ききたいー」
「マオ、も聞きたい」
「ふっふっふ。『神降山』に出るらしい。発生条件は『神降山』のモンスターを一定時間以内に100体討伐すること」
「それは裏が取れてる情報なの?」
私はつい聞いてしまいます。
「情報屋が見つけてきたんだけど、一定時間以内に100体討伐が難しいらしい。そこで情報をタダにする代わりに検証してきてくれっていわれた!」
素直に吐きましたね。
「自然発生のユニークじゃないみたいだし、その情報が本当なんだとしたら、なかなかおいしい話だよね」
「そうだねー。ちょっと行ってみようか」
「マオ、も行くわ」
〔流体金属傀儡 L・M・D ディージー〕の検証を行うことでみんなが納得したのですぐさま準備を整え、出発します。
エルマが前衛、愛猫姫と私が中衛、ステイシーが後衛です。
『神降山』はとても魔力や瘴気が濃くて、高レベルのモンスターが湧いたり、〔ユニークモンスター〕が発生したりするそうです。高レベルのプレイヤーにとっては天国ですね。
私もいくつかレベル上がるといいな。
場所的にはそれほど遠いわけでもなかったので、近場の都市である『海上都市 ブラルタ』まで転移します。
そしてそこから海を凍らせて歩き、海から生える大きな山に足を踏み入れました。
「ここが『神降山』かー」
「そうみたいだね」
「あたしも初めて来たからよくわからない」
「マオ、も初めて」
「「「思ったよりちっちゃい」」」
私とエルマ、ステイシーが見事なハモリを見せていると早速、お出迎えがやってきました。
〔アクア・サラマンダー〕というモンスターのようですね。
「チェリー。レベルもそれほど高くないし、ここはあいつに任せようー」
「そうだね。マオ、いける?」
「いける、わ。≪鎌鼬≫」
手に持っていた鉄扇を一閃し、風の刃を〔アクア・サラマンダー〕を両断します。
経験値は微量ですね。Lv166の愛猫姫が一撃で倒せるモンスターですから仕方ありませんね。
そしてそれほど強くない敵を倒しつつ、山を登っていきます。
魔力や瘴気がほどほどに濃くなりはじめ、しだいに高レベルのモンスターも交じり始めます。
「≪バックスラッシュ≫」
高レベルの敵はエルマが、低レベルの敵は愛猫姫がそれぞれ倒し、さらに山を登ります。
一定時間というのが漠然としすぎていてよくわかりませんが、このペースなら大丈夫でしょうか。すでに20体は倒していますし、登れば登るほど湧きも良くなっていますから。
それから私とステイシーも経験値稼ぎに没頭し、1時間ほどが経つと山頂が見えてきました。
パーティー全体での討伐数は100体を超え、何時、〔流体金属傀儡 L・M・D ディージー〕が出てきてもおかしくない程になります。
それを3人に伝えようとすると、一人先頭を行っていたエルマがこちらを振り返り、大声で伝えてきます。
「でたよ!」
エルマの声を聴いた中衛、後衛の私達は駆け出し、エルマの近くへとやってきました。
「アレが〔流体金属傀儡 L・M・D ディージー〕かな?」
「うんー。情報的にはそうだね」
「……。棒人形じゃん」
私がそういうと辺り一帯から音が無くなってしまったのかと錯覚してしまうほどに静かになった気がします。
もちろん気のせいですが。
「と、とりあえず戦闘準備!」
エルマの声をきっかけに各々戦闘準備を改めて整えます。
〔L・M・D ディージー〕はこちらを発見すると細い身体の手足にあたる部分をさらに細くします。そしてこちらに針のようになった手足で攻撃をしてきます。
「うぎゃ!」
髪の毛ほどに細くなっているようで、エルマがさばききれず右肩を貫かれていました。
「大丈夫!?」
「んにゃ! 平気! ダメージは大したことないよ!」
そう言ったエルマの足が少しふらついています。
「ステイシー!」
私は振り返りながらステイシーに分析を頼みます。
「麻痺にかかってるー」
「わかった!」
それを聞いた私はすぐに麻痺を解除するためのスキルを放ちます。
「≪キュア≫」
一瞬緑の膜のようなものに包まれたエルマがこちらに背を向けたまま親指をグッと立てるしぐさをしていました。
前衛役のエルマが攻撃をひきつけ、愛猫姫とステイシーが遠距離攻撃でHPを削っていきます。
なんていうか、〔ユニークモンスター〕にしては、弱いです。それもかなり。
私の疑問には誰も気付かず、攻撃を続けています。
エルマにかかった麻痺を解くために≪キュア≫を使用し、またエルマが攻撃をさばきに戻る。それを繰り返しています。
同じ攻撃パターンしか持っていない敵だったのでこれを繰り返すだけで難なく倒せました。
「あっけない……」
「〔ユニークモンスター〕とは思えないねー」
「マオ、が昔、戦ったのは、もっと手ごわそう、だった」
「私もそれが気になっていた。〔流体金属傀儡〕なのにそれっぽいことは何もしていなかったし」
「とりあえず、ドロップの確認しよっかー」
そう言ったステイシーの背後からきらりと光る何かが飛んで来たことに私は気が付きました。
「ステイシー!」
そう声をかけるとすぐ横に飛び回避してくれました。
「≪マテリアル・シールド≫」
私が張った障壁に突っ込み、ガラスを割るような音をたて、腹部に直撃した鉄の塊を見た瞬間、私の意識は途切れました。
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