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第4章 精霊駆動
第4章6幕 図書館<library>
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「おまたせ」
ステイシーのお店の扉を開けながら声をかけます。
「ほーい。知り合いの知り合いにも≪憑依≫を解除できる人いなかったー」
「そっか。一応≪狂戦士化≫の〔解除薬〕は貰って来たけど、≪獣化≫の方はむずかしいらしい」
「じゃぁのませてみよっかー」
そう言ったステイシーに〔解除薬〕を押し付けます。
そして私は店の一角で座っている愛猫姫に話しかけます。
「マオ」
「なに?」
「これあげる」
インベントリから取り出した鉄扇【風翫】を渡そうとします。
「これは、扇子、かしら?」
「そう、鉄で作ってある」
「使い、こなせる?」
「使ってみて」
「わかった、わ」
そう言った愛猫姫が鉄扇を受け取ります。
「あ……」
ガシャーンと音を立てて、鉄扇が落ち、床にめり込みます。
「えっ?」
「なに!?」
素の声で驚く私と、物音に反応して飛び上がるエルマが同時に声を出します。
「もて、ない……」
「え?」
「重くて、持てない」
「あ……」
私は鉄扇を拾い上げて確認します。
要求STR:30
あっ。なるほど。
愛猫姫のステータスを覗くために【称号】を付け替え、頭装備を入れ替えます。
はい。初期値でした。
とりあえず愛猫姫にまだこの鉄扇は早かったようなので木と紙で作りましょうか。
【称号】と装備を普段の物に戻し、愛猫姫に聞きます。
「どうしてLV100のままなの? <転生>クエストはやってない?」
「<転生>、クエスト?」
そう首を45度右に傾け、知らないことを言葉と行動で示してくれます。
「えっとね、レベルが100になったら<転生>クエストを受けないとそれ以上レベルをあげられないの」
「そう、なのね」
「第二陣のログインが始まるまでにやりに行く?」
「そう、ね。今から行って、くる、わ」
「案内するよ。エルマはどうする?」
「私も案内所まで行くよ。案内所で依頼出してくる」
「ダーロンのこと?」
「うん」
「じゃぁ依頼金はステイシー含めて3人で折半ね」
「りょうかい」
「じゃぁいこっか」
ここ『商都 ディレミアン』の案内所に来るのも久々ですね。
前回来たのは……思い出せませんね。
三度目の<転生>を頑張っていた時は毎週来ていたのですが。
「ここが、案内所、なのね。好き」
「あたしも結構、好きかな」
「学校を思い出すからちょっと苦手」
「どこで、うければいいの?」
「4階の<転生>クエストカウンターだよ」
「……。どこから、上ればいいの? わからない、わ……」
「一緒に行くから大丈夫だよ」
「じゃぁあたしは2階のカウンターで依頼を出したら、1階の端っこで紅茶でものんでるね」
そう言って大階段に向かってエルマは歩き出しました。
「マオ、私達はこっちだよ」
「まって」
振り向いて歩きだした私の後ろトテトテと走ってぴったりとくっつきました。
「ごめん。急すぎたね」
「大丈夫、よ。ちょっと、見とれて、て反応が遅れた、の」
「4階は直通の階段があるからそっちから行くよ」
「わかった、わ」
そうして直通の階段を上ります。
「ところでマオ」
「なに?」
「戦闘経験は?」
「ソロの、クエスト、結構あったから」
チュートリアルクエストは全部ソロですからね。正直一度目の<転生>ボス〔水性雷龍 ジャガードラゴン〕はその延長線みたいいなものですからね。
「アドヴァイスさせてもらうね。マオはダメージ完全無効化ができるでしょ?」
「ええ」
「全身が黄色く光ったらすぐに防御スキルを発動して。終わったらクールタイムで逃げ回り始めるから物理で殴って」
「でも、マオ、武器もってないわ」
「そこは大丈夫。適当な武器を貸してあげる」
「そう。何か、マオ、でも使えそうな、のない?」
「実はいいものがあるよ。これを貸してあげよう!」
そう言ってインベントリに眠らせていたとある武器を取り出します。
「マオは扇子を扱うためにDEXが高いよね」
「全部、DEXに、ふってる」
「じゃーん」
そして取り出した【ジェミニウィップ】を取り出し渡します。
これは私が移動補助に用いている鞭……というか紐です。
「紐……」
「紐っぽく見えるけどなかなか効果はいいよ」
「≪射程延長≫、≪強度無視≫、≪自動再生≫。いいわ」
「でしょ。やつが逃げ回り始めたらこの鞭で頭叩いてあげて」
「わかった、わ。おしおき、ね」
「そうそう」
「じゃぁ、いってくる、わ」
そう言って鞭をピシっと伸ばし、クエストを受注して、転送されていきました。
愛猫姫のDEXなら数発で終わりそうですね。蓄積経験値がどうかはわかりませんが、クリア後には爆発的にレベルアップしているかもしれませんね。
愛猫姫を見送り、1階のテラスへとやってきます。
すでに依頼を出し終えたエルマが物思いに耽って、人の流れをみています。
「どうしたの?」
「んー。ちょっと考え事」
「相談のるよ」
紅茶を一口飲み、ペロリと赤い舌で唇を舐めたエルマが話し始めます。
「サツキがログインしてきたら一緒に遊ぶじゃん?」
「そうだね」
「チェリーは遠距離魔法と装備変えて近距離でしょ? あたしは中遠距離と少し近距離でしょ。ステイシーは遠距離。愛猫姫は近中距離。サツキは中遠距離」
「そうだね」
エルマは愛猫姫が近中距離なのを知ってたんだ。こないだ見たんでしょうか。
「バランス悪くない?」
「思った」
「遠距離しかできないステイシーには遠距離をやらせるとして、残りの構成はどうなるんだろうって考えちゃって」
なるほど。確かに難しいところですね。
一番近接戦闘に慣れているのは私で次点で愛猫姫でしょうか。
いくらダメージ無効スキルを持っているとはいえ、一番レベルが低い愛猫姫に前衛を任せっぱなしにするのは心苦しいです。
となるとエルマかサツキですが、サツキはVRの<Imperial Of Egg>は初めてですからね。
慣れるまでは難しいでしょう。そもそも武器が魔銃なので基本が中距離ですし。
愛猫姫とサツキが慣れるまでは私が前衛を一人で担当しますかね。
「じゃぁ愛猫姫のレベルがほどほどに高くなるまでは私が前衛やるよ。得意だし」
私がそう言うとエルマは驚きのあまり絶句という顔をしています。
「え? えっ?」
「どうしたの?」
「チェリー。それってめっちゃ動き回るってことだよ? わかってる?」
「わかってるよ? 戦闘中の移動なら≪スライド移動≫があるし。将来的に移動が減るならその投資だって思ってる」
私がそう言うと、エルマは残念そうな人を見るような目を一瞬した後、首を縦に振りながら「これでも……進歩かぁ……」とつぶやいていました。
エルマとそういう会話をしているときにふと『精霊都市 エレスティアナ』のことを思い出します。
「あっ、そう言えばこの上に図書館あったよね?」
「あるねー」
「『エレスティアナ』の本とかあるかな?」
「あるんじゃない?」
「行きたい」
「じゃぁおねーさんもついていこーっと」
エルマは残った紅茶をゴクゴクと飲み干し、ソーサーに静かに置くと立ち上がりました。
「いまのうちに情報収集だね」
「うん。私は車にしか興味ないけど」
「甘いねー。あまあまー。『エレスティアナ』は魔法武器の最先端だよ? 魔法系の武器を扱うものとしてその技術でより武器を強化したいはずじゃろ!」
「なるほど。【神器】に高位の≪エンチャント≫ができる【付与術師】とかがいるかもしれないしね」
「いやー。ワクワクしてきたー! もうパーティーの配置とかどうでもいいや!」
そうしてやってきた図書館で本を読み漁っているとパーティーチャットで愛猫姫から連絡がありました。
『やっつけた、わ』
『お疲れ様』
『おつかれ!』
『どこ?』
『上の図書館にいるよ』
『わからないわ』
『おっけ。チェリーが迎え行く』
エルマがそう言ったので愛猫姫を4階まで迎えに行き、図書館まで戻ってきました。
「本の、匂い。好き」
「あたしも好き」
「何故か懐かしさを感じるよね」
私達が生きる現代では、本は電子の物が普通となり、紙の本はあまり一般的ではありません。それでも、紙の本が根強い人気があるのも頷けますね。だって、こんなに落ちつくんですから。
それからステイシーのことを思い出すまで3人とも本を読みふけっていました。
to be continued...
ステイシーのお店の扉を開けながら声をかけます。
「ほーい。知り合いの知り合いにも≪憑依≫を解除できる人いなかったー」
「そっか。一応≪狂戦士化≫の〔解除薬〕は貰って来たけど、≪獣化≫の方はむずかしいらしい」
「じゃぁのませてみよっかー」
そう言ったステイシーに〔解除薬〕を押し付けます。
そして私は店の一角で座っている愛猫姫に話しかけます。
「マオ」
「なに?」
「これあげる」
インベントリから取り出した鉄扇【風翫】を渡そうとします。
「これは、扇子、かしら?」
「そう、鉄で作ってある」
「使い、こなせる?」
「使ってみて」
「わかった、わ」
そう言った愛猫姫が鉄扇を受け取ります。
「あ……」
ガシャーンと音を立てて、鉄扇が落ち、床にめり込みます。
「えっ?」
「なに!?」
素の声で驚く私と、物音に反応して飛び上がるエルマが同時に声を出します。
「もて、ない……」
「え?」
「重くて、持てない」
「あ……」
私は鉄扇を拾い上げて確認します。
要求STR:30
あっ。なるほど。
愛猫姫のステータスを覗くために【称号】を付け替え、頭装備を入れ替えます。
はい。初期値でした。
とりあえず愛猫姫にまだこの鉄扇は早かったようなので木と紙で作りましょうか。
【称号】と装備を普段の物に戻し、愛猫姫に聞きます。
「どうしてLV100のままなの? <転生>クエストはやってない?」
「<転生>、クエスト?」
そう首を45度右に傾け、知らないことを言葉と行動で示してくれます。
「えっとね、レベルが100になったら<転生>クエストを受けないとそれ以上レベルをあげられないの」
「そう、なのね」
「第二陣のログインが始まるまでにやりに行く?」
「そう、ね。今から行って、くる、わ」
「案内するよ。エルマはどうする?」
「私も案内所まで行くよ。案内所で依頼出してくる」
「ダーロンのこと?」
「うん」
「じゃぁ依頼金はステイシー含めて3人で折半ね」
「りょうかい」
「じゃぁいこっか」
ここ『商都 ディレミアン』の案内所に来るのも久々ですね。
前回来たのは……思い出せませんね。
三度目の<転生>を頑張っていた時は毎週来ていたのですが。
「ここが、案内所、なのね。好き」
「あたしも結構、好きかな」
「学校を思い出すからちょっと苦手」
「どこで、うければいいの?」
「4階の<転生>クエストカウンターだよ」
「……。どこから、上ればいいの? わからない、わ……」
「一緒に行くから大丈夫だよ」
「じゃぁあたしは2階のカウンターで依頼を出したら、1階の端っこで紅茶でものんでるね」
そう言って大階段に向かってエルマは歩き出しました。
「マオ、私達はこっちだよ」
「まって」
振り向いて歩きだした私の後ろトテトテと走ってぴったりとくっつきました。
「ごめん。急すぎたね」
「大丈夫、よ。ちょっと、見とれて、て反応が遅れた、の」
「4階は直通の階段があるからそっちから行くよ」
「わかった、わ」
そうして直通の階段を上ります。
「ところでマオ」
「なに?」
「戦闘経験は?」
「ソロの、クエスト、結構あったから」
チュートリアルクエストは全部ソロですからね。正直一度目の<転生>ボス〔水性雷龍 ジャガードラゴン〕はその延長線みたいいなものですからね。
「アドヴァイスさせてもらうね。マオはダメージ完全無効化ができるでしょ?」
「ええ」
「全身が黄色く光ったらすぐに防御スキルを発動して。終わったらクールタイムで逃げ回り始めるから物理で殴って」
「でも、マオ、武器もってないわ」
「そこは大丈夫。適当な武器を貸してあげる」
「そう。何か、マオ、でも使えそうな、のない?」
「実はいいものがあるよ。これを貸してあげよう!」
そう言ってインベントリに眠らせていたとある武器を取り出します。
「マオは扇子を扱うためにDEXが高いよね」
「全部、DEXに、ふってる」
「じゃーん」
そして取り出した【ジェミニウィップ】を取り出し渡します。
これは私が移動補助に用いている鞭……というか紐です。
「紐……」
「紐っぽく見えるけどなかなか効果はいいよ」
「≪射程延長≫、≪強度無視≫、≪自動再生≫。いいわ」
「でしょ。やつが逃げ回り始めたらこの鞭で頭叩いてあげて」
「わかった、わ。おしおき、ね」
「そうそう」
「じゃぁ、いってくる、わ」
そう言って鞭をピシっと伸ばし、クエストを受注して、転送されていきました。
愛猫姫のDEXなら数発で終わりそうですね。蓄積経験値がどうかはわかりませんが、クリア後には爆発的にレベルアップしているかもしれませんね。
愛猫姫を見送り、1階のテラスへとやってきます。
すでに依頼を出し終えたエルマが物思いに耽って、人の流れをみています。
「どうしたの?」
「んー。ちょっと考え事」
「相談のるよ」
紅茶を一口飲み、ペロリと赤い舌で唇を舐めたエルマが話し始めます。
「サツキがログインしてきたら一緒に遊ぶじゃん?」
「そうだね」
「チェリーは遠距離魔法と装備変えて近距離でしょ? あたしは中遠距離と少し近距離でしょ。ステイシーは遠距離。愛猫姫は近中距離。サツキは中遠距離」
「そうだね」
エルマは愛猫姫が近中距離なのを知ってたんだ。こないだ見たんでしょうか。
「バランス悪くない?」
「思った」
「遠距離しかできないステイシーには遠距離をやらせるとして、残りの構成はどうなるんだろうって考えちゃって」
なるほど。確かに難しいところですね。
一番近接戦闘に慣れているのは私で次点で愛猫姫でしょうか。
いくらダメージ無効スキルを持っているとはいえ、一番レベルが低い愛猫姫に前衛を任せっぱなしにするのは心苦しいです。
となるとエルマかサツキですが、サツキはVRの<Imperial Of Egg>は初めてですからね。
慣れるまでは難しいでしょう。そもそも武器が魔銃なので基本が中距離ですし。
愛猫姫とサツキが慣れるまでは私が前衛を一人で担当しますかね。
「じゃぁ愛猫姫のレベルがほどほどに高くなるまでは私が前衛やるよ。得意だし」
私がそう言うとエルマは驚きのあまり絶句という顔をしています。
「え? えっ?」
「どうしたの?」
「チェリー。それってめっちゃ動き回るってことだよ? わかってる?」
「わかってるよ? 戦闘中の移動なら≪スライド移動≫があるし。将来的に移動が減るならその投資だって思ってる」
私がそう言うと、エルマは残念そうな人を見るような目を一瞬した後、首を縦に振りながら「これでも……進歩かぁ……」とつぶやいていました。
エルマとそういう会話をしているときにふと『精霊都市 エレスティアナ』のことを思い出します。
「あっ、そう言えばこの上に図書館あったよね?」
「あるねー」
「『エレスティアナ』の本とかあるかな?」
「あるんじゃない?」
「行きたい」
「じゃぁおねーさんもついていこーっと」
エルマは残った紅茶をゴクゴクと飲み干し、ソーサーに静かに置くと立ち上がりました。
「いまのうちに情報収集だね」
「うん。私は車にしか興味ないけど」
「甘いねー。あまあまー。『エレスティアナ』は魔法武器の最先端だよ? 魔法系の武器を扱うものとしてその技術でより武器を強化したいはずじゃろ!」
「なるほど。【神器】に高位の≪エンチャント≫ができる【付与術師】とかがいるかもしれないしね」
「いやー。ワクワクしてきたー! もうパーティーの配置とかどうでもいいや!」
そうしてやってきた図書館で本を読み漁っているとパーティーチャットで愛猫姫から連絡がありました。
『やっつけた、わ』
『お疲れ様』
『おつかれ!』
『どこ?』
『上の図書館にいるよ』
『わからないわ』
『おっけ。チェリーが迎え行く』
エルマがそう言ったので愛猫姫を4階まで迎えに行き、図書館まで戻ってきました。
「本の、匂い。好き」
「あたしも好き」
「何故か懐かしさを感じるよね」
私達が生きる現代では、本は電子の物が普通となり、紙の本はあまり一般的ではありません。それでも、紙の本が根強い人気があるのも頷けますね。だって、こんなに落ちつくんですから。
それからステイシーのことを思い出すまで3人とも本を読みふけっていました。
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