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第4章 精霊駆動

第4章3幕 計画<plan>

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 「ギルド抜けちゃった」
 そうエルマに話します。
 「そっかー。チェリー抜けちゃうなら私もいる意味ないよねー。10日間の独房生活早く解けないかなー?」
 「脱獄しちゃうー?」
 「いいねー! 一回やってみたかった!」
 ステイシーの提案にエルマがノリノリになります。
 「じゃぁまず作戦考えないとー」
 「手っ取り早いのは賄賂かな?」
 私がそう言います。
 「んー。賄賂だけだと決め手に欠けるー?」
 「なら色仕掛けだ!」
 両手を頭の裏で組みエルマが腰をくねくねさせます。
 「私とエルマにできると思う?」
 「やめよう」
 「そこでこそあの女を利用しない手はないねー」
 「あの女?」
 そうエルマが首をかしげます。
 「ああ。マオのことだよ」
 私がそう伝えると得心行ったという感じで、手をポンと叩きます。
 「そうそうー」
 「愛猫姫にそんなことできるの?」
 「スキルで軽い意識操作ができるみたい」
 「なるほど。じゃぁ愛猫姫を連れてくるよ」
 すぐにエルマは≪テレポート≫していきました。
 「賄賂はどうするー?」
 「必要ないんじゃないかな? でも独房のシステムがわからないから何とも言えないけど」
 「じゃぁハリリンに聞こうよー」
 「そうだね」
 すぐに私も行動に移します。
  
 『ハリリン聞きたいことがあるんだけど』
 『なんすか? ってギルド抜けちゃったんすね』
 『思うとこがあってね。独房のシステムってわかる?』
 『いつか戻ってくるっすよー。独房っすか。あそこはセーブポイントの更新と外部接触の禁止、スキル発動制限があるっす』
 『セーブポイントの更新?』
 『そこから説明するっすね。ログアウトして次にログインするときは基本ログアウトした所になるじゃないっすか』
 『そうだね』
 『それを独房に入る期間中は独房に固定するシステムなんすよ。だから一定期間のログアウトをしてもログインは独房になってしまうわけっす』
 『なるほど。ログアウトして5日とか待ってログインしてもそこになっちゃうわけか』
 『そういう事っす。でももし外部に出ることができたらセーブポイントはそちらに移るっす。一定期間ログアウトしなければっすけど。あとはそのまんまっす。外部とチャットできなかったり、スキルが使えなかったりっすね』
 『スキルって独房に入った人だけ?』
 『独房の内部でスキル発動が封じられるのは罪を犯して独房に入れられた人だけっす』
 なるほど。見えましたね。
 『ありがと。また何かあったら聞くね』
 『いつでも聞いてきてくださいっす。チェリー帰って来るまで溜めとくっす』

 「色々有用な情報を聞いたよ」
 「解決策は見つかったかなー?」
 「うん。うまくいくかは運しだいだけど」
 「どんな作戦?」
 「まず独房の監視員の目をマオが集める。この方法はマオに任せることになっちゃうけど。そのあと姿を消した私が独房に侵入してエルマの代役を魔法で作る。しばらくENとMP食われちゃうけど仕方ない。この部分はステイシーにも手伝ってもらうよ」
 「どうすればいいの?」
 「私が≪ドール≫でエルマの分身を作るからそれに精霊か何かを突っ込んで私がログアウトしている間も稼働できるようにしてほしい」
 「そのくらいならお安い御用だー。風魔法で分身作れるー?」
 「やったことないけど多分できる」
 「おっけー。なら事前に作っておいてー、チェリーの持ち物とシフトさせるー」
 「それがいいね」
 「そのあとはー?」
 「分身とエルマを入れ替えて独房から脱出して、≪ワープ・ゲート≫でここまで戻ってくる」
 「うーん。失敗しそうな要素がたくさんあるけど上手くいくといいねー」
 「まぁ失敗したら私が独房行きになるくらいですむんじゃない?」
 「たしかにー。じゃぁ愛猫姫の到着をまつとしようー」
 
 それから十数分経ち、愛猫姫を連れた風紅が戻ってきます。
 「つれてきたよー」
 「ここ、懐かしい、雰囲気がするわ」
 愛猫姫がそう言ってステイシーの店をぐるりと見まわします。
 「…………」
 「ステイシー?」
 「んー?」
 「今少し、にやけてたよ」
 「そんなわけないでしょー」
 「はいはい。作戦を説明するね」
 私はそう切り出し、エルマと愛猫姫に作戦を説明します。
 「わかった、わ。警備の目を、ごまかせばいいの、ね」
 ちょっと愛猫姫も楽しそうな顔ですね。
 しばらく何もしてなかったでしょうし、いい息抜きなのかもしれませんね。
 「じゃぁ分身作るね。≪ウィンド・ドール≫」
 そして作りだした私の姿をした風魔法分身体をエルマの姿にチェンジします。
 「≪フォームチェンジ〔エルマ〕≫」
 エルマの姿を想像しつつ変えていきます。
 「できた」
 「よしじゃぁ風精霊を召喚するねー。≪召喚〔ウィンド・エレメンタル〕≫」
 すぐにステイシーが風精霊を召喚します。
 「じゃぁ上手くいくことを祈ってー。≪エンチャント・ソウルコア・ウィンド・エレメンタル≫」
 召喚された風精霊がエルマの姿をした風魔法の身体に吸い込まれていきます。
 「ここまでは上手くいったねー。≪メモリアル・コピー≫」
 聞き慣れないスキルを発動したステイシーが風紅の頭を触ります。
 そしてその手をエルマコピーへかざし、再びスキルを発動します。
 「≪メモリアル・ペースト≫、≪ウィンド・プロテクション≫、≪フィル・ウォーター≫≪エンチャント・ウィンド・エレメンタル・フレイム≫」
 ステイシーは詠唱魔法よりも長くスキルの連続発動し、ふぅと一息つきました。
 「これで大丈夫じゃないかなー? 言動や行動は風紅から取って来て植えつけたし、内部を水で満たして、火魔法で温度は一定にしてるー。風魔法で障壁を張ってるから少しくらい攻撃されても解けない、と思うー」
 「「す、すごい……」」
 まだ魔法を使い始めてから浅いですが、高威力の魔法で色々と解決出てきてしまい、多少の自信があったのですが、ステイシーは別次元にいますね。
 「よし。じゃ、あとは≪シフト≫用にチェリーの所有物をマークしておくだけかなー?」
 「じゃぁこの手ぶきゅ……手袋でどうかな?」
 「おっけー。じゃぁ『ヴァンヘイデン』のお城に戻ろう」
 「ゲートだすね。≪ワープ・ゲート≫」
 分身をステイシーが抱え、全員でゲートをくぐります。
 
 「まさかこんなすぐに戻ってくることになるなんて」
 「またすぐに離れることになるさー」
 「そうだね。エルマ、メインキャラに変えて待機だよ」
 「了解! 囚われの姫になってくる」
 そういって風紅はログアウトしました。
 「そう言えばチェリー。姿を隠す魔法なんて覚えてたっけー?」
 「ううん。覚えてない。だから……」
 私は【暗殺者】時代からずっと使っている短刀【ナイトファング】を取り出しくるくると回します。
 そしてもう一つ、【レイブン・ペンシル】という装備を取り出します。
 「こいつとこいつのスキルで未発見状態で進む」
 【ナイトファング】の装備効果とパッシブスキルで発見率を下げ、【レイブン・ペンシル】のアクティブスキル、≪闇を描く筆≫で一瞬だけ視力を奪う、という複合技で見つからずに進もうと考えます。
 【レイブン・ペンシル】は装備というより、ただの筆記具の扱いしていたのでたまにはこういう使い方もいいでしょう。
 鴉の彫刻がカワイイんですもん。インク補充しなくても切れませんし。

 「マオ、はどうはいれば、いいの?」
 「一度私が先行して、独房周辺にいくね。その場所に≪シフト≫用のアイテムを置くからそこに飛ばしてもらって」
 本当なら私の身に着けている物に≪シフト≫してくるのが一番手堅く、無駄も少ないのですが、念のためです。
 「わかった、わ」
 「じゃぁ行ってくる」
 そう言い残し、私は王城に侵入します。
                                      to be continued...
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